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少女の聖域vol.3|山口友里|魔法の粉をふりかけて

 山口友里ほど魔法という言葉が似合う作家はいないだろう。

《少女の聖域vol.3〜魔法大全》会場風景(以下同)

 美術デザインとスタイリングを担当したマジョリカマジョルカで、彼女の魔法にかかった少女は数知れず。その幻想的な世界観と卓越した美意識は、ドールの制作に於いても遺憾無く発揮されている。

 マンドレイクまたの名をマンドラゴラといえば、魔法使いにとっては欠かせないアイテムである。
 引き抜くと悲鳴をあげ、それを聞いた人間は狂って死んでしまうという伝説をもつマンドレイクは、実際に古くから薬草として用いられた植物だ。地面に埋まっている根の先端部分が二股に分かれて、人間の足のように見えることから、成熟すると地面から這い出して歩き回るとされる。

 そんなマンドレイクのまだ幼気な頃の姿を、山口は可愛らしい造形で創り上げた。
 手足のように見える先には、ワルツを踊るが如くくるくると巻いた根が愛らしく伸びている。レースの襟とリボンでお洒落をして気取っているが、油断してはいけない。手元に置こうと引き抜くと、手痛いしっぺ返しをくらうことになる。
 そこはマンドレイク、可愛いだけではないのだ。手練れの魔法使いも匙を投げるほど扱いが難しい毒と、少々のことでは梃子でも動かせない頑固さ。
 まるでこれは少女のことのようではないか。

 使い魔として猫は欠かせない存在である。
 気まぐれで自分勝手? いやいや猫は意外と忠実な使い魔足り得るのだ。しなやかに動き回り、変幻自在に情報を集めては、素知らぬ顔で報告に来る。たまにさぼることもあるが、それはまあご愛嬌。

 ちょっと気取って魔法使いの帽子を被り蝶ネクタイを締めた黒猫を、山口はマスケラにしてみせた。ブローチとして身につければ、使い魔をいつでも連れて歩くことができる。
 愛らしい使い魔がお供にいれば、どこに行くにも心強い。

 霧とリボンの展覧会では、これまでも多彩な造形を観せてくれた山口友里。
 彼女のキラキラハッピーな魔法で、日常に幻想の粉をふりかけよう。

山口友里|人形作家 →HP
球体関節人形を四谷シモン、ビスクドール を丸美鈴に師事。他、ポーズ人形やぬいぐるみなども制作。少女や擬人化した動物たちを中心に寓話的な作品を作り続けている。

高柳カヨ子|精神科医・元法医学教室助手・少女批評家 note
東京上野で生まれ育ち、東京理科大学理工学部応用生物科学科・信州大学医学部医学科卒業。法医学教室でDNA鑑定を専門とした後、精神科の臨床に進む。Bunkamuraギャラリー「新世紀少女宣言」キュレーション/『夜想ーゴス特集』インタビュー/『夜想ー少女特集』評論/『S-Fマガジンー伊藤計劃特集』アーバンギャルド論/パラボリカ・ビス「アーバンギャルド10周年記念展」キュレーション/gallery hydrangea 「『少女観音』~12人のアーティストが描く篠たまきの幽玄世界」キュレーション。
あらゆる時代と時間を超えた少女たちに捧げる少女論「少女主義宣言」をnoteにて連載中。霧とリボン運営の会員制社交クラブ《菫色連盟》にてトークサロン「少女の聖域」を主宰、「少女性」をテーマに展覧会《少女の聖域》を定期開催している。



作家名|山口友里
作品名|マンドレイクワルツ

ミクストメディア
作品サイズ|台座直径15cm/ドール高さ22.5cm(葉先まで)
制作年|2022年(新作)

作家名|山口友里
作品名|魔女猫ブローチ(2色)

陶土・アクリル・油彩
作品サイズ|縦5.3×横4.4cm
*箱入り
制作年|2022年(新作)

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