北原尚彦|霧とリボンとわたし
「霧とリボン」さんに初めて伺ったのは、2017年1月のことでした(割と最近と思っていましたが、もう7年近く前なんですね)。その時に開催されていた《THE FAN RIDE THE BALCONY》展で、鳩山郁子さんのSFファンタジイコミック『寝台鳩舎』のサイン本が、部数限定で販売されていると知ったからです。しかも「霧とリボン」さんは、わたしの家から自転車で行けるロケーションでした。
無事にサイン本を購入できたのですが、その時にはびっくりなことが。シャーロック・ホームズに基づく紅茶をどこかの優雅なお店で売っているらしい――という情報はなんとなく耳にしていたのですが、それがなんと「霧とリボン」さんだったのです。「ハドスン夫人」「マイクロフト」「モリアーティ」と、キャラクターをモチーフにした紅茶三種類まで、その日ゲットできたのです。
そしてそれよりもびっくりだったことが。オーナーさんはデザインのお仕事もなさっていたのですが、わたしが昔『シャーロック・ホームズ秘宝館』(青弓社/1999)という本を出した際に、装丁デザインをして下さっていたのです!
同年7月には、「霧とリボン」さんでアイリーン・アドラーをメインキャラクターとしたホームズ・オマージュ共同企画展《The Mauve-Headed League~菫色連盟》が開かれました。この際には、わたしのサイン本まで置いて頂いてしまいました。一方、わたしも普通にQuestion No.6さんのポストカードセットなど、お買い物させ頂きました。
そしてこの企画に関連して、7月30日にはなんと「ミスター・キタハラ、菫色連盟へ行く」というトークイベントまで開いて頂いてしまいました。女性限定のサロンで、高野麻衣さんと対談という形式。昼の部と夜の部、どちらも2時間半(つまり合計5時間)、ひたすら英国とホームズの話を喋り通し。さすがに疲れましたが、とても楽しい時間でした。この時は、実はこれまで呑んだことのなかったアブサンを呑む機会を頂けたことも、記憶に残っています。
2019年には、やはりアイリーン・アドラーをフィーチャーしたホームズ・パスティーシュ企画展《菫色連盟の事件ファイル》が開かれました。この企画展には直接タッチしておりませんが、そのような内容とあれば、伺わないわけにはいきません。菫色連盟の事件ファイルが置かれ、それと展示販売品がリンクしている、という素敵な方式でした(そしてわたしも菫色連盟の一員と認定して頂き、後日会員証を頂戴しました!)。
2020年3月には、元AKB48佐藤すみれさんにスポットを当てた《すみれ色の魔法の小部屋》展に伺いました。これもホームズ案件(というかアイリーン案件)でもあったからです。この時に展示されていた、アイリーン率いる菫色連盟の事件ファイル一式を、後に頂戴してしまいました。無理なお願いをしてすみませんでした……。
そして2021年。新型コロナ禍真っ最中のためオンラインでとなりましたが《菫色の実験室VOL.6 菫色×シャーロック・ホームズ》という企画が開催されました。シャーロック・ホームズを真正面からテーマにしたもので、多彩なアーティストの方々が参加しておられました。
その際、「霧とリボン」さんのホームズ紅茶のリニューアル版が、新訳付きオーガニック紅茶《221Bシリーズ》の「ホームズ&ワトスン」と「ホームズ&モリアーティ」として販売されることになりました。それに付属する冊子に、シャーロック・ホームズ正典の一部を翻訳させて頂くことになりました(前者は「赤毛連盟」、後者は「最後の事件」)。
それまでホームズ・パスティーシュやコナン・ドイルの正典以外の作品は翻訳したことがありましたが、正典そのものは手がけたことがありませんでした。それが、短い抄訳とは言え翻訳することができたのは、実に貴重な機会を頂きました。このオーガニック紅茶セットはシャーロッキアン友人たちにも配ったのですが、たいへん喜ばれました。
そして今回、「霧とリボン」さんの最後となる企画展《最終幕~菫色の小部屋》にもお声がけ頂き、この小文をもって参加させて頂きました。
シャーロック・ホームズの研究を長年やってきたというだけで、わたしのような無骨物が「霧とリボン」さんの企画に混ぜて頂いたりして、本当に光栄でした。ありがとうございました。
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