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金田アツ子&Belle des Poupee二人展|温室の風景|DAY 1
19世紀アメリカ——ひとりの女性が大切に花々を育て、サンクチュアリとして慈しんだ温室。そこからひそやかに花ひらいた、朝露のごとき詩篇の数々。
紙片に遺された一篇一篇に、画家・金田アツ子さまとアクセサリーブランドBelle des Poupee様が出会い、それぞれの花を育て、新しい温室が生まれました。詩人との馨しい対話の軌跡をここにお届けいたします。
エミリー・ディキンソンの温室へ、ようこそ——
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作家名|金田アツ子
作品名|花が咲く
油彩・シナベニヤ
作品サイズ|28.5cm×28.5cm
額込みサイズ|35cm×35cm×2.5cm
制作年|2020年(新作)
エミリーの詩から摘み取ったばかりの瑞々しい花々が、温室に届きました。展覧会会場のセンターを飾る、アツ子さまのひときわ香り高い油彩作品です。
花びらひとつひとつを丹念に描く様は、温室の花々を丁寧に押し花にして慈しんだエミリーの姿に重なります。鮮やかな色彩が印象的な満開の花々にうっとりと目を奪われますが、やがてその奥から、詩人と画家が孤独のうちに育てたこころの内の一輪の花の存在を、ひそやかに伝えてきます。
花を育て、詩を紡ぎ、絵筆を持つこと——詩人と画家のちいさな祈りの風景が新しい温室に馨しく漂いはじめました。
儚い花の命に永遠を与える祈りのごとき画業。観るものを祝福する画家からの贈り物です。
白薔薇に羽休めをする白い蝶は、白いドレスをまとうエミリーでしょうか。花々のやわらかな寝台の上で、心地よさそうに休息しています。優美な一作の中に、アツ子さまの優しさが仄香ります。
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作家名|金田アツ子
作品名|野薊「私に触らないで」
アクリルガッシュ・バロンケント
作品サイズ|10.9cm×2.3cm
額込みサイズ|14.4cm×5.8cm×2.5cm
制作年|2020年(新作)
温室には、たくさんのちいさな植物たちが咲き乱れています。
素敵なミニ額に納められたアツ子さまの植物画は全部で25点。漆黒を背景に花言葉を携えて、温室に佇んでいます。
花言葉「私に触らないで」の通り、細長い額の中に凛と気高く立つ野薊。野趣あふれる花の魅力を留めながら、茎や葉が美しく構成されたデザイン性の高さもアツ子さまの植物画の大きな魅力です。
壁に掛けるだけでなく、花瓶を置くように飾ったり、また平置きすると植物標本のような雰囲気に。季節ごとに配置を変えて、楽しんでみて下さいね。
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作家名|金田アツ子
作品名|蛇苺「可憐」
アクリルガッシュ・バロンケント
作品サイズ|7.5cm×6cm
額込みサイズ|12.7cm×11.2cm×2cm
制作年|2020年(新作)
葉々の間に可憐な赤い実を付けて、生き生きと伸びてゆく蛇苺。風に揺れる様子まで留められているかのよう。一枚一枚の葉の形や表情が愛らしく描かれ、淡いオリーヴグリーンの諧調が金の額と素敵に調和しています。
植物模様としての完成度も高い、アーツ・アンド・クラフツの系譜ともいえる構成豊かな一作です。
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ブランド名|Belle des Poupee
作品名|ブーケフラワーハット
布花(シルク・ビロード・木綿・綿ローン・ポリエステル)・別珍リボン・シルクリボン
作品サイズ| 直径18.5cm/高さ5cm
制作年|2020年(新作)
*別ショットの画像をオンラインショップに掲載しています
布花ブーケが香り立つように配された華やかなハットは、「花びらの型の作成から染め、形成まで全てオリジナル・手作業」で行うBelle des Poupee様の真骨頂というべき一作。温室の中でエミリーの詩情に寄り添い、詩人の慎ましいロマンティシズムを伝えています。
スモーキーなピンクベージュの別珍リボンはブーケの小道。今の季節にぴったりな配色で、両端はリボン結びされています。
飾っているだけでも優美な花々を身につけられる喜び。花々の加護のもと、首元にリボンをキュッと結んで。
布花と押し花——儚い花の命を慈しむふたつの方法。アクセサリー作家と詩人の丹精の営みが時を超えて温室の中で共鳴しています。
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ブランド名|Belle des Poupee
作品名|ビーズドットカチューシャ
布花(木綿・ビロード・シルク)・シルク・ガラズビーズ・アンティークシルバブレード・合金
作品サイズ| 長さ36cm/幅12cm
制作年|2020年(新作)
*別ショットの画像をオンラインショップに掲載しています
定番のビーズドットカチューシャに、「燃え立つ」赤が配された一作が届きました。
燃え立つは彼女のボンネット
燃え立つはその頬
燃え立つはそのスカート
けれども彼女は話せないのです!
維月 楓|訳(106番より抜粋)
本展のメイン・ヴィジュアルを飾った赤のボンネット、そのテーマとなった詩が本作にも流れています。
鮮やかな赤と白の配色をリズミカルに渡るガラスビーズ。布花に囲まれたガラスビーズの飾り枠の中には、ボンネット姿の女性のメタルパーツ——エミリーの詩へのオマージュが込められた一作を身につけて、秋の一日、詩集を紐解いてみてはいかがでしょう?
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ブランド名|Belle des Poupee
作品名|ひなぎくブーケピン
布花(木綿)・シルクリボン
作品サイズ| 縦 9cm(リボン〜花の先端)/横10cm(ブーケ部分)
制作年|2020年(新作)
*別ショットの画像をオンラインショップに掲載しています
温室から摘んできたひなぎくを、花束にして——淡いスモーキーピンクのリボンで結んだ、ひなぎくの髪飾り。
白いドレスの清廉なエミリーを彷彿とさせるひなぎく。うちに秘めた静かに燃え上がる情熱を静謐な詩情へと移す、白と黄色の健やかさ。
ヘアピンとして身につけるのはもちろん、生花のように飾っても素敵になります。下画像は、本作と本展で発表する金田アツ子 & 霧とリボン & レミーのアトリエによる《エミリーの温室のティタオル》をコーディネートして飾った一枚です。
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