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ヒルデガルト・シリーズ共同企画展

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オンライン開催・くるはらきみ & 霧とリボン ヒルデガルト・シリーズ共同企画展|前期グループ展《ヒルデガルトの小径》2022.6.22〜27|後期くるはらきみ個展《ヒルデガルト点…
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#植物

ヒルデガルト・シリーズ共同企画展|展覧会のご案内

◆ オンライン開催 at MAUVE CABINET * 霧とリボン実店舗は休業中のため ご入場頂くことはできません  中世の修道女「ヒルデガルト・フォン・ビンゲン」は、ハーブや鉱物(宝石)の世界を切り開いた「ドイツ薬草学の祖」であり、教会音楽の作曲家としても優れ、修道院長として女性たちに心を寄せたフェミニズムの先駆者とも言われています。  展覧会メインヴィジュアルの背景には、ネウマ譜で記されたヒルデガルトの聖歌「O Vis Aeternitatis」を配しました。  

ヒルデガルトの小径|巻頭エッセイ|江口理恵|愛と英知の創造力

 ミレニアムという新世紀前夜の1990年代前半、不思議な社会現象が起きた。スペインの名もない修道士たちが歌う『グレゴリオ聖歌』のCDが世界的に大ヒットしたのだ。単旋律のシンプルなチャント(詠唱・聖歌)が日本でも「癒しの音楽」として異例の20万枚のセールスを記録した。  時をほぼ同じくして、中世ドイツのヒルデガルトという名の修道女が作曲した音楽を、米国の現代作曲家がビートに乗せて編曲したアルバム『VISION』 も人気を博した。バブルがはじけ、不穏な空気が漂う世紀末にこのよう

ヒルデガルトの小径|DAY 2

本記事はオンライン展覧会《ヒルデガルトの小径》DAY 2の配信記録です。 Text霧とリボン  菫色の小部屋に明滅するちいさな灯り。ふいに過ぎる清冽な香り。音色が弾む小宇宙——雨曇りのモーヴグレイに包まれた一日、菫色の小部屋にはヒルデガルトの時間がしっとりと流れて。  DAY 2の本日、小径を散策して下さいました皆様に御礼申し上げます。  本日最初のご紹介は、ガラス作家・keino glass様と美術作家・内林武史さまによる静謐を極めるオブジェ作品。初コラボレーションと

ヒルデガルトの小径|Under the rose|ヒルデガルトのシークレット・ガーデン

 12世紀の聖女ヒルデガルトが丹精こめて造った庭には、どのような植物や昆虫が棲んでいたのだろう?  彼女が遺した音楽や、植物や医学についての膨大な書から想像すると、修道女らしい清らかさだけではない、個性的な美しさを湛えたちょっとビザールな動植物も生息していたと思われる。清濁併せ呑む聡明な知性こそが、時の皇帝や教皇にまで影響を与えたヒルデガルトの魅力だからだ。  今回、霧とリボンの企画展に初登場のUnder the rose=『秘密』という魅惑的な名の宝飾店から聖女の庭に放

ヒルデガルトの小径|こうのかなえ|花園の秘密は少女の手の中に

 霧とリボン企画に初参加となる、こうのかなえ様の作品は、鮮やかな植物と幾層にも重なる暗色の背景が織りなす作品世界から物語が溢れ出てくるようです。  少女時代から幻視が視え、8歳で修道院に入ることを決意したヒルデガルドが後世に遺した薬草学の知恵と、その秘密を受け継ぐ少女たちを繋ぐような作品をどうぞご堪能ください。  一人花束を手にたたずむ少女。その周りを可憐なヒナゲシが囲み、純粋さを表すスズランがひっそりと揺れている。庭の影は、少女時代の絡まりあった感情の目覚めを思い出させ

ヒルデガルトの小径|金田アツ子|花と十字架の祈り

 今回ご紹介する金田アツ子さまの絵画作品には、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンにゆかりのハーブが描かれています。目に美しいだけでなく、自然療法に利用される効能を持つ、植物の新たな魅力を伝える作品をお楽しみください。  ひとつ目の作品は、少女時代のヒルデガルトを描いた人物像です。  8歳で修道院に入り、16歳で永久誓願のヴェールを受け修道女となったヒルデガルト。幻視を見ながらも、世には語らなかった少女時代。顔の回りに優しく垂れるヴェールが、内に潜む情熱を柔らかく守るよう。

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|植物に寄り添って

 植物に造詣の深いヒルデガルトに敬意を表すように、くるはらきみは様々な植物を用いてヒルデガルトの姿を描き出した。  少女ヒルデガルトは、先輩修道女のユッタに尊敬のまなざしを向けている。その瞳には、隠し切れない音楽への強い好奇心も浮かんでいるようだ。二人の姿は、修道服とあいまって、まわりに立ち並ぶ背の高いオダマキたちに溶け込んでいる。  上を見上げるヒルデガルトと、彼女をユッタと同じ目線で見下ろすオダマキのコントラストも微笑ましい。オダマキはオダマキで、彼女たちを見守っている

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|DAY 1

本記事はオンライン開催 くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》DAY 1の配信記録です。 Text霧とリボン  連日の猛暑から、暑さが和らいだ今日。緑の匂いを運んで窓を抜ける風の心地よさが身体の芯まで染み入りました。皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか。  前期グループ展にて灯された美しい光を受け継ぐように、後期くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》が開幕しました。初日の本日、ヒルデガルトが棲まう菫色の聖所を逍遥して下さいました皆様に御礼申し上げます。  本展でも引き続き

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|緑煌めくヒルデガルトの春

 緑豊かなラインラントの貴族の家に生まれたヒルデガルトは、8歳で修道院に預けられた。本共同企画展のメインヴィジュアル「少女ヒルデガルト~小さな羽の旅立ち」でくるはらきみが切り取ったのは、幼いながらも将来への一歩を踏み出す決意に満ちた少女の得も言われぬ表情だった。  ヒルデガルトが成長して立派な修道女となり、ドイツの厳しい冬を乗り越え、植物園での植物たちとの感動の場面を描いた「春の再会」。たおやかな立ち姿の彼女が手を差し伸べる相手は、明るい緑色のフェンネルの精。ヒルデガルトは

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|かぐわしき草原の奇跡 

 植物学の祖ともいわれるヒルデガルトは、修道院の庭でどのように植物と対峙していたのでしょうか。今回は、自然の息吹を感じる土地で季節の花を愛でる、くるはらきみさまの暖かい眼差しを感じる3作をご紹介いたします。  集まった信者たちに炎の舌が降り、異国の言葉を話し始めたと伝えられるペンテコステ(聖霊降臨)。本作品では、炎に代わり色とりどりの花が降り注ぎます。  復活祭から50日、全ての生命を持ったものが目覚める季節。香気に満ちた大気のうねりを感じる淡い緑色のグラデーションが、天と

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|DAY 3

本記事はオンライン展覧会 くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》DAY 3の配信記録です。*明日7/7最終日です Text霧とリボン  暑さが和らぎ、身体も少し楽になりましたが、猛暑や台風の心配はまだ続いています。皆様、引き続き、どうぞくれぐれもお気をつけてお過ごし下さいませ。  涼しい場所からお楽しみ頂ける本オンライン展覧会、くるはらきみ個展会期後半がスタートしました。DAY 3の本日、ご高覧下さいました皆様に深くお礼申し上げます。  今日のヒルデガルトの苑には、ひとき

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|ヒルデガルト—祈りの薬草園《1》

 湿気を含んだ土の香りが舞い上がり、草花と混じり合う夏の小径。しばらく歩いてゆくと、雲間から覗く光に照らされた門が、威厳をたたえながらも、温かい面持ちで迎えてくれる。  ヒルデガルトが修道院へと向かった小径、あるいは、ユッタとちいさな庵で暮らしながら日々歩いた小径には、どんな草花が咲き、樹木の葉が揺れ、風が香りを運んできたのだろうか——  遠き異国、遥けき中世に生きたヒルデガルトへ、繋がる糸を手繰り寄せながら編んだ祈りの薬草園の風景を、小箱に託して。  くるはらきみ様と霧