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ヒルデガルト・シリーズ共同企画展

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オンライン開催・くるはらきみ & 霧とリボン ヒルデガルト・シリーズ共同企画展|前期グループ展《ヒルデガルトの小径》2022.6.22〜27|後期くるはらきみ個展《ヒルデガルト点…
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#絵画

ヒルデガルト・シリーズ共同企画展|展覧会のご案内

◆ オンライン開催 at MAUVE CABINET * 霧とリボン実店舗は休業中のため ご入場頂くことはできません  中世の修道女「ヒルデガルト・フォン・ビンゲン」は、ハーブや鉱物(宝石)の世界を切り開いた「ドイツ薬草学の祖」であり、教会音楽の作曲家としても優れ、修道院長として女性たちに心を寄せたフェミニズムの先駆者とも言われています。  展覧会メインヴィジュアルの背景には、ネウマ譜で記されたヒルデガルトの聖歌「O Vis Aeternitatis」を配しました。  

ヒルデガルトの小径|くるはらきみ|ヒルデガルトを辿って

 中世の修道女ヒルデガルトは、あまりに偉大で、遠い存在のように思える。しかし、くるはらきみの、丁寧に紡がれた作品の一つ一つが、ヒルデガルトと私たちが、遥かな時間を超えて、創作と自然という悠久の糸でつながっていることを教えてくれる。  その存在の大きさに身をすくませる必要はない。一歩ずつ着実に、身近な場所から、ヒルデガルトを辿って。  作家が描き出したのは、自然の恵みをいっぱいに享受しながら、仕事に精を出すヒルデガルトたちの日常。湯気が立っているのは煮詰めた果実の鍋だろうか。

ヒルデガルトの小径|DAY 1

本記事はオンライン展覧会《ヒルデガルトの小径》DAY 1の配信記録です。 Text|霧とリボン  雨粒の音階が聖歌の旋律となり、鬱蒼の緑と花々を揺らして——  夏至の到来と共に、ヒルデガルトの小径への扉が静かにひらきました。初日の今日、雨滴る小径のオンライン散策をお楽しみ下さいました皆様に深く御礼申し上げます。中世に生きたヒルデガルトへつながるエッセイと作品世界、お楽しみ頂けましたでしょうか。  くるはらきみ様と本展の構想を練った日から今日まで、長い時間をかけて、アーテ

ヒルデガルトの小径|こうのかなえ|花園の秘密は少女の手の中に

 霧とリボン企画に初参加となる、こうのかなえ様の作品は、鮮やかな植物と幾層にも重なる暗色の背景が織りなす作品世界から物語が溢れ出てくるようです。  少女時代から幻視が視え、8歳で修道院に入ることを決意したヒルデガルドが後世に遺した薬草学の知恵と、その秘密を受け継ぐ少女たちを繋ぐような作品をどうぞご堪能ください。  一人花束を手にたたずむ少女。その周りを可憐なヒナゲシが囲み、純粋さを表すスズランがひっそりと揺れている。庭の影は、少女時代の絡まりあった感情の目覚めを思い出させ

ヒルデガルトの小径|金田アツ子|花と十字架の祈り

 今回ご紹介する金田アツ子さまの絵画作品には、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンにゆかりのハーブが描かれています。目に美しいだけでなく、自然療法に利用される効能を持つ、植物の新たな魅力を伝える作品をお楽しみください。  ひとつ目の作品は、少女時代のヒルデガルトを描いた人物像です。  8歳で修道院に入り、16歳で永久誓願のヴェールを受け修道女となったヒルデガルト。幻視を見ながらも、世には語らなかった少女時代。顔の回りに優しく垂れるヴェールが、内に潜む情熱を柔らかく守るよう。

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|巻頭エッセイ|Klemens Maginot|ビンゲンのヒルデガルト

 Hildegardは、900年ほど前にビンゲンに実在した、修道女の名前です。ドイツでは、親しみを込めて、ヒルデと呼ばれています。  ビンゲンというのは、Rheinlandpfarz(ラインランドプファルツ州)にある、ドイツのどこにでもあるような街です。大きさから言ったら、中くらいという認識かと思います。日本のドイツのガイドブックに載るとしたら、おそらくライン河下りの途中の街として、一回見るかどうか?ドイツ人でさえビンゲンの名前を知らない人もいるかと思います。  小さな城の

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|植物に寄り添って

 植物に造詣の深いヒルデガルトに敬意を表すように、くるはらきみは様々な植物を用いてヒルデガルトの姿を描き出した。  少女ヒルデガルトは、先輩修道女のユッタに尊敬のまなざしを向けている。その瞳には、隠し切れない音楽への強い好奇心も浮かんでいるようだ。二人の姿は、修道服とあいまって、まわりに立ち並ぶ背の高いオダマキたちに溶け込んでいる。  上を見上げるヒルデガルトと、彼女をユッタと同じ目線で見下ろすオダマキのコントラストも微笑ましい。オダマキはオダマキで、彼女たちを見守っている

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|DAY 1

本記事はオンライン開催 くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》DAY 1の配信記録です。 Text霧とリボン  連日の猛暑から、暑さが和らいだ今日。緑の匂いを運んで窓を抜ける風の心地よさが身体の芯まで染み入りました。皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか。  前期グループ展にて灯された美しい光を受け継ぐように、後期くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》が開幕しました。初日の本日、ヒルデガルトが棲まう菫色の聖所を逍遥して下さいました皆様に御礼申し上げます。  本展でも引き続き

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|予感

 新たな出会いの予感がする。  今度は、どんなヒルデガルトに出会えるだろうか。  時が止まったような静かな空間の中で、少女は一人、前を見つめている。いや、一人ではない。小さな羽根が風に運ばれて舞い上がる。その羽根はヒルデガルトにしか見えていないのかもしれない。  静けさの中に浮き上がるような心の動きが羽根となって、ヒルデガルトに寄り添うようにゆらゆらと揺れている。光は、ヒルデガルトと羽根を照らし、少女の不安を和らげ、門出を祝福しているようだ。  ヒルデガルトの瞳には迷いが

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|DAY 2

本記事はオンライン展覧会 くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》DAY 2の配信記録です。明日7/5(火)は配信お休みです。 Text霧とリボン  戻り梅雨の気配満ちる雨曇りの一日。ちいさな庭に出て、緑を終えた落ち葉を掃いて集めると、大地の野趣あふれる湿った香りが勢いよく立ち上ります。展覧会を通してヒルデガルトに出会う日々、香りが伝える季節のわずかな変化を、いままで以上に敏感に感じていたいです。  くるはらきみ個展二日目。ここオンライン・ギャラリーにて展覧会をお楽しみ下さ

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|かぐわしき草原の奇跡 

 植物学の祖ともいわれるヒルデガルトは、修道院の庭でどのように植物と対峙していたのでしょうか。今回は、自然の息吹を感じる土地で季節の花を愛でる、くるはらきみさまの暖かい眼差しを感じる3作をご紹介いたします。  集まった信者たちに炎の舌が降り、異国の言葉を話し始めたと伝えられるペンテコステ(聖霊降臨)。本作品では、炎に代わり色とりどりの花が降り注ぎます。  復活祭から50日、全ての生命を持ったものが目覚める季節。香気に満ちた大気のうねりを感じる淡い緑色のグラデーションが、天と

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|自然の喜び

 どこかから、にぎやかな気配がする。  自然の恵みが近づいてくる。  彼らはヒルデガルトゆかりのハーブにどうもよく似ているようだ。  陽の光をいっぱいに受けて、花咲く君はカレンデュラ。天に向かって伸びるように逆立つ赤毛は、太陽に愛された証。  身体は小さいけれど存在感はとびきり。鮮やかなカラーは目に眩しく、シックな黒にもよく映えている。  優しい面差しながらも、瞳には意志の強さがにじんでいる。君からはそう、いつもあたたかい匂いがする。傷ついた体も心も癒してくれる、頼れる

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|おとめ聖ヒルデガルト

 くるはらきみ様& Du Vert au Violetのコラボ作品「プライヴェート・ポプリセット《ヒルデガルト — 祈りの薬草園》」に封入されるカードの原画となります。  きみ様は本展のためにはじめてホーリーカードをイメージしたアクリル画を手がけられました。聖人や聖書の一場面、あるいはキリスト教における伝統的なモチーフを組み合わせた図案を携帯できるようカードにしたもので、いにしえよりお守りのように大切にされてきました。ヒルデガルトの象徴として描かれている植物はすべてポプリに

くるはらきみ個展《ヒルデガルト点描》|ヒルデガルト—祈りの薬草園《1》

 湿気を含んだ土の香りが舞い上がり、草花と混じり合う夏の小径。しばらく歩いてゆくと、雲間から覗く光に照らされた門が、威厳をたたえながらも、温かい面持ちで迎えてくれる。  ヒルデガルトが修道院へと向かった小径、あるいは、ユッタとちいさな庵で暮らしながら日々歩いた小径には、どんな草花が咲き、樹木の葉が揺れ、風が香りを運んできたのだろうか——  遠き異国、遥けき中世に生きたヒルデガルトへ、繋がる糸を手繰り寄せながら編んだ祈りの薬草園の風景を、小箱に託して。  くるはらきみ様と霧