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ナイト・オブ・ザ・リビングデッド

ゾンビ映画の礎となった「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」。

前から見てみたいと思っていたのですが、「ジャンル開祖」というだけあり、どのくらい怖いのかが想像できず、見る機会を失っていました。
ネタバレを含んだ感想記事は既に読んではいましたが、昨日の就寝前にやっと拝聴しました。

あらすじは、とある町で起こった「原因不明の襲撃事件」が全米で広がっていき、民家に立てこもる主人公たちの状況が絶望的になるというモノ。
映画やドラマ、アニメなどを見るとき、「登場人物に感情移入する」ということがあると思うのですが、主人公以外の登場人物が己(と関係する人物)のことしか頭にないことから、一見、感情移入もクソもないように思います。
でも、周りがゾンビだらけで、公共インフラは崩壊状態、助けもいつ来るか分からない状態。それぞれが民家に逃げ込むまで紆余曲折あった中で、誰を頼ればいいのか、こいつは信用していいのか、自分ならもっとできるという過信など、もし自分が映画と同じような状況になったとき、登場人物よりも上手く動けるのかどうか問われると、それぞれの登場人物に初めて感情移入できる作品だと思うんです。

例えば、ヒロインのバーバラは、道中一緒に来ていたお兄さんが目の前でゾンビに襲われて、命からがら民家に逃げ延びるわけですが、あんなショッキングな光景を見てもなお平常心を保っていられるでしょうか?
強い人なら、ベン(主人公の黒人)みたいに、論理的に物事を見て、事態に対処するとは思いますが、やはり異常事態を自分で対処しなければならないという状況下では、良くも悪くも人間の本性がむき出しになり、生き延びる確率がそれに比例していく。
この構図はゾンビ映画のお決まりパターンとしておなじみですが、ナイトに関して言うと、最も面白く、恐ろしく感じました。

私が見たのは、新たな撮影カットを追加して再編集した「30周年記念バージョン」。
ファンからは「クソ」と評されていますがw発端となった騒動(追加カット)がプロローグとして語られ、そこからオリジナルシーンにつながっていくのは、お見事でした。
噛まれてもなおゾンビ化せず生き残った牧師がある意味狂っていた(こちらも追加カット)というのもある種の人間の本性として見て取れますね。

ネタバレすると、民家に立てこもった登場人物は全員救いのない結末を迎えてしまうのですが、あくまで作中世界の「最初の夜」が終わったに過ぎず、"Living Dead”(生ける屍=ゾンビ)は無限に増殖し続けるわけです。
ゾンビ退治部隊の人々も、もはやゾンビは「的あて」としか見ていない、助けを求めている人間をゾンビと見間違える(「黒人だから殺した」という説もあります…)など、まともな人間のほうが少ないんじゃないかとまで感じさせてくれる映画でした。
特に、エンドロールは音楽効果も相まって「人間って怖いな」と悲壮感全開となっています。
ベンさんあれだけ頑張ってたのにそれはねぇだろ!と、なんとも後味の悪い締め方…(褒めてます)
やっぱりジョージ・A・ロメロは偉大だわと、心の底から思います。

ちなみにこの映画、配給時に著作権標記が欠落した経緯があり、現在パブリックドメイン状態となっています。
Youtubeやニコ動で見れますので、是非ご覧になってみてください。
ニコ動はカラー版もありますよ!

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