アライアンススターダスト、星たちの競演。「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 7thLIVE Q@MP FLYER!!!」AIR LIVE DAY1仮想レポート

【このレポートは、かくあれと祈る世界を描いた創作フィクションです。現実のライブ、出演者とは一切関係ありません。現在無料お試し公開中です。】

【この記事に直接飛んで来られた方は、まずはDAY1開演前諸注意をご覧ください。】


765プロライブシアター初の大型野外ライブイベント「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 7thLIVE Q@MP FLYER!!!」AIR LIVEが2020年5月23日~24日、山梨・富士急ハイランド・コニファーフォレストにて開催された。今回は23日に開催されたDAY1をレポートする。

「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 7thLIVE Q@MP FLYER!!!」AIR LIVE DAY1には765プロライブシアターより最上静香、エミリー スチュアート、北上麗花、北沢志保、木下ひなた、桜守歌織、佐竹美奈子、ジュリア、篠宮可憐、白石紬、周防桃子、高山紗代子、天空橋朋花、徳川まつり、中谷 育、野々原 茜、箱崎星梨花、松田亜利沙、横山奈緒、サプライズゲストとして961プロより詩花、玲音が出演した。

前述した通り、765プロライブシアターのアイドルたちによる大型野外ライブはこれがはじめて。全国津々浦々を巡ってきた彼女たちだが、山梨県への上陸も初めてという“初”尽くしだ。一瞬、「ランティス祭」という単語が頭をよぎったが、同地でランティス祭の初回が開催された年には、シアターアイドルの多くはまだデビューしていなかった。厳密に縁のあるアイドルを探せばユニットデビューしたばかりの日高愛や、若き日の玲音がいたことを思い出すが、これは書きすぎか。

彼女たちが重ねてきた努力と絆の結晶である過去に想いを馳せがちな昨今だが、忘れてはならない、今日は彼女たちの初の大規模野外ライブ。21人の瞳に映るのは、この先の未来だけだ。

富士急ハイランド・コニファーフォレストは、文字通り山梨の遊園地・富士急ハイランドの敷地内にある。一般にイメージする中央線の彼方の「山梨」よりははるかに山奥と言ってもいいだろう。今回のライブ参加者の中には残念ながらご当地アイドルはいなかったが、直前のラジオで舞浜歩が、「あそこって、もうほとんど静岡だよね!? やっぱりボクも出るべきじゃないかなぁ」と、ある先輩がぼやいていたエピソードを紹介して、いろいろな意味で話題になっていた。当日のMCでのアウトレットや遊園地に関するトークへの会場反応も良く、アイドルたちが山梨に来る日を心待ちにしていたファンも多かったのだろう。

富士山を遠くに臨むコニファーフォレストは、なかなか訪れるのに骨が折れるライブ会場のひとつと言っていいだろう。中央線から富士急行に乗り換えて(しかも18切符が使えないシーズンだ!)、あるいは各地から予約が全く取れない高速バスに乗車して、ようやく富士急周辺のはしっこに辿り着くことができる。運よく直通バス「FLYER!!!」号のチケットが取れた幸運なファンは、ラッピングバスで直接会場入りしていたようだ。フラワースタンドが並ぶ物販エリアには屋台が並び、シアターアイドルたちがプロデュースしたというフードメニューの提供も行なわれていた。

ライブエリアの入り口では、木々の間の小道でライブロゴの入ったゲートが待ち受ける。気温はやや高めでほどよい感じだが、人口密度の高さゆえに汗が吹き出す。ゲート周辺から心地よいミストが吹きだして来場者を包みこむと、ファンたちからは「ずっとここにいたい」「ここはフィンランドだ」といった呟きが漏れていた。

だが幸いなことに、ゲートエリアを抜けると、富士から吹き下ろす清涼な空気が首筋をなぞった。天候はやや曇りがちながらも晴れ。物販の人ごみを泳ぎながら食べ歩く間にすっかり肌に張り付いていたTシャツがふっと軽くなる感覚は、765プロ初の大型野外ライブの記憶として残るに違いない。

会場はやや横長な設定で、特設感あふれるメインステージは屋根付き。開演前、メインステージを覆うやや厚い布地の幕には、「Q@MP FLYER!!!」のロゴとともに7番目のライブを示す虹の意匠があしらわれている。野外で風をはらむ布地を見ていると、765プロみんなで過ごす虹のテントのように見えてくるからなんだか不思議だ。

開演の16:30。5月の空はまだ青く、どこまでも高い。超満員の会場の期待感が高まる中、華々しい紙テープと共に、舞台の幕が上がる。少し懐かしくも感じるイントロ。開幕ナンバーは「Welcome!!」だ。ステージに、ルミエール・パピヨン衣装をまとった19人の姿が鮮やかに現れた。

「765プロ、野外シアターへ、「「ようこそ!!」」」

初日に出演する765プロアイドル19人が歌う「Welcome!!」。周年ライブでの披露は久しぶりだが、初の野外ライブというシアターへの歓迎にこれほどぴったりな楽曲はほかにないだろう。センターに最上静香が立つと、ステージ全体がどこか凛とした引き締まったように感じられる。ぴったりと揃ったダンスの中でも、端の立ち位置で誰よりも大きく動き回る横山奈緒や、一際小さい身体で弾む毬のように躍動する中谷育など、それぞれの動きに個性や主張が見えた。

開幕の挨拶を終えると、トップバッターは木下ひなた、佐竹美奈子、松田亜利沙による「Helloコンチェルト」。会場に向けて手を振るような振付を見せながら、3人はこぼれるような笑顔を見せる。3つの笑顔と、会場からの全力のコールがひとつになって奏でる世界一の協奏曲だ。秋月律子の名調子でおなじみの「レディース・アンド・ジェントルマン、ヒアカムズ、ミリオンスターズ!!」のフレーズは松田がけれん味たっぷりに叫び、最後は3人とファンたちが声を揃えた。

青空をぐるっと嬉しそうに見渡した中谷 育が歌い出したのは「グッデイ・サンシャイン」。ステージをいっぱいに使って歩き回りながら、時にコミカルに、時にキュートに。超満員の会場を楽しく散歩するような姿に思わず引きこまれてしまった。久々の披露だったが、とびっきりのかわいさはそのままに、確かな成長を感じさせるパフォーマンスだ。

箱崎星梨花、周防桃子、徳川まつりの「Girl meets Wonder」は劇中の配役で言えば少女、妖精、魔法使いによる3人バージョンで披露。ステージ前からシャボン玉が無数に舞う中、舞台をファンタジーワールドに変えてみせた。サイドステージから起こったざわめきに目を向けるとなんと熊の着ぐるみから顔だけ出した野々原 茜が登場。ガオーと凶悪なポーズを見せるも、まつり姫が「イルミルミ…」とばかりにタクトをふるうとたちまち退散したのだった。

北上麗花は高原の澄んだ空気をすぅっと吸いこむと、「FIND YOUR WIND!」を披露。どこまでも高らかに、清涼に。富士の高嶺に響けと最高のハイトーンをどこまでも響かせた。ライブ会場の天井も壁も彼女を閉じ込めるには狭すぎたと言わんばかりに、その歌声は超満員の観客のひとりひとりにダイレクトに吹き抜けていく。風と一体になってステージを駆け抜けた少女は最後の息を吐き出すと、満足そうに微笑んだ。

空に向けて柔らかく手を差し伸べた高山紗代子が歌うのは「vivid color」。青と緑の狭間のカラフルな世界に響く優しい歌声が、サビに入るとさらに鮮やかな色彩を帯びていく。高山が「このトキメキ忘れない」と小さな掌をぐっとにぎると、会場からはざわめきと大きな拍手が巻き起こった。

鮮烈なギターの響きが会場の空気をビリッと変えると、ステージには白石紬、桜守歌織、ジュリア、野々原 茜が登場。「Justice OR Voice」の白いセーラー服を基調にした衣装の中で、桜守がまとう赤が一際鮮烈だ。おだやかな物腰の印象がある桜守だが、この衣装で赤のカラーコンタクトを入れると冷ややかに冴えわたる美しさが際立って見える。4人の歌声が火花を散らし、会場のボルテージを上げていく。間奏で殺陣のような動きを見せた白石と桜守が交錯する瞬間、ステージは眩いばかりの光芒に包まれた。

「Legend Girls!!」は、最上静香、箱崎星梨花、天空橋朋花、佐竹美奈子、徳川まつりの5人編成で披露。軽やかなステップで魅了すると、それぞれの個性あふれるソロで歌い継いでいく。最近はトリオ編成で披露されることが多い楽曲なこともあり、歌割が新鮮に感じられる。5色の個性がサビで溶け合う感じがなんとも心地よかった。

エミリー、木下ひなた、横山奈緒は星座ユニット・キャンサーとして「ランニング・ハイッ」を披露。センターの横山の元気いっぱいさは言うに及ばず、普段はおしとやかで、あるいはおっとりしたイメージのあるエミリーとひなたも、この曲ばかりは全力で明るく激しいパフォーマンスを見せる。エミリーのツインテールがぴょんぴょんと跳ね回る様子がとても新鮮だ。印象的なソロパートを上手側に立っている木下が素朴に歌い上げ、センターの横山の声質が合いの手のフレーズにハマっているのがなんだか面白いバランスだ。後半は今度は横山がメイン、エミリーがキュートな合いの手に回る。野外を舞台に全力で駆け回る運動会のようなステージだった。

「G▽F」は篠宮可憐・周防桃子のちょっと新鮮な組み合わせ。ふたりが頭上で手を打ち合わせて盛り上げると、会場いっぱいにクラップの花が咲いた。モデルのような篠宮と小柄な周防が並ぶとまるで姉妹のようだ。役者としての評価も高い周防だけに、楽曲の役柄に入りこんだ時の表現も素晴らしく、「(恋のおまじないが)効いたかな?」のフレーズのかわいらしさに撃ちぬかれるファンが続出していた。

野々原 茜と箱崎星梨花は「fruity love」を披露。箱崎がメンバーに入るとユニットとしての表現に甘々なかわいらしさが増す感じで、リズミカルでちょこまかとした動きを一生懸命にこなしている感じがとにかくキュート! 歌いなれている野々原がパフォーマンスをリードする感じが新鮮で、コミカルな印象が強い彼女も改めて見るとやっぱり相当な美少女だなと再認識させられた。

天空橋朋花と中谷 育は「HELLO, YOUR ANGEL♪」を披露。ソロ曲では大人っぽい表現が多い天空橋だが、この曲では年齢相応で、聖母のような優しい表現を見せて子豚ちゃんたちを魅了していた。ゆったりと羽ばたく振り付けや、手を差し伸べるような動きの中で、小柄なはずの中谷の表現がすんなりのびやかに感じるのが面白い。転調でさらにテンションを上げながらも優雅に歌い踊る様子は、まさにふたりの天使だった。

なつかしのデュオ曲4連続の最後は北上麗花と北沢志保の「piece of cake」だ。とてもおしゃれな雰囲気の楽曲で、歌う2人もしっとりした大人のニュアンスをにじませる。落ち着いた楽曲だからこそ、ふたりの歌唱力の地力の高さがよくわかる。一方、間奏でくるくると回りながらリズミカルなダンスを見せる様子はとてもかわいらしい。「piece of cake」とは朝飯前さ、という感じの意味だが、北沢の動きや音階を丁寧に押さえていく生真面目な表現は、パフォーマンスをたくさんの練習が支えていることを感じさせた。

周防桃子の「ローリング△さんかく」は、ワンアイデアの勝利。ステージに登場した周防が両手の指で△マークを作ると、背後の巨大スクリーンに実写っぽい富士山が大写しになったのだ。歌詞に合わせて富士山がコロコロ転がると、思わず背後にあるはずの富士山を確かめるファンがいたのが面白い(残念ながら、グラウンドレベルからは富士山は見えにくい)。こだわりゆえに周囲とぶつかる少女の不器用さを歌った楽曲だが、とびきり楽しそうに歌う周防の姿からは、歌い終えてステージ裏で仲間と喜び合う様子が想像できた。

「Melody in scape」は佐竹美奈子と高山紗代子の静かで大人なイメージを堪能できる楽曲だ。ステージに現れた佐竹は深く息をつきながらおだやかな微笑みを浮かべ、高山はまっすぐに彼方を見据えている。抑えたトーンの中で繊細な表現をかわしあったふたりの歌声は、サビで合わさって強い輝きを放つ。ゆったりとサイリウムを捧げるファンたちも、半ばその歌声に聴き入っている様子だった。

桜守歌織の「MUSIC JOURNEY」は先日の感謝祭では披露されたが、ナンバリングライブでの披露ははじめて。おだやかなスポットに照らされた桜守は、優雅に舞うように、あるいは指揮をとるようにリズムを取ると、軽いハミングで喉を調律。最初の一音から完璧にコントロールされた歌声で、観客を歌声の旅に連れて行った。五線譜を辿る旅路は楽しく、そして激しく! うねるような観客のレスポンスと響き合いながら、彼女の新しい一面を感じさせてくれた。

稜線に陽が沈み始める頃、天然のオレンジの名残に照らされながら篠宮可憐が登場。どこか物悲しく美しいイントロの旋律は「夕風のメロディー」だ。祈るように舞う舞踏と共に、優しく澄んだ歌声が無音の広場に響き始める。旋律が壮大に高まりを見せるとともに、篠宮の歌声も意志を込めた力強い音に変わっていく。アウトロの舞いは、歌に込めた想いの余韻が指先まで通っているようで、夢のようにおぼろげで美しい光景だった。

ライブ前半の締めは桜守歌織、エミリー、木下ひなた、中谷 育、横山奈緒による「サンリズム・オーケストラ♪」。センターは桜守が務めた。ステージに並んだ5人が軽快なステップを刻みながら楽しく歌い踊る。「6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!!」の仙台公演でも感じたことだが、多人数での歌唱を前提にした属性曲を少人数で歌唱すると、個々のアイドルのカラーが出て、違った味わいが出てくる。今日の5人が合わさって作り出す空気感は柔らかな日差しのお日様のようで、その中に桜守歌織というスペシャルなボーカルがしっかりとした芯を通していた。

MCの間に日は没し、会場の雰囲気ががらりと変わる。青っぽい光で浮かび上がるステージに北上麗花、ジュリア、高山紗代子の3人が現れると、会場の温度が少し下がったように錯覚する。星座ユニット・アクアリウスによる「待ちぼうけのLacrima」だ。高山の優しくもまっすぐな歌。ジュリアの少し癖のある情感豊かな歌。北上の全く別の楽器を鳴らしているような強い存在を湛えた歌。三様の個性が響き合い、互いを高みへと引き上げていく。スタイルはバラバラでも想いと気持ちの高まりはシンクロしているからこそ、アクアリウスの歌はこんなにも美しく、心地よいのだろう。

エミリーと徳川まつりはCharlotte・Charlotteの「ミラージュ・ミラー」を披露。鏡の世界にふたりが彷徨いこんだようなイメージのスクリーン映像を見て連想したが、遊園地といえば鏡の迷路。そういえば富士急ハイランドにも「リサとガスパールのミラーメイズ」がある。Charlotte・Charlotteのドール衣装ではなく共通衣装で歌うと、少しエミリーと徳川本人に寄せた表現にも見えた。それはふたりの視線が合わさった時のおだやかな微笑みといった、ほんのささいなニュアンスだったが。物語的なユニット色が強い楽曲がライブコンセプトに収まっていることが興味深かった。

白石紬の「さかしまの言葉」も、桜守の「MUSIC JOURNEY」と同じく先日の感謝祭以来、ナンバリングライブ初披露となる。ふたりはデビューステージ以来、いつだって初めてを共有してきた。白石の「瑠璃色金魚と花菖蒲」が彼女の圧倒的なポテンシャル、スキルを示す色合いが強い楽曲だったの対して、「さかしまの言葉」はよりダイレクトに、彼女自身の内面に潜っていく楽曲であるように感じた。サイリウムの海に向けて語りかけるように、訴えるような歌声の中に、感情の欠片が幾つも弾けた。暴れる感情を敢えてコントロールしないような、荒削りな歌唱が何故こんなにも胸に迫るのか。だからアイドルは、面白い。

「カワラナイモノ」は、篠宮可憐、高山紗代子、桜守歌織の組み合わせで披露。オリジナルメンバーでの歌唱が叶っていないレア曲だが、それぞれの想いをソロボーカルに込めてつないでいく表現が印象的だ。今回はそこに、桜守という変化の象徴でもある新しい表現が加わった。3人が奏でる美しいハーモニーを聴きながら、変わっていくものと、その中でも決して変わらない何かに想いを巡らせた。

北沢志保、徳川まつり、松田亜利沙は「リフレインキス」を披露。歌とダンスで表現するアイドルの世界にあって、怜悧でどこか見下ろすような“表情”が表現の大きなウェイトを占めるところが独特な楽曲だ。北沢や松田の攻めの表現が印象的だが、身にまとうイメージの具現化はまつり姫もお手の物。少しいじわるで蠱惑的なプリンセスの姿は、忘れられない印象を残した。

佐竹美奈子、横山奈緒のユニット・Jus-2-Mintは新曲「Super Duper」を初披露! 佐竹と横山のスタイルの良さを前面に出したスタイリッシュな表現はK-POPの流れも感じる最新の潮流だろう。腰と体幹で見せるダンスのつややかさはドキッとするほどで、ビジュアル面で高い完成度に仕上げながらも、「声」そのものが持つキュートさは健在というアンバランスさが絶妙だ。動きとシルエット、そして歌声で遠くまで魅力を伝えられるこのデュオは、ドームライブ時代の765プロにだからこそ生まれたユニットかもしれない。

蒼月の属性曲「brave HARMONY」は白石紬、篠宮可憐、ジュリア、天空橋朋花、最上静香が歌唱を担当。センターは白石紬が担当した。4つの星座ユニットの数や組み合わせによってカラーをガラリと変える「brave HARMONY」の個人戦バージョンというところか。篠宮、ジュリア、天空橋、最上という誰がセンターに立っても戦えるメンバーの中で、中央に立つ白石にとっては試しの場でもあるが、その期待に彼女は見事に応えて見せた。緊張の壁をつきぬけた時の肚の据わり方は、デビューから変わらない彼女の資質だろう。ライブ当日は新月。月のない夜に、5人が描きだした巨大な満月がスクリーンに映し出された。

スクリーンに浮かぶ満月以外の照明を落としたステージに、天空橋と白石が残る。きっぱりとした足取りでエミリーがステージに歩み出ると、2人の間に入る。3人がスパンと音をさせそうな鮮やかさでセンスを広げ、ポーズをキメると同時に、流れ始めたのはユニット・花咲夜の「百花は月下に散りぬるを」の華やかなイントロだ。一転眩しいほどの照明に包まれた3人は、和ロックの奏でに乗って自在に舞い歌う。間奏に照明が暗くなると、二丁扇子の裏面に塗られた蓄光塗料が発光して舞いに幽玄の彩を添えた。激しさを増していく表現の中で、センターに立つエミリーの柔らかい美しさと動きの躍動が見事に両立していたのは、異国にルーツを持ちながら誰よりもこの地を愛する彼女ならではのものだった。

ステージの月が消え、再び空の主は5月の星々に変わる。松田亜利沙と横山奈緒、「夜に輝く星座のように」だ。それぞれのユニット曲で作ったテンションをそのまま持ち込んだようなふたりは、歌い出しから……いや、ステージに一歩を踏み出した瞬間から出来上がったムードだ。ふたりの普段の陽性の個性が眩しいほど、それが転じた夜の色は濃い。天性のファニーボイスの冴えと動きのキレはどんどんと輝きを増し、ステージと会場を支配していった。

舞台の照明が落ち、会場に先ほどまでのステージの余韻のざわめきが満ちる。やがて、控えめなざわめきを切り裂くように、「ジャーーン……」と残響するギターが響いた。その音だけで、音の主を察した観衆が振り返って喝采を上げる。最後方の階段状エリアの最上段、機材エリアと思われていた天幕が一部取りはらわれると、そこには昇降式のステージギミックが。ゆっくりとせり上がる一人舞台に立つのは、もちろん頬に星を刻んだ少女だ。お願いがあるんだ、との頼みに応えて、会場のサイリウムが消えていく。会場で一番高い場所を照らす薄明かり以外の光が全て消えても、星明りに照らされた会場は意外なほど明るい。少女は満天の星と会場の視線を独り占めにする時間をしばし抱きしめると、愛用のギターを抱え直し、呟いた。

「──「流星群」」。

数分間の伝説の時間が過ぎ去ると、ジュリアは満ち足りた様子でにっと笑う。やがて、誰かに呼びかけるように口元を動かすと、メインステージをズバッと指さした。ピンスポットが流星のように会場を渡り、メインステージのセンターを照らす。

光のバトンを受け取った最上静香は、まっすぐにステージの彼方の一点を見つめながら、「Shooting Stars」のサビをワンフレーズ、アカペラで歌いあげた。歌声が空間を隅々まで満たし、たっぷりと情感を込めた歌い終わりの余韻が震えるのに合わせて、5つのスポットがステージを照らし出す。最上静香、北上麗花、北沢志保、野々原 茜、箱崎星梨花のユニット・クレシェンドブルーと、彼女たちのはじまりの歌「Shooting Stars」。オリジナルメンバー5人でのナンバリングライブ初披露だ。最高の表現と自信にあふれた表情。そして何より、この日を一番に待ち望んでいたのがステージの5人であるという歓喜。それはオリジナルメンバーによる披露まで長い時間がかかったことが必然であったかのような、素晴らしいステージだった。

そして。ステージには高貴なオッドアイと燃えるような髪のアイドルと、緑なす髪の清楚な少女が現れた。こうなったら矢でも鉄砲でも、オーバーランクでも持ってこい。ユニット・ZWEIGLANZの玲音と詩花は、前振りは「感謝祭」で済んだとばかりに、前触れもなく圧倒的に「アライアンス・スターダスト」を歌い出した。

玲音、そして詩花は個人として究極を極めたアイドルだ。それがステージで個性をぶつけあう様子は、デュオというよりはお互いの輝きを比べ合う真剣勝負のようだ。キャリアと実績で勝る玲音に、詩花はあふれる才気と、今この瞬間さえも経験として吸収する素直でまっすぐな魂で挑戦する。おたがいをゆっくりと指さした2人の眼差しが、束の間交差して、離れる。寄り添って星々に手を差しのべるふたりが見せた光景は、まさに王者のステージだった。

歌い終えた玲音が上気した表情で「キミたちがあまりに輝いて見せるから、熱くなってしまったよ! キミもまだ、満足してないんじゃないか?」と呼びこんだのは、先ほどステージを終えたばかりの最上静香だった。本当のラストバトルは「アライブファクター」。お互いの存在を証明するために、2人は歌声と全身全霊をぶつけあった。

アンコールでは、玲音と詩花も交えたMCで、今日のライブを全員で楽しく振り返った。アンコールの「UNION!!」では、玲音が即興で合わせての共演を披露。あわてた様子の詩花も、苦も無くそれに合わせていったのは流石の一言だった。

ラストナンバーはもちろん、ライブタイトルにも冠した「Flyers!!!」。精魂尽き果てたファンたちを会場に残して、ライブ初日の夜は更けていった。


●「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 7thLIVE Q@MP FLYER!!!」AIR LIVE DAY1
2020.05.23 山梨・富士急ハイランドコニファーフォレスト

M01:Welcome!!(THE IDOLM@STER MILLIONSTARS)
M02:Helloコンチェルト(木下ひなた・佐竹美奈子・松田亜利沙)
M03:グッデイ・サンシャイン(中谷 育)
M04:Girl meets Wonder(箱崎星梨花・周防桃子・徳川まつり)
M05:FIND YOUR WIND!(北上麗花)
M06:vivid color(高山紗代子)
M07:Justice OR Voice(白石紬・桜守歌織・ジュリア・野々原 茜)
M08:Legend Girls!!(最上静香・箱崎星梨花・天空橋朋花・佐竹美奈子・徳川まつり)
M09:ランニング・ハイッ(エミリー・木下ひなた・横山奈緒)
M10:G▽F(篠宮可憐・周防桃子)
M11:fruity love(野々原 茜・箱崎星梨花)
M12:HELLO, YOUR ANGEL♪(天空橋朋花・中谷 育)
M13:piece of cake(北上麗花・北沢志保)
M14:ローリング△さんかく(周防桃子)
M15:Melody in scape(佐竹美奈子・高山紗代子)
M16:MUSIC JOURNEY(桜守歌織)
M17:夕風のメロディー(篠宮可憐)
M18:サンリズム・オーケストラ♪(桜守歌織・エミリー・木下ひなた・中谷 育・横山奈緒)
M19:待ちぼうけのLacrima(北上麗花・ジュリア・高山紗代子)
M20:ミラージュ・ミラー(エミリー・徳川まつり)
M21:さかしまの言葉(白石紬)
M22:カワラナイモノ(篠宮可憐・高山紗代子・桜守歌織)
M23:リフレインキス(北沢志保・徳川まつり・松田亜利沙)
M24:Super Duper(佐竹美奈子・横山奈緒)
M25:brave HARMONY(白石紬・篠宮可憐・ジュリア・天空橋朋花・最上静香)
M26:百花は月下に散りぬるを(エミリー・白石紬・天空橋朋花)
M27:夜に輝く星座のように(松田亜利沙・横山奈緒)
M28:流星群(ジュリア)
M29:Shooting Stars(最上静香・北上麗花・北沢志保・野々原 茜・箱崎星梨花)
M30:アライアンス・スターダスト(玲音・詩花)
M31:アライブファクター(最上静香・玲音)

-encore-
EC01:UNION!!(THE IDOLM@STER MILLIONSTARS+玲音・詩花)
EC02:Flyers!!!(THE IDOLM@STER MILLIONSTARS)

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