【お蔵入り】「UNI-ON@IR!!!!」神戸公演レポート
※掲載タイミングを逃してしまってお蔵入りってるレポなのですが、SSA公演のレポートで地方公演との比較をする上で各会場のレポートもないと伝わらないかなと思ったので、とりあえず72時間ほどこちらに草稿をアップしておきます。さくっと消すかもなので禁無断転載でお願いします。
港町に灼熱はじけた姫祭り! 「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!!」神戸公演「Princess STATION」レポート
「アイドルマスター ミリオンライブ!」ライブツアー「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!!」の神戸公演「Princess STATION」が2019年5月18日〜19日、神戸ワールド記念ホールにて開催された。本稿では19日の2日目公演をレポートする。
今回のツアーは、「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」ゲーム内のアイドル属性別に公演が行なわれた。神戸公演はPrincess公演で、春日未来役の山崎はるか、エミリー スチュワート役の郁原ゆう、高坂海美役の上田麗奈、佐竹美奈子役の大関英里、高山紗代子役の駒形友梨、田中琴葉役の種田梨沙、徳川まつり役の諏訪彩花、中谷 育役の原嶋あかり、七尾百合子役の伊藤美来、福田のり子役の浜崎奈々、松田亜利沙役の村川梨衣、矢吹可奈役の木戸衣吹、横山奈緒役の渡部優衣が出演した。
同属性のメンバーで構成された4つのユニットと、司会の青羽美咲が繰り広げる歌番組「UNI-ON@IR!!!!」をステージ上で展開するコンセプトの今回のツアー。神戸公演に出演するのはSTAR ELEMENTS、Charlotte・Charlotte、トゥインクルリズム、閃光☆HANABI団の4ユニットだ。
●朗読劇や和太鼓チームの演出も!
「Princess Be Ambitious!!」で登場したプリンセススターズ。衣装は各ユニットのものを身に着けている。STAR ELEMENTSは学校の制服、閃光☆HANABI団は海のセーラー服という比較的スタンダードなモチーフなこともあり、やはり幾重にもフリルを重ねたドールのようなCharlotte・Charlotteと、物語から飛び出してきた魔法少女のようなトゥインクルリズムはインパクトが大きい。未来に寄せたウィッグの髪色と髪型で登場した山崎は春日未来そのものがそこにいると感じるほどに再現度が高く、彼女がミリオンライブ!のステージの真ん中にいてくれるとやはり不思議な安心感がある。
「UNI-ON@IR!!!!」最初のユニットは山崎はるか、木戸衣吹、種田梨沙のSTAR ELEMENTS。ほとんどのユニットがCD発売とリリースイベントを経てこのステージを迎えているのに対して、STAR ELEMENTSは本ライブがCD発売前のタイミングになった。
「Episode. Tiara」は3人が演じるアイドルの関係性を強く感じる楽曲だ。上手から木戸、山崎、種田の並びが基本で、種田がソロを歌っている時は山崎と木戸が身体ごと下手側を向いて、種田が歌う姿を見つめている。一方木戸のソロの時はと言えば、山崎と種田は上手は向くものの、身体をひねってまなざしを伏せるようにして、直接視線を木戸の側に送ることはない。
指先の軽やかな動きをシンクロさせたり、「笑顔」の歌詞にあわせてほっぺをとんとんとつついたりと、動きのひとつひとつに意味や意図を感じる。特に目立っていたのが三本指を立てたり、頭上に何かが乗っていることを表現したりの、ティアラをイメージさせる振付だ。山崎の情感を前面に出した、物語を感じさせる落ちサビも印象的だった。最後、3人が寄り添ってステージのセンターに立つ姿は、抜群に絵になった。
今回のツアーの前半ユニットパートでは、各ユニットがカバー曲を歌うのが恒例となっている。「アイドルマスター」歴代のゲーム・アニメからの選曲した、いわゆる765プロAS楽曲が中心で、本当に懐かしい初期楽曲が多く選ばれている。STAR ELEMENTSが歌った「まっすぐ」はXbox 360から始まった初期家庭用ゲーム機の「アイドルマスター」を象徴する楽曲のひとつだ。
歌い出しは木戸のロングソロからスタート。遠くを見るように客席を見つめる視線の置き方、目元の表情に繊細なニュアンスをこめる表現は木戸の十八番で、きょとん、とカメラを見つめるような表現に引きこまれる。同じカメラを見つめる眼差しにしても、木戸のまっすぐに見つめる感じと、山崎の慈しむように広く見渡す感じで全く表現が違うのが面白い。それぞれの歌唱はキャラクターの個性と感情を前面に出していて、種田の素朴とも言える歌い方は新鮮な感じがする。それぞれの「らしい」笑顔で未来を目指す3人が、「最高の未来!」のフレーズで別々の方向をズバッと指さし、進む道の多様性を示したのが鮮やかで、印象的だった。
オルゴールのようなメロディが流れる中、暗転したステージ階段を3人が昇っていく。そこで始まったのはオーディション会場を舞台にした朗読劇だった。登場するのは3人のアイドルで、未来たちが物語の世界のアイドルを演じるという二重性のあるステージだ。
登場するのは素直で前向きで疑うことを知らない天羽光駆(春日未来(CV:山崎はるか))、目的のためには手段を選ばず、表面をとりつくろうことに長けた神崎水桜(矢吹可奈(CV:木戸衣吹))、理想と高い意識を持つがゆえに、幼稚な妨害で足を引っ張ったり、それにも気づかない能天気なライバルに対する苛立ちを隠さない草薙星蘭(田中琴葉(CV:種田梨沙))の3人だ。朗読劇では3人のアイドルを目指す少女たちによる、生々しく激しい戦いが描かれた。役柄として別のアイドルを演じているから表現できる、むきだしのライバル意識や時にネガティブな感情のぶつけあいはとても新鮮に感じられた。前述のとおりSTAR ELEMENTSのCDは未発売だったが、それなら楽曲で描かれる物語の世界観をステージ上で朗読して表現してしまおうという、シンプルかつ大胆な試みだった。
朗読の後は「ギブミーメタファー」へ。ステージ上を色とりどりの光の元素が乱舞する中、3人とダンサーたちは鋭く強く硬質な表現を見せる。3人がステージを移動する足取りは決然としていて、歌声にもソリッドな感情が前面に出ている感じで。全体の調和より個。それぞれが別々のベクトルで全力の表現をぶつけ合うことで、結果として高いテンションのステージが生まれているようだった。
諏訪彩花と郁原ゆうのユニットCharlotte・Charlotteはピンクと水色の、ふりふりでかわいらしさを具現化したような衣装でステージに登場、「だってあなたはプリンセス」を披露した。ステージ上には素組みの細い柱で構成された2つの縦長の直方体が並ぶ。可憐な人形のようなふたりがその枠組みの中で踊り続けることで、逆算でこのす囲いはドールハウスであるという意味が付加された。2人の存在がより映えて見えるように、このドールハウスは一度作り直されたそうだ。
背景のスクリーンをピンクと水色に塗り分け、左右対称の夢のような世界を作り出したCharlotte・Charlotte。だが、よく見ると彼女たちの動きにはシンメトリーでないところが幾つかある。諏訪が先にドールハウスから歩み出して上手の高台に向かえば、続いて郁原が下手の高台に向かう。諏訪が手を差し伸べるのに郁原が応えたり、いつだって最初に動き出すのは諏訪の側だ。互いに見つめあってから、すーっと前を向く動きを、距離感を変えながら繰り返しているのが印象的だった。
ふたりがドールハウスの定位置に戻って、魔法の時間は続く。ドールハウスごとふたりを乗せた舞台がせり上がり、カバー曲「フタリの記憶」へ。初出は「M@STER ARTIST 08 水瀬伊織」に収録された楽曲であり、この曲は伊織が大事に持っているウサギのぬいぐるみ視点の物語であるという説がある。このウサギのぬいぐるみの名前が“シャルル”であることを知っていれば、Charlotte・Charlotteが歌うことににやりとしてしまうはずだ。
押さえたトーンで歌うふたりの歌声はまるで姉妹のよう。カバーではあるが、曲に込めていく物語はCharlotte・Charlotteのオリジナルであるようにも感じる。“いつまでも一緒でいられたらいいね”のフレーズを、別々のドールケースに隔てられて歌っている姿は、その先に別離を予感させた。両サイドから2人を映し出すカメラは被写界深度が浅く、どちら側から撮ってもパートナーの姿はおぼろげで、近くにいても頼りなく消えてしまいそうな2人の距離感、存在感をよくあらわしていた。
大きな拍手が降り注ぐ中、ふたりが素に返って挨拶。郁原が「きゅんきゅんかわいく最後までPrincessらしく」と意気込むと、諏訪も「みなさんの光や笑顔で、心の中にいるお姫様がうずうずします」と笑顔を見せた。郁原はツインテール、諏訪はまつりカラーのエクステを一房つけて、ビジュアルでもアイドルを再現していた。ふたりはまったく相談なしに、お互い青いカラーコンタクトを身に着けてきたそうだ。
カバーコーナーで異彩を放ったのが続く「魔法をかけて!」だ。低音の圧が強く、音の刻みがくっきりしたアレンジ。歌声もスタッカートをきかせていて、この曲の振付で印象的なモンキーダンスも元気いっぱいというよりはリズミカルな感じだ。後半は浮遊感があるのびやかな表現が目立ち、“恋を夢見るお姫様”たちのキラキラとした笑顔が記憶に残った。
Charlotte・Charlotteのラストは「ミラージュ・ミラー」。古いモノクロ映画を思わせる映像演出と共に、ダンサーたちがステージに登場。この曲ではキュートよりもクールに寄せた2人とダンサーたちが作り上げる世界は、物語を締めくくるエンドロールのような雰囲気だ。先日リリースイベントでもこの曲は見たが、衣装とダンサーと演出、そしてより完成度を増したふたりのパフォーマンスが揃うことで、ここまでの物語空間が生まれるのかと驚かされた。台詞のシンクロも完璧で、片方がソロを歌う間、もう一人とダンサーたちは動力が切れた操り人形のようにぴたりと静止してみせたりと、歌とパフォーマンスの両面で物語の世界を練り上げていた。
諏訪と郁原はこのステージを作り上げるためにお泊りで一緒に特訓したそうなのだが、郁原は「(諏訪は)ポジティブなことしか言わない」、諏訪は「(郁原は)頑張り屋でお世話してくれて、辛い物が苦手なところがかわいい」と互いを絶賛しあっていた。
トゥインクルリズムは原嶋あかり、伊藤美来、村川梨衣による魔法少女ユニットだ。3色の魔法少女衣装に身を包んだ3人は「ZETTAI × BREAK!! トゥインクルリズム」で登場。ステージが燃え上がるような演出の中できびきびした動きで魅せた。右手をくるくると回す振りのシンクロ具合が小気味よい。とにかくこの3人はビジュアルのキャラクター再現性が高く、そのまま2.5次元舞台として上演しても説得力抜群であるように思える。指先をすーっと捧げる時の伊藤の美しく凛とした表情は、内面まで役柄に入りこんでいるように感じた。
「Fate of the World」は劇場版「THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」で魔法少女バトルを描いた劇中劇挿入歌であり、トゥインクルリズムがカバーするならこれしかない! という楽曲だ。スクリーンに敵役であるギョーカイジン・ギャランティーが登場すると、ステージの3人は双剣、サイズ(鎌)、鞭をモチーフにした魔法武器を“召喚”。スタンスを広く取った原嶋の堂々たる構えや、村川が武器を振り下ろす時にくるりと回転を加える歌劇のような動きの鮮やかさが印象的だ。とどめの攻撃は3人の攻撃をひとつにしたトゥインクルトライアングルアタック。身体は小さいけれど頑張り屋でエネルギーのかたまり! という二次元的なキャラクター性を生身で演じきる原嶋の身体特性と表現力は誰にも真似できない武器だと感じた。
トゥインクルリズムがラストに披露したのは「Tomorrow Program」。魔法少女番組の終わりを、エンディングテーマで締めくくって大団円を迎える趣向だ。「Tomorrow Program」はギョーカイワードを散りばめたお馬鹿な歌詞を、エモーショナルかつ真剣に歌いぬくのが魅力な曲。こういった芝居がかった表現は、村川の独壇場と言ってもいい。村川が「どいひーな扱いでも負けないよー」に込めた包容力あふれるニュアンスや、伊藤が「ドルアイになるためにさー」に込めた超正統派美少女の風情も、すべてネタ(笑い)に対するフリとして機能している感じだ。だがワイプ芸やテロップ芸を交えた爆笑のステージの最後、原嶋が歌う「キミだよ」のフレーズに“プロデューサー”のテロップを重ねることで、しんみりと感動的に締めくくってみせたのが見事だった。
大会場ならではのスケール感で勝負したのが駒形友梨、上田麗奈、浜崎奈々、渡部優衣、大関英里のユニット閃光☆HANABI団の「BORN ON DREAM! 〜HANABI☆NIGHT〜」だ。海のセーラー服をモチーフにした5人と一緒に、ステージには和太鼓隊が登場。彼女たちは和太鼓チーム“梵天”に所属するパフォーマーだ。打ち鳴らされる和太鼓のリズムに乗せて、閃光☆HANABI団は軽やかでのびやかなパフォーマンスを披露。圧倒的な動きのキレとエネルギーで、盆踊りのようなコミカルな振付さえもビシッとかっこよく見せていく。落ちサビ、駒形がソロで歌う「いつまでたっても忘れない、忘れられない」のフレーズの、跳ね回るような、心浮き立つようなテンション感が印象に残った。
「MOONY(打上げ☆HANABI ver.)」は、しっとりとした線香花火のイメージ。「BORN ON DREAM! 〜HANABI☆NIGHT〜」の明るく楽しい祭りのイメージが鮮烈だったからこそ、この曲のゆったりとした情感豊かさが際立って感じられる。そして落ち着いたリズムだからこそ、5人それぞれの表現がよく見えたのもこの曲だ。柔らかい動きの中にも躍動を感じさせる渡部。地元出身・浜崎は歌声の情報量が多く、こぶしっぽい歌声のふくらませかたがいい。駒形の歌声は唯一無二のオリジナルで、ソロの「初めましてNICE TO MEET YOU」のフレーズが優しく光っているようだ。大関はしなやかな動きと表情に天性の華やかさがある。上田は優しく柔らかい歌声の中にも、楽しさや喜びの感情を躍らせているのが印象的だった。歌い終えた渡部が「盆踊り会場からすこーし離れて花火を見ながらまったりおしゃべりするような」とイメージを語ったことで、情景やセットリストの中でのこの曲の役割がクリアになった。
曲間MCでは閃光☆HANABI団の衣装を披露したのだが、和太鼓と拍子木の音と共にざん! と一斉に振り返る動きがかっこいい。衣装については駒形がパンツタイプの衣装は初めてだと語ったり、浜崎がベレー帽タイプの新鮮さや、少し髪をアップにしてのり子の髪型に寄せていることを語っていた。
渡部が会場の外の神戸まつりに対抗心を燃やし、浜崎らが会場をがっつりと煽ると締めのナンバー「咲くは浮世の君花火」へ。8人のダンサーと4人の和太鼓隊も入り乱れてのまさにお祭り舞台となった。この曲では和太鼓チームの梵天も主役と言ってもいいほどで、見せどころではふたりでひとつの太鼓を叩いたり、楽曲に最高のライブ感を加えていた。この曲で気合が乗っていたのが大関で、「わっほーい」や「見事に咲くのは!」といったフレーズのちょっと上擦るぐらいのテンション感が最高だ。彼女のきびきびっとした気持ちのいい動きを見ていて、白い手袋が応援団みたいだな……あれ、閃光☆HANABI団って前回までのイベントやライブで白手袋つけていたっけ? と、衣装の変化に気がついたぐらいだ。とにかくこの曲の5人は感情や楽しさ、テンションの高まりをちょっとはみ出すぐらいの歌声で表現していたのだが、センターの駒形は気持ちが乗れば乗るほど歌声が流麗にのびやかになっていく感じがあって面白い。ラストにはSTAR ELEMENTS、Charlotte・Charlotte、トゥインクルリズムもダンスに参加。Charlotte・Charlotteが祭りのリズムでノリノリに踊っているのがなんだか楽しかった。
歌い終えた5人は、興奮した様子で太鼓の近さやビリビリ来る振動について語っていた。上田の「(太鼓を)叩いてる風圧まで感じるし、低音がマグマみたい」という言葉からはステージを吹く熱い風が伝わってくるようで、海美らしい言い回しだなと感じた。
●小さくも大きなキーマン
ソロ、ユニット曲を中心になんでもありの後半ブロックは、「PRETTY DREAMER」からスタート。浜崎と渡部の間で歌い踊る原嶋を見ていると、すらりとした長身メンバーが多い閃光☆HANABI団組の大関、浜崎、渡部と、小柄で元気いっぱいな原嶋を組み合わせてきたことに意図を感じる。一人だけ衣装が違うため、よりギャップが強調される形だ。HANABI団が持つ過剰なまでのエネルギーを前向きで勢いのあるかわいさに変換した感じで、そこにキュートと元気の爆弾のような原嶋を加えた破壊力は強烈だ。落ちサビの頭は原嶋のソロに、会場いっぱいのオレンジが捧げられた。4人ユニットを1対3で色分けすることによるメリハリを感じた一曲だ。
ここで上田は最強能天気マッスル楽曲「スポーツ!スポーツ!スポーツ!」を投入。スポーツジムが似合いそうないでたちのダンサーたちが登場し、ステージで展開されるのはフィットネス動画の世界だ。スポーツの、筋肉の賛歌を歌う上田はまさにエネルギーの塊で、笑顔と動きの引力が太陽のように会場をひきよせていく。理不尽なまでに楽しく激しくハッピーなステージだ。そんな明るさの中でふと見えるキリっとした笑顔や、やりきったはにかみの微笑みなどに惹きつけられた。
ここでふたたび原嶋が登場してソロで「アニマル☆ステイション!」を披露。前曲とはまた色の違う無尽蔵のエネルギーを叩きつけてきた。トゥインクルリズム衣装の腕周りや足元の深紅のカラーリングや、ゴムまりのように弾む縦の動きの中で跳ね回る飾り布が躍動感を倍加させて感じさせる。ダンサーたちは象やペンギンのかぶりもので登場。仙台公演の「ジャングル☆パーティー」ではダンサーたちもアニマル柄の衣装でステージ全体をジャングルムードにしたのに対し、今回のダンサーたちは白のノーマルドレスに頭だけかぶりものを合わせて、あくまでも原嶋という個にフォーカスさせてきた。原嶋が顔の前にぱっと手を出した時の笑顔が最高にキュート! ハイになりすぎたという原嶋は「いろんな土地で動物園を開いていきたいと思います!」と宣言していた。
渡部はここまで閃光☆HANABI団の身体表現の切り込み隊長として元気で! 激しく! 全力で! に徹してきた分、「Super Lover」での妖艶な表情にドキッとさせられた。彼女ならではのファニーボイスが、表現を変えることで小悪魔的なニュアンスを帯びる。親戚のきれいなお姉さんの意外な一面を見てしまった感じだ。内に秘めた熱量と躍動はそのままに、表現の仕方を変えた円と曲線の動き。間奏の挑発的な仕草など、攻めたアクションで畳みかけてくる。渡部は、イントロが流れた瞬間のプロデューサーたちの反応を唸りと表現。それを聞いて頑張らないと、と感じたそうだ。
「メメント?モメント♪ルルルルル☆」では星座ユニット・タウラスオリジナルメンバーの山崎と諏訪に、村川が加わった。3人は各ユニットの魔法少女、ドール、アイドルの衣装をまとっていて、組み合わせのバラバラ感、混成感が一番強かったかもしれない。その中で個人的にアクセントになっているように感じたのが村川だった。山崎のまっすぐ正統派なパフォーマンスや諏訪のダイナミックな表現に比べると、村川はコンパクトというか、表情や動きのかわいさ、細かいニュアンスを大事にしている感じだ。それでいて彼女のキャラクターと表現は楽曲のシュールさやハイテンションにぴたっとハマっていて、全体のイメージがぴったりのようなちぐはぐなような、絶妙なバランスが癖になる感じだった。
上田麗奈と種田梨沙、オリジナルメンバーによる「Understand? Understand!」。それは誰もが待ちに待ったステージであり、この曲が初披露された「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!」福岡公演以来3年ぶりの再会でもあった。この曲をラストブロックのトップという位置に持ってきたことにも、この曲に対する期待の大きさが感じられる。歌っているふたりも喜びにあふれている感じで、特に上田のキラキラした笑顔と瞳が印象的だった。
そして同時に、種田は、琴葉はこんなに躍動するアイドルだったか? と感じたステージでもあった。最初におっと思ったのは種田の「いろいろだけど」のこぶしを回すような力の入った歌い方で、歌に、ダンスに、端正なだけではないちょっとはみ出した表現にトライしている様子が感じられた。縦のノリと腰の横の動きでリズミカルさを出したり、膝を中心に全身でリズムを取りながら奔放に前足を蹴りだしたりと、種田の動きに目を惹かれる場面が多かったのである。高坂海美という存在をまとった上田麗奈というある種の天性の表現者に対して、動きと表現で食らいつき、デュオとしてフィットさせる決意と準備を感じた気がした。後半、ふたりの距離が近づいてからのパフォーマンスはシンクロ感が抜群で、この日を待った甲斐があるパフォーマンスだった。
「微笑み日和」を歌う郁原の姿と表現は、それはもう、人形のようにかわいらしく。和にとことん憧れる洋の少女に直球にキュートな洋風の装いをさせたのは、ユニットというステップを挟んだ効能だろう。ソロの前にヘアメイクのセッティングをすこし変えただろうか? ツインテールの下から覗く耳元に、ピンクのイヤリングがふるふるふるえているのが見えた。洋風の極みのような衣装での「仕掛け人さま、私の和の心、感じてくれてますか?」の言葉が微笑ましくもあり、本質は何も変わることがないのだとも感じさせられた。締めの彼女のキラキラした笑顔が印象的だった。
伊藤は「地球儀にない国」を披露。魔法少女という、百合子が憧れる物語の世界の主人公のような装いがこの曲にはぴったりだ。ユニットとして3人で出る時にはカラーリングや衣装造形の派手さが目立ったが、ソロだと魔法少女的な飾りデザインのハートの髪飾りのかわいさなどに目が行く。伊藤自身は「この衣装で風の戦士感が強くなった」と表現していた。すっとした立ち姿の美しさや、動きのあるダンスの中にぴたりと決まった静止が入るコントラスト。微妙にすっと変える顔の角度の絶妙さだったり、ラストに浮かべたにこっとした微笑みだったり、細部まで意識の通った美しいパフォーマンスだった。
ソロのトリは、山崎はるかの「未来飛行」。ステージでは未来で在ることを常に突き詰めてきた彼女だが、今回のステージの未来からは微笑みと眼差しの柔らかな優しさを感じた。この曲ではこれまでパフォーマンスの精度を高めることと会場と一緒に歌って楽しむことのバランスを取ってきた印象だったが、今回は“一緒に”成分は間奏に集めて、「それじゃあみんなで、やってみようかー!」と会場にウェーブを巻き起こした。未来であることを大切に、ボーカルとダンスに全力で力を注ぎ、会場のプロデューサーさんたちと一緒にステージを作り上げるライブ感を忘れない。山崎はるかが目指す春日未来像のひとつの理想が見えた気がした。山崎は「STAR ELEMENTSでいろいろ学んだ春日未来として、みんなと一緒に楽しく盛り上がれたら」とステージのコンセプトを語っていたが、内なる未来の成長が彼女自身の表現の成長につながっているのが、演者とアイドルの素晴らしい関係性だと感じた。
伊藤、駒形、郁原、木戸の「Starry Melody」は、かわいさや華麗さの中にどこか品がある、これぞプリンセスという顔ぶれと表現だ。すっすっすと星を描く動きがぴたりと揃う鮮やかさが全体の統一感をかもし出す。ラララの大合唱と共にステージと客席が手を振りあう姿は、とても尊い情景だった。
本編ラストはプリンセススターズならではのきらめきのある「DIAMOND DAYS」。諏訪が手を差し伸べた時の首をことっと傾ける角度が、姫のかわいさを追求するかわいい職人らしさを感じた。
アンコールは白地に3属性カラーのリボンのたすきが印象的なヌーベル・トリコロールに着替えて、全員で「UNION!!」を披露。13人ライブでは両サイドに長身のアイドルを置くことが全体の見栄えをよくするセオリーだが、渡部とシンメの位置に駒形がいるのがちょっと新鮮に感じた。駒形は4thライブ「BlueMoon Theater」で(青系の)ボーカルモンスターの群れの中にいたイメージがまだ強かったので、今更ながらプリンセススターズの彼女を実感した次第だ。
今回のライブは6thツアーの折り返し。締めの挨拶の山崎の言葉からは、仙台のAngelから受け取ったバトンを福岡のFairyに渡す、つなぐ意識を強く感じたのだった。ラストナンバーは「Brand New Theater!」プリンセススターズver.。冒頭の「とびらあけて!」の時点で原嶋の誰よりも大きい動きが目に飛び込んできて、今回初の2日間両日参戦となった彼女はやっぱりこの公演のキーマンの一人だなと感じた。上気した表情で高みを見つめる山崎の、ぐっと入りこんだ風情が印象に残った。
ミリオンライブのライブ初開催の神戸の地で、熱く燃え上がったPrincess公演。西へと向かうツアーは地方公演最後の地、福岡Fairy STATIONへと続く。
【取材・文:中里キリ】
●「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 6thLIVE TOUR UNI-ON@IR!!!!」神戸公演「Princess STATION」DAY2
2019.05.19 神戸・ワールド記念ホール セットリスト
M01:Princess Be Ambitious!!/プリンセススターズ
-STAR ELEMENTS-
M02:Episode. Tiara(山崎はるか、木戸衣吹、種田梨沙)
M03:まっすぐ(山崎はるか、木戸衣吹、種田梨沙)
M04:ギブミーメタファー(山崎はるか、木戸衣吹、種田梨沙)
-Charlotte・Charlotte-
M05:だってあなたはプリンセス(諏訪彩花、郁原ゆう)
M06:フタリの記憶(諏訪彩花、郁原ゆう)
M07:魔法をかけて![Princess Magic ver.](諏訪彩花、郁原ゆう)
M08:ミラージュ・ミラー(諏訪彩花、郁原ゆう)
-トゥインクルリズム-
M09:ZETTAI × BREAK!! トゥインクルリズム(原嶋あかり、伊藤美来、村川梨衣)
M10:Fate of the World(原嶋あかり、伊藤美来、村川梨衣)
M11:Tomorrow Program(原嶋あかり、伊藤美来、村川梨衣)
-閃光☆HANABI団-
M12:BORN ON DREAM! 〜HANABI☆NIGHT〜(駒形友梨、上田麗奈、浜崎奈々、渡部優衣、大関英里)
M13:MOONY[打上げ☆HANABI ver.](駒形友梨、上田麗奈、浜崎奈々、渡部優衣、大関英里)
M14:咲くは浮世の君花火(駒形友梨、上田麗奈、浜崎奈々、渡部優衣、大関英里)
M15:PRETTY DREAMER(原嶋あかり、大関英里、浜崎奈々、渡部優衣)
M16:スポーツ!スポーツ!スポーツ!(上田麗奈)
M17:アニマル☆ステイション!(原嶋あかり)
M18:Super Lover(渡部優衣)
M19:メメント?モメント♪ルルルルル☆(村川梨衣、諏訪彩花、山崎はるか)
M20:Understand? Understand!(上田麗奈、種田梨沙)
M21:微笑み日和(郁原ゆう)
M22:地球儀にない国(伊藤美来)
M23:未来飛行(山崎はるか)
M24:Starry Melody(伊藤美来、駒形友梨、郁原ゆう、木戸衣吹)
M25:DIAMOND DAYS(プリンセススターズ)
-encore-
EN1:UNION!!(プリンセススターズ)
EN2:Brand New Theater!(プリンセススターズ)
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