東京版田んぼアートという集客装置

また東京の話で恐縮ですが、みんながこれどう思っているのか本当に聞いてみたい、コストは7億円ですよ

2024年3月17日

半年前、このニュースについて。

無駄か、無駄ではないか。それは誰が決めるのか。基準はどこにあるのか。当然正解はなく、難しい。

7億円の投資で18億円の経済効果と考えれば、それは無駄とも言い切れない。一方で、その7億円があれば、どれだけ多くの施策が打てるかという視点もある。個人的には後者の視点に立っている。

「プロジェクションマッピングは日本の技術が非常に高く、世界的なイベントでは日本の技術を使って展開している。キラーコンテンツでキラー技術でもある。ここ(都庁)をキャンバスとして発信していく。令和5年度の予算額が7億円だったが、経済波及効果は約2・5倍の18億円と申し上げている」

日本の技術力を首都として発信する姿勢は大切だ。ナイトタイムエコノミーの促進という意味もある。一方で、これだけオーバーツーリズムも騒がれるような現状において、十分な観光客を集めている東京がやるべきことなのかは疑問もある。過疎地域が集客装置とするならともかく。

集客が「暴力」になりうる時代

それは、多くの地域で議論を呼ぶ「田んぼアート」と似た話なのかもしれない。東京でない地方では、プロジェクションマッピングに適したような高層ビルはほとんどなく、田畑はたくさんある。観光名所を新設するという点で、表向きは共通している。田んぼアートでは根本的な解決にならないとして、事業を廃止する自治体も出てきている。

東京と地方の現状は当然違う。東京にもっとインバウンドを、という立場もあれば、これ以上のオーバーツーリズムは困る、という視点もある。贅沢な問題でありながら、切実な問題でもある(現に渋谷では、迷惑路上飲酒防止条例なるものが制定された)。

円安の影響で日本は安上がりに旅行できる高品質・高"安全"な国になっている。コロナ禍後、世界平均では前年比1.3倍だった旅行客数が、日本では6.5倍になったという。確かに急激に増えた印象があり、その印象は統計的にも事実だったということになる。

世界「最速」で復活するインバウンド、でも国民が豊かさを実感できないワケ 連載:「コロナ後のインバウンドの行方」|ビジネス+IT https://www.sbbit.jp/article/cont1/141754

アップデートは必要だが、これ以上東京で集客装置を増やし続けることは地元住民にとって「暴力装置」にもなりかねない。「富士山の見えるコンビニ」が幕を張りだしたように。地元住民に配慮し、花火大会の中止が相次いでいるように。「ハロウィンは渋谷に来ないで」と繰り返されたように。

この状況下において、集客の前にまず立ち止まり、地域のことを考えてほしいし、考えるようにしていきたい。

いいなと思ったら応援しよう!