哀捨て iN THE DARK 002/映像脚本+詞(コトバ)
S「そ、そうじゃないよ。でも、君はオオカミなんだよ。彼女が、君をなか
なか信じられないのは、どうしようもないのかなぁって思ったんだよ」
J「そうか。そりゃあ、そうだよねぇ…。(顔を見合わせ、黙り込む)」
M「ごめんなさいね。私、ずっと恐い思いばかりして来たから、すぐには信
じられないの。でも、あなたたちを信じたい! 友だちになりたい! 独
りぼっちは、もういや!」
J「わかったよ。ありがとう、信じてくれて。その信頼は、ゼッタイに裏切
nらないよ! (女の子に右手を差し出す)」
S「今から、僕たちは友だちだよ! (右手を差し出す)
M「ヨロシクね! (二人の手を握る)」
S「じゃあ、一緒に行こう!」
M「どこへ?」
J「この森の奥へ」
M「あなたが、狂暴なオオカミじゃないってことを、みんなに報せる旅ね」
J「そうだよ。さぁ、行こう!」
三人「おー!!!」
(陽)「三人が森の奥へと歩き出すと、やさしい風が吹いて来て、森の緑を
一層あざやかに彩って行きました。
S「そういえば、君の名前は?」
M「Misfortune(ミスフォーチュン)」
J&S「(顔を見合わせ)え、Misfortune!?」
J「それって、ホントに君の名前なの?」
M「ええ。ずっと前からそう呼ばれてるわ」
S「お父さんが、そう付けたのかい?」
M「それは、わからない。気がついたら、みんながそう呼んでいたの」
J「やっぱり!」
S「そうだね…」
ジョイベルズとショウワァ、顔を見合わせ、頷き合う。
M「なにが、やっぱりそうなの?」
J「Misfortuneっていうのは、不幸っていう意味なんだよ」
S「まわりのみんなは、不幸ばかり続いてかわいそうなコだねっていう意味
で、君のことをそう呼んでたんだよ」
M「えー、そんな!? みんなひどいわ」
J「その言葉の意味を、知らなかったのかい?」
M「ええ。誰も教えてくれなかったし、名前だとばっかり思っていたか
ら…」
S「かわいそうに。ご両親は、君に名前を付ける前に襲われちゃったんだね
ぇ…。(ため息をつく)」
J「(大声で)そうだ、こうしようよ!」
S「あ~びっくりした! 何か思いついたのかい?」
J「うん。僕の名前のJoybellsのsを、Misfortuneにあげるよ」
S「それで、どうするのさ」
J「Misfortuneのsとfの間に僕のsを入れて、Miss Fortune(ミス・フォーチ
ュン)にすればいいんだよ!」
S「なるほど! そうすれば、不幸じゃなくなるね」
J「うん。今日から君は、Misfortuneじゃなくて、Miss Fortuneだよ!」
M「それは、どういう意味? また変な意味なんじゃないの?」
J「違うよ! いろんな意味があるけど、幸運なお嬢さんとか、幸せなお嬢
さんっていう意味だよ」
M「そうなの! じゃあ、もう不幸じゃないのね?」
J「そうだよ。名前を変えて、心機一転ガンバローよ!」
S「そうだね。幸せを招き寄せようよ!」
M「オオカミさん、ありがとう! でも、あなたはJoybellになっちゃうけ
ど、いいの?」
J「まったく問題はないよ。ヨロシク、ミス・フォーチュン」
M「こちらこそヨロシクね、ジョイベル」
S「(ちょっと怒って)ねぇねぇ、僕もいるんだけど」
M「もちろん、ショウワァもヨロシクね!」
S「うん。ヨロシク、ミス・フォーチュン」
音楽7『I am Miss Fortune』イン。
○木陰のステージ
ミス・フォーチュン、マイクの前で歌う。
ジョイベルとショウワァ、ダンス&コーラス。
♪
不幸ばかり続いていた私
ミスフォーチュン
この名前が悪かったのかしら?
ミスフォーチュン
でも、この出逢いが 私を変えてくれたの
ミス・フォーチュン
その名前を与えてくれた
その出逢いによって 私は変われたの
I am Miss Fortune
幸運という名前に導かれ
ミス・フォーチュン
幸せがやって来るのかしら?
ミス・フォーチュン
でも、幸運を 待っていてはいけないの
ミス・フォーチュン
それを招き入れるために
向かって行かなくちゃ!
そう! だって私は
ミス・フォーチュン
また不幸なめに遭ったとしても
ミス・フォーチュン
この名前が力をくれるから
ミス・フォーチュン
どんなことだって 私は耐えてみせるわ
ミス・フォーチュン
その名前を与えてくれた
この出逢いをきっと
ムダになんかしない
I am Miss Fortune
そう! 幸せになるために
向かって行かなくちゃ! だってだって私は
ミス・フォーチュン
SE:風の音。
音楽4『哀捨て iN THE DARK④』にチェンジ。
全員、風に吹き上げられる。
♪哀捨て iN THE DARK
風に飛ばされ 闇の中
哀捨て FANTASy
闇からの脱出
Woh… Woh… Woh…
緑のきれいな森ごと吹き飛ばされ、闇に覆われる。
○暗闇の中
當、陽、育、渚が浮かび上がる。
當「じゃあ、今度はオレがやってみますよ!」
陽「先に私にやらせて」
當「いや、オレがやる!」
陽「そう、わかった。じゃあ、ガンバってね」
當「え、クレナイヒカリは、そんなやさしい言葉も言えるんだ!?」
陽「早く、この闇から脱け出したいだけよ!」
當「ムカツク!」
陽「ウゼーよ!」
當「だから、マネするなよ! まぁ、いいや。オレが、この闇を融かしてや
るよ!」
渚「お願いね!」
育「ガンバって下さい!」
○砂浜のきれいな海岸
當と清(24)が波打ち際を歩いて来る。
當「(声)オレは、愛のない男なのかもしれない。恋をするたびに、愛が芽
生え、育み始めると、ちょっとしたことにキレて、別れてしまうんだ」
○少し離れた砂浜
陽、育、渚が並んで座っている。
陽「アタルって、そんなにモテるのかなぁ!?」
育「うらやましいなぁ…」
渚「シー!」
○波打ち際
當と清が立ち止まり、向かい合う。
當「(声)今日も、大好きだった恋人に別れを告げてしまって、すぐに後悔
したんだけど、もう戻れなくて、気がついたら闇に覆われていたんだ。そ
の一瞬を我慢しさえすればいいのに、それは充分すぎるほどわかっている
のに、同じことばかり繰り返してしまうんだ…」
音楽8『すてきな恋の終わり方』イン。
♪
真夜中 砂浜に座り 抱き合っていた
何もせず二人 抱き合っていた
朝が来た…
それが合図だった
君は背中を向けて 去って行った
それを見送る僕を 振り返らず
手を振って消えた
こんな恋の終わりも いいもんだね
寂しさよりも 清々しさを感じていた
サヨナラ君 最後まですてきだったよ
○サイレント映像
海岸の夜→朝→昼。
波打ち際で、當と清が戯れている。
○少し離れた砂浜
育、陽、渚が座っている。
育、大きく首を左右に振る。
陽「ハグ、どうしたの?」
育「なんとなく、ウソっぽくないですか?」
渚「私も、ちょっと違う気がしてたのよ」
陽「そういえば、そうですよねぇ」
歌が始まる。
♪
別れは君が言い出した 昨夜遅く
キッパリ あっさり サヨナラ告げた
その訳は…
旅に出ると言った
僕との廻(めぐ)り逢いも 旅の途中
青い海のある町 足を止めて
すぐ恋に落ちた
こんなすてきな君と
逢えたことを 忘れはしない
ホントはついて行きたいけど
サヨナラ君 潔く お別れするよ
○波打ち際
清、背中を向け、去って行く。
當、それを目で追い、反対側に歩き始める。
♪
それから僕も立ち上がり 歩き始めた
ゆっくりと今日へ 歩き始めた
これからの…
時を生きるために
君との昨日までは もう想い出
僕も振り返らない
君のことは この胸にしまう
こんなすてきな恋が
出来たことを 感謝してるよ
カッコよすぎる気もするけど
ありがとう君 いつまでも元気でいてよ
こんな恋の終わりも いいもんだね
寂しさよりも 清々しさを感じていた
サヨナラ君 最後まですてきだったよ
ありがとう Bye Bye
(當)「(声を変え)うそつき!」
○カメラが
當にズームして行く。
當「誰だ、今言ったのは? クレナイヒカリか?」
(陽)「私じゃないよ!」
(渚)「私でもないわよ!」
(育)「僕でもないですよ!」
當「じゃあ、誰が…」
○カメラが引いて行く
陽、育、渚が歩いて来る。
陽「あ、カタルシスじゃない?」
渚「そうね!」
育「でも、カタルシスは、僕たち自身の声ですよね? ということは…」
渚「私たち誰かの声ってこと?」
陽「じゃあ、アタル自身の声なんじゃないの?」
當「えッ!?」
陽「真実を語ってないんでしょ?」
當「そ、そんなことないよ…。(皆に背を向ける)」
(陽)「ムラサキアタルは、シャイで不器用なために、その想いを上手く相
手に伝えられず、出逢いと別れを繰り返していた」
(育)「今日もまた、恋人と別れて来たばかりだ。何故、本気で人を愛せな
いのだろう? アタルは、自分に聞いてみた」
(渚)「人を愛することが怖いのか? 自分に自信が持てないのか? その
どちらもが、当てはまっている気がした。そんな自分が情けなかった。消
してしまいたいと思った」
○暗闇の中
當、陽、育、渚が浮かび上がる。
育「あ、今までのよりも全然淡いですけど、とりあえず、紫色の光が現れま
したよ」
上空の青と桜色の光の隣に、紫色の光が淡く灯る。
當「ハグ、それを言うなら、黎明の光だよ!」
陽「カッコつけすぎよ!」
當「とにかく、ウソは言ってないってことだよ」
渚「そうかなぁ!? まだカッコつけていて、自分をさらけ出していないんじ
ゃないの?」
當「ナギサさんまで!?」
渚「だって、そうでしょ?」
當「オレ、苦手なんですよね。自分を語るのって」
渚「私だってそうよ」
育「僕も苦手です」
陽「私だって…」
當「うそつけ! クレナイヒカリは、そんなことないだろう!?」
陽「私のこと、何にも知らないくせに! 勝手なこと言わないでよ!」
當「ゴメン。そんなつもりじゃなかったんだけど…」
陽「ムカツク!」