「馬券裁判」4つのポイント
今回は、個人的に過去の馬券裁判事例の中で最も印象に残っている、「馬券裁判男 卍氏(仮名)」の事例について、4つのポイントに絞ってコンパクトにまとめてみました。
10年以上前のことなので、そもそもご存じない方や、記憶がかなり薄れているかたも多いと思いますので、よければ見ていってください。
【ポイント1】
1億4000万円の利益に対して10億円近い課税
2012年11月19日 馬券で稼いだ所得を脱税したとして、大阪の元会社員卍氏が所得税法違反に問われました。
卍氏は2007年から2009年にかけて約28億7000万円の馬券を購入し、約30億1000万円の払戻金を得ました。
3年での黒字額は約1億4000万円。
しかし大阪国税局は、払戻金から当たり馬券の購入額のみを差し引いた、約28億8000万円が利益にあたるとし、
約5億7000万円を脱税したとして大阪地裁に告発しました。
なぜ、このような金額になるかというと
課税対象となる「利益金額」は、「総収入」から「経費」を差し引いた金額で計算されるのですが、
所得税法上、はずれ馬券は「経費」として認められないため、上記のように実際に手元に残るお金(1.4億)よりも、課税対象となる利益金額(28.8億)が多く計算されてしまうためです。
卍さんの例ですと、1億4000万円しか手元にお金が残っていないのに、28億8000万円の利益を出したものとみなして課税されます。
最終的には、国税の本税および加算税に加えて、地方税の本税と加算税を加えると、およそ10億円に近い税額が課されることを伝えられました。
【ポイント2】
はずれ馬券は経費にならない?
なぜ、はずれ馬券は経費として認められないかというと、馬券で得た利益は「一時所得」に分類されると、所得税法34条に明記されており
「一時所得」の場合、経費として計上できるのは「その収入を得るために直接要した費用」、つまり的中した組み合わせへの購入額のみとなるためです。
「一時所得」とは、「たまたま当たって儲かったお金」のことです。
どれだけ時間をかけて緻密な計算や考察を行い、馬券を的中させたとしても、「たまたま当たって儲かったお金」扱いとなります。
【ポイント3】
馬券で得た利益は「雑所得」か「一時所得」か?
しかし卍氏の場合、大量かつ継続的に馬券を購入し続けており、「たまたま当たって儲かったお金」、つまり「一時所得」には当てはまらず、投資で得た利益と同様に「雑所得」にあたるべきだと、卍氏側は主張しました。
雑所得であれば的中馬券の購入額だけでなく、はずれ馬券の購入費も「経費」として認められます。
一審では、そもそも無申告だったことで有罪となりましたが、申告すべき所得額については、卍氏側の主張が全面的に受け入れられました。
【ポイント4】
卍氏の場合「はずれ馬券は経費」と認定された
結局、最高裁まで争われましたが、2015年3月10日の最高裁判決でも「はずれ馬券は経費」と認定されました。
ただしこの判決は「馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用し、長期間にわたり 網羅的な購入をして多額の利益を恒常的にあげ はずれも含む一連の馬券の購入が経済活動と言える場合」に限られるため、一般的な購入方法には当てはまらないことに注意が必要です。
実際に、国税庁のホームページで所得税法34条を見てみると 馬券による所得が雑所得になる条件が注意書きとして長々と記載されています。
箇条書きで整理すると下のようになります。
以上がこの事例のおおまかな流れです。
最期に
国税庁のホームページを見ると、馬券で得た利益が雑所得と分類され、はずれ馬券が経費として認められることは非常に難しいことが分かります。
ただしほとんどの場合、課税対象となるのは「ほかの一時所得とされる所得との合計額が年間50万円を超えた」場合ですので、私の場合は年間の所得が50万円を超えないようにしています。(※50万円以下でも申告が必要なケースもありますので、詳細は各々で確認する必要があります。)
また、これは個人的な見解ですが、2018年頃にJRAの投票サイトがリニューアルされてから「ソフトウェアで馬券を自動的に購入する」こと自体、かなりハードルが高くなっていると思います。
JRA-VANが提供している「KSC自動投票Plus」などの無料ツールは存在しますが、過去に存在していたツールほどの利便性はありませんし
自動投票ツールを自作しても、JRAの投票サイトのレイアウトが変わるたびに不具合が発生し、メンテナンスのコストがかかります。
こういった裁判事例によって、JRA側も対策をしているのではないかなと感じます。
以上となります。
同じようなネタには、今後も注目していきたいと思います。
最後まで読んでくださった方ありがとうございます。
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参考書籍