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コバルト硝子
窓辺に置いたインシュレーター(硝子碍子)を通過した光が、ノートの上に青い湖のような影を作っています。
このインシュレーターは最もポピュラーなヘミングレイ(HEMINGRAY)社のもの。1848年にロバート・ヘミングレイとラルフ・グレイによって設立されました
インシュレーターにはコレクターが多く、Consolidated Design(CD)番号とスタイル番号の2つの番号で細かく分類されています。さらに、ペチコート、ヘルメット、底の形状(突起があるかないか、その形)などにも区別できるような名称があります。
CD番号は、その形状から分類するシステムでコレクターによって開発されました。スタイル番号はHemingrayによって割り当てられたものです。この話は豆本にしたこともありますが、また後日のノートに書いてみたいと思います。
この形はCD162、スタイル19だと思われます。1880年代に導入され、1940年代に廃止となりました。主に電信と二次配電の電柱に使われました。
インシュレーターの色も、きちんと決まっていて、これはコバルトブルー。青色にはこのほかにピーコック(ブルー)、サファイア(ブルー)などがあり、淡いアクアなどに比べると高額です。
コバルトは原子番号27、元素記号Coの元素。六方晶系の強磁性の金属です。結晶は白銀色なのに、なぜコバルトブルー??と思うのですが、この青は珪酸コバルトなどのコバルト化合物を混ぜてできた硝子の色。また、アルミン酸コバルトは青色顔料(コバルト青)の原料でもあり、コバルトブルーという言葉の元だと思われます。
コバルト硝子は理化の実験でも使われます。毎週土曜日にやっている理科室カフェでも炎色反応実験の時に用いました。
コバルト硝子は光の波長の中で、500~700nm の範囲を吸収する性質があります。炎色反応の観察時はナトリウムが邪魔をする場合が多く、ナトリウムに由来する 589nm の輝線を吸収する光学フィルターとして利用されます。
ホウ素の緑や銅の青色は比較的肉眼でも、本来の炎色反応色を観察できるのですが、カリウムはナトリウムに邪魔されやすいためコバルトガラスが必要になります。
コバルト硝子を通して世界を眺めると、深い海の底のような、真夜中の夜空の高みのような、冷たくて静かな景色です。
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