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ルッキズムについて

「ルッキズム」(容姿至上主義)とは、人を外見によって差別することで、昨今注目されている新たな社会問題の一つです(外見差別自体はずっと昔からあったけど)。先日、社会学者の上野千鶴子さんが答えた週刊ポストのインタビューにおける発言の一部がネット上で炎上しました。

炎上発言の概要

先日の週刊ポストのインタビューでの上野千鶴子さんの発言が、ネット上でちょっとした炎上騒ぎになっています。上野千鶴子さんといえば、ジェンダー論で数多くの著作を持つ、日本におけるフェミニズム研究の第一人者です。最近では2019年、東大入学式でのスピーチが大きな話題になったのを覚えている方もいるでしょう。このインタビューの主要なテーマは『女性を「美人」と褒めること自体が容姿差別だ、という価値観が社会の中に確立されつつある』ということについてで、上野さんが自身の見解を述べています。

その中の、『女性に対して「美人」と褒めるのことと、男性に対しての、「イケメン」というのは別物である』という部分が多くの反論を呼び、炎上してしまったようです。この発言に対しネット上では「女性に対して、容姿に触れると差別扱いなのに、なぜ男に対してならアリになるんだ!」「それこそ男女差別だ!」みたいな反論が噴出しているわけです。

個人的には、上野さんの発言は 男性の容姿を評価・公言することを是認しているものでは決してない、と思いました。問題となった発言はあくまでも『「女性の容姿をほめること」と「男性の容姿を褒めること」はルッキズムの問題として同等に扱えない』という主張のはず。そして個人的にはこの主張には納得できます。

問題の発言についての私見

実際問題、『女性にとっての「容姿」と男性にとっての「容姿」は価値尺度としてイコールでは無い』という考えは綺麗事を抜きにすれば、多くの人に思い当たるところがあると思います。身も蓋もない言い方をすれば、「女性は、男性に比べ「容姿の良さ」がより重要になりがち」ということです。異性を恋愛対象として評価する際、男性の多くは女性の容姿をかなり重要視する一方、女性は容姿と同等に男性の経済力を重視する傾向は、間違いなくあるでしょう。さらにいえば、女性同士でもやはり容姿が優れていることは男性にとってのそれより、当人のステータスにおいて大きなウェイトを占めている気がします。数人の女性を前に、一人だけを指して「かわいいね」なんて言ったら、それ以外の女性は個人差こそあれ、自尊心を傷つけられるでしょう。男性でも同じことはあると思いますが、さほどダメージは大きくないでしょうし、そもそも多くの男性コミュニティの中では容姿がさほどステータスにならないことには、私以外の多くの男性も納得してくれるでしょう(それよりも経済力や頭の良さだったり、面白さが重要視されていると感じます)。

このように、女性は、男性に比べ「容姿の良さ」が一層重要になりがちだからこそ、上野さんは「女性の容姿について触れることには慎重にならなければならない」と世の男性に対し提言しているのです。

上野さんは決して「社会はこうであるべき」と主張しているので無くて、「社会がこういう流れになっているから、こうすると良い」と世の男性(特に、この種の問題にわりあい無頓着なおじさん世代)にアドバイスしている、と私は解釈します。少なくとも今回のインタビュー記事に関しては。

もっとも、他人を評価したりするときに使う物差し、価値尺度というのは状況によって異なるものだと思いますけどね。たとえば容姿で友達を選ぶ人はいないでしょう。互いに性格が合ったり、一緒にいて楽しいなら友達になれるでしょうし、美男・美女だからって、仲良くなれるとは限りませんし、スタイルが良いからといって、社内で出世できるわけでは無いでしょう。つまり友達なら「人間性や自分との相性」が、ビジネスシーンでの評価なら「仕事の出来」が同僚を評価するうえで最重要な尺度になるはずです。これが恋人を選ぶときには、少なくとも上記のシチュエーションよりは「容姿」が重要になると思います(男女問わず)。そしてその度合い、尺度の重みも人によりますね。「(建前ではなく)面白い人が好き」という人もいれば、「結婚するならお金持ち」という人も多いでしょう。

要するに、他人や自分を評価するために使うものさしは各人によって、状況によって異なるはずなのです。そして個々人がどのものさしで人を測るのかというのは社会正義の問題では無く、あくまで個人のポリシーとモラルの問題ではないでしょうか。

その中でルッキズムが問題としているのは

・(主に女性に対して)人を見る際の普遍的な価値尺度として「容姿の良し悪し」を見ることが社会的にまかり通っている

・そのことを公言したり、それに基づく差別などで、傷つく人がいる

という二点だと考えます。        

(続く)



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