(小説)大平原に沈む夕日
これは、今はもう昔のことになってしまった二〇一七年初夏に本社のあるカルガリーからサスカトゥーンに出張で行かされた時の思い出です。当時はグレイハウンドバスが陸の王者として君臨していた最後の時期で早く予約すればお手頃価格で乗れたのですがそれが消え、その路線は地方バス会社に引き継がれました。それらには割引制度は一切なく、今だったら往復飛行機で行くことになるのでしょうか。
私は、昼過ぎまでかかった支社での会議を終えて、食料品を売っている店がほとんどないダウンタウンから郊外のスーパーに行くためオフィスビルからほど近い市営バスのターミナルからバスに乗って郊外の八丁目沿いにある大型スーパーに向かいました。そこでパンと飲み物、ポテトチップを買いました。そして午後四時過ぎに市営バスのターミナルを降りて三ブロックほど先の州営バスのターミナルに向かいました。私が乗る予定のエドモントン行のバスは四時二十分ごろに目の前に姿を現しました。そして乗るための列ができてそれに並びました。切符は行きのバスに乗るときにすでに買ってあったので、乗る直前にそれを差し出して、半券が返されました。
四時三十分の定刻にバスはターミナルを出ました。私はスーパーで買い込んだロールパンを食べました。そうこうしているうちにサスカチェワン州とアルバータ州の境界の上にある小さな町、ロイドミンスターのドライブインに着きました。午後八時過ぎですがまだ空は明るいです。雨上がりで濡れたアスファルトの上を歩いてトイレを済ませてバスに戻りました。一部の人は戻らずここで食事を済ませるようです。バスは一旦ここを離れて町の中心にある鉄道駅に立ち寄り、十人ほどの客を乗せて再び先程のドライブインに再び立ち寄り、午後九時に出発しました。それから三十分ほど経つと周りの景色が赤く染まり出し林の先に沈む夕日の美しさに見とれました。そして日は沈みバスは漆黒の闇の中を走っていきます。
午後十時半過ぎ、暗闇の中にぼんやりと巨大なイースターエッグが見えてきたらベグレビルという村にバスは停まって数人の客を拾いました。それからは西方向にひたすら走ってエドモントンには十一時半頃に着きました。エドモントンのバス停は長距離鉄道駅と共用の施設で毎回遅れて到着する列車の乗客でごった返していました。ここは市内交通とのアクセスは悪くダウンタウンに出ようと思ったらタクシーを使うか一キロちょっと南に歩いて市営バスに乗るしかありません。待っている途中、駅員は客を落ち着かせるためか、ギターを引いていました。
わたしたちの乗るカルガリー行の夜行バスは午前一時に出ました。バスは順調に進んで午前七時頃に目が覚めた後カルガリー空港に立ち寄り、バスターミナルには八時頃に着き、目の前にある駅からCトレインと呼ばれる電車に乗って帰宅しました。