SS【楽園】♯毎週ショートショートnote

お題「デジタル混入島」

【楽園】(410文字)

超高齢化社会の到来と世界の完全デジタル化はほぼ同時だった。
しかしアナログ脳を捨てきれない超高齢者たちを持て余した政府は、まず選挙権を十八歳から六十歳までとして高齢者の意見を黙殺し、封印されていた制度を復活させた。

かつて貧しい農村でおこなわれていた『姥捨て山』制度を、『高齢者保養』という建前でよみがえらせたのだ。捨てるのではない、自然豊かな離島に高齢者を移住させるのだ、と政府は謳った。
最小限の衣食住も保障されている楽園で、島はみなさんの大好きな昭和を模したアナログ仕様です。

しかし、制度施行の結果は意外なものだった。
島で欲を捨ててのんびりと暮らすうちに、寿命がさらに延びたのだ。
これ以上長生きされては…と、慌てた政府は考えた。
「デジタル混入島にしてはどうか」

そんな政府の企みは…
裏目に出た。

ほどほどのデジタル化は高齢者のいい脳トレになり、寿命がさらに延びたのだ。

島は政府が謳った通り、楽園になった。
めでたし、めでたし。

おわり

(2023/6/15 作)

『たらはかに』様の6/11～6/17のイベントに参加させていただきました☆
今回は裏お題です～。
…最初、『デジタル』の部分を『ハイテク』と書いていたのですが、そういえば、デジタルとハイテクってどう使い分けるの？というアナログ脳ならではの疑問が湧いた高齢者予備軍……(;・∀・)
楽園に行きたーい。