ショートショート「さよなら。クリスマス」
あの世でずっと後悔しています。なぜ家族がいるのに私は寂しかったのか。なぜ孤独感があったのか。なぜ全てを投げ出したのか。この先もずっと空の上で考えておきます。
さよなら。クリスマス
奇天烈 ちぴ子
私は25歳専業主婦。子供は2人いる。空(そら)と葵(あおい)。2歳と0歳だ。主人は拓実(たくみ)。私と同い年。妊娠、出産、主人は全然協力をしてくれなかった。子育ても同様。私はそのことに不満を抱えていた。
毎年クリスマスの日は家族でクリスマスパーティーをする。空が生まれてから家族の恒例行事になった。ご馳走を食べ、子供達にプレゼントを渡しみんなで写真を撮る。主人と子供達は笑顔だ。私も笑顔笑顔…
今年もクリスマスが近づいてきた。毎年24日にクリスマスパーティーをしているので、今年もそうだと思っていた。
そんな時、主人が近づいて話しかけてきた。
「24日予定がある。25日にしてくれないか?」
「わかった。25日ね」
…あっさり受け入れたが予定ってなんだろう。
24日。子供たちといつもと変わらない日を過ごす。頭の片隅で主人の事が気になる。どこで何をしているんだろう。仕事だったら仕事っていうだろうし。空はパパをいつも探している。
「パパどこー、パパどこー、おしごと?」
「明日みんなでクリスマスパーティーしようね」
私たちは3人で眠りについた。
朝目が覚めると主人が帰ってきていないことに気づく。空はパパを探す。
「パパまだー?パパどこー?」
私はその言葉を聞いているだけでも腹が立った。だって私も主人が今どこで何をしているかわからないのだから。
主人から連絡がきた。
「今日も帰れないわ」
???????私は何も聞くことができなかった。
去年と一昨年、私がクリスマスパーティーを楽しんでいなかったら、主人が愛想を尽かしたのか。なぜか私は捨てられた気分になった。そんな時でも葵はギャーギャー泣き叫ぶし、空はパパが帰ってこないなら、クリスマスなんてどうでもいいと言う。私はなぜか生きた心地がしなかった。
葵と空を連れてベランダへ出る。外の景色を見ているとなぜか涙が止まらない。私は結婚なんてしなければよかった。子供なんて産まなければよかった。もう私なんて死んだ方がいい。何もかもが見えなくなってしまっていた。
私は葵と空を抱えてベランダから飛び降りた。
私が弱かっただけで誰のせいでもない。あんなにも主人のことを愛していたのに、あんなにもお腹を痛めて産んだ可愛い子達なのに、それ以外に私は何を求めていたのでしょう。些細なことで参ってしまうくらい弱っていたのでしょうか。主人に謝りたい。子供達まで犠牲にして私は何を考えていたのだろう。死にたければ1人で死ねばいい。なぜ子供を道連れにしてしまうのか、私自身にも分からないことです。ただ心の底から笑いたかった。
空の上からメリークリスマス。
おしまい