おしっこって当たり前じゃないんだよ。
③平成12年・総合病院169床・千葉県(その6)
透析室のT師長との出会いで、未知の世界である透析看護に飛び込む事を決めた私。透析看護との出会いが、今の看護師としての自分への変化をもたらせてくれました。
ところで「透析」を知っている人ってどのくらいいるでしょうか?
私が透析看護をやっていました、と言った時に「透析ね・・・大変ね・・・」と答えられるのは、家族や近しい存在の人に「透析を受けている人がいる」または「亡くなった家族が透析をしていた」という方がほとんどでした。
ここでひとつ、おさらいしましょう。「透析」とは。wikiさんより。
人工透析(じんこうとうせき)とは、医療行為のひとつで腎臓の機能を人工的に代替することである。正式には血液透析療法である。
腎不全に陥った患者が尿毒症になるのを防止するには、外的な手段で血液の「老廃物除去」「電解質維持」「水分量維持」を行わなければならない。 この医療行為を血液透析と呼び、人工腎、血液浄化と呼ばれることもある。2014年末現在で、日本に約32万人の人工透析患者がいる。
はい。なんのこっちゃ分かんないですよね?
私たち、毎日、おしっこしますよね。
アイドルはトイレになんか行かないおしっこなんかしない、なんて幻想もあるようですが、生きている限り、人間は誰でも排泄は必ずするのです。
なんの為におしっこするかというと、身体の中にある要らないものを排出する為におしっこするんですね。
ただ単に、水分を排出するだけではなく、あの中には沢山の不要な物が含まれているんですね。
では、不要なものとは何だ?ということですが、ざっくり言うと、
身体の中に溜めたままだと死んでしまうもの、です。
数ある排出すべき物の中でも、いちばんコワいのはカリウムですかね。カリウムは身体の中にたくさんありすぎると、心臓に刺激を与えすぎて不整脈を起こし、重篤になると心臓が止まっちゃうんです。
心臓が止まるって、死ぬってことですよね。
健康な人間の身体は、私たちが何も知らなくても意図しなくても身体の恒常性を保つ為に様々な働きをしています。
食べ過ぎようが、飲み過ぎようが、せっせとせっせと、「身体がちょうどいい状態」である為に、要らないものは排出し、足りなければ溜めておこうとしてくれてるんですね。
けれど、腎臓の機能が悪くなってしまうと、この「要らない物を排出する」ということが出来なくなってしまいます。
それは、「おしっこが出ない」という症状として現れますが、「たかがおしっこが出ないくらいで」と安易に考える方もいるのではないでしょうか。
おしっこが出ないと、身体に溜めておいては死んでしまうものが出せなくなります。どんどん溜まっていってしまいます。
透析患者さんはバナナ一房とメロンひと玉を食べるとカリウム値が高くなりすぎて死んじゃうと言われています。
自殺しようとしてカリウムの多い果物をたらふく食べて運ばれてきた患者さんもいました。
死因、メロンの食べ過ぎ、というのがあり得る世界なのです。
自分の腎臓で要らない物の排泄が出来なくなってしまったら・・・何もしなければ死ぬ、ということ。
腎臓が働けなくなったとき、腎臓の変わりに身体の中の要らない物を排除する治療が「血液透析療法」で、「透析」と言われると大体がこの「血液透析」を指します。
透析にはその他にも腹膜透析があったり、いちばんの解決方法は腎移植です。
日本は世界有数の透析医療の先進国。その理由には腎移植が一般的ではない、という事があります。
世界では透析療法は「腎移植までの間繋ぎ」とされることが多いため、透析は一時的な、急場凌ぎな医療とも言えます。だから、透析自体が進化するより、腎移植や腹膜透析を進化させる事の方が社会的にも求められているのですね。
この辺、語り始めるとめちゃめちゃアツく長くなってしまうのでこの辺で切り上げますが・・・・
透析看護とは、
透析をしなければ死ぬ、という事実を突きつけられた人たちが集まる、穏やかな毎日の裏にすぐ死を感じている人たちが集まる場所で必要とされる看護なのでした。
なんちゃって腰掛けナースの私が飛び込んだ透析看護。
なんちゃってナースでは通用しない現場に、自ら飛び込んだ事は大きな意味があったのです。
※のんからのお願い
昔、急性腎不全で運ばれて来た若者が話していた衝撃のひと言、
「そういえば2〜3日おしっこ出てない」。
この方は、急性腎不全の治療むなしく亡くなられました。
おしっこ出ないと死ぬんだ。
って知っててくれたら・・・・・と思います。
みなさまも、万が一おしっこ出ないなんて事があったら、病院行ってくださいね、絶対!!!!!!!
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