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例の長谷川豊さんの透析の話(白衣の天使番外編)

☆番外編

ものすっごい炎上してたみたいですけど、少し落ち着いてきたんでしょうか。


「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」

とブログで発信した長谷川豊アナウンサー。


話題になったブログ読みましたし、彼のブログを分析したり批判したりしているブログも少し読みました。あ、コメントも読んだな。

長谷川豊さんのブログのコメントには、比較的彼の意見に「賛同する部分もある」っていうコメントがたくさんありました。ブチ切れしたコメントはほとんどなかったので、良いものだけ載せているのかしら?

コメントの中に、透析に関わっている医療従事者や、Ⅱ型糖尿病以外で透析導入に至った方の、長谷川豊さんの考えを肯定する(もしくは問題提起の部分だけ肯定する)コメントが目を引きましたね。

この「白衣を脱ぐ」に書いているのは、私の看護師人生を時系列で追っているし、今話題になっている事について何か書き足すものではないのですが、今回の長谷川事件についてはどうしても書いておきたくて(自分の為にも)書きました。

今回の長谷川豊さんの透析発言について思う事は、

問題提起としては「透析医療の現状」について世の中に知ってもらえて良かったのに、余計なひと言で違った方向にいっちゃった。

なんであんな書き方をしたんだろう。

これに尽きる気がします。

ほんと、なんで「殺せ」って書いちゃったんだろう・・・・・・

「殺せ」の一文があるから炎上して、たくさんの人が透析医療について知る事にはなった。

でも、「殺せ」なんて一文なしにあの炎上くらいたくさんの人に伝える事ができていたら、もっともっと、違った形で、みんなで考えるべき問題になったのになあって・・・・

透析医療費の現状を問う問題から、長谷川豊さんの不適切発言問題にすり替わってしまいましたよね。

この件について書こうと思ったのは、「透析医療の未来」は、私の看護師人生を大きく変えたからです。

簡単にその流れを書いてみます。


①看護師の仕事、キライ。本当は別の仕事がしたいな〜。と思いながら嫌々看護師を続ける。(約15年)


②透析医療・透析看護に携わる事で、透析患者さんからたくさんの事を学び、看護師が天職だと思えるまでになった。


③透析に関わり、学ぶ事で、金銭的な面で透析がとても恵まれた治療だと感じる。(毎月一定の自己負担額で、透析以外のすべての医療も受ける事ができる。)


④日本の透析医療は世界一進んでいるし、透析環境にも恵まれている。
(海外では透析は腎臓移植までの「間繋ぎ医療」な事も多い。日本では腎臓移植が一般的でないのも透析医療がここまで発展した理由のひとつ)
けれど、透析を受けている患者さんのとても満足度が世界の中で低い。
透析をうけることで助かった命だけれど、それを持て余し自暴自棄に生きている人が多いと感じた。


⑤透析を受ける事でせっかく助かった命。

透析治療を受けなければ生きられないのは苦しい事だけれど、透析を受けながらでも第二の人生を楽しんで欲しいと思って、透析患者さんに関わるようになる。


⑥ありがたい事に、自分がそのような考えで透析に関わるようになると、患者さんにもポジティブな変化が見られ、ますます透析が好きになった、透析患者さんが好きになった、透析患者さんのために、看護師として何ができるか考えるようになった。(患者会のイベントに参加、院内に畑、院内に透析食レストラン)


⑦透析について学んだり考えるようになり、直面したのが透析医療費。

透析治療にかかっている医療費、透析患者が透析以外で受けている医療費の額の多さ、働くのが難しくて生活保護を受ける人も珍しくない。
そして、増えている透析予備軍の多さ、削られて行く診療報酬・・・・
今の恵まれた透析医療費の体制が、このまま永遠に続くとはとても考えられない!!


⑧透析患者さん達が、安心して透析を受け続けられる未来を創っていくには、どうしたらいいんだろう?


⑨もっと、透析しながら少しでも働き続ける透析患者さんが増えれば、透析患者さん同士で助け合えるんじゃないかな?
よし、働きながら透析している人の応援をしよう!
うちの病院は高齢者がほとんどで、働きながら透析を受けている人がほとんどいないから、都内の夜間透析をやっているクリニックに転職しよう!


⑩諸問題あり、よい条件の透析クリニックでの就職は中止。
さて、どうしよう。
しばらく自分が何をやりたいか、何が出来るのかを考える為にフリーで働こう。(派遣看護師として数々の病院や施設で夜勤三昧の生活を数ヶ月送る)


⑪透析医療費だけでなく、日本の医療費自体が沈没寸前じゃん!「長寿」かもしれないけれど、「健康寿命」が短すぎる!

これは、やばい!


⑫最後の数年間、寝たきりで思うように生きられなくなるのではなく、最後の最期まで、自分の生きたいように生きられる人を増やしたいなあ。


⑬それには、なるべく病気にならない事=予防医療・看護だ!

予防医療がすすめば、透析が必要になる人も減る!
医療費も減る!
そうしたら、医療費を削減するんじゃなくて、本当に必要な人にもっと手厚く医療費を使えるようになる!!


⑭地域の人の心身の健康をつくることを理念にしている、今の会社の訪問看護ステーションに出会う。


⑮えー、訪問看護とか超大変そうだし、やったことないし・・・うーん、でも、予防をやりたい・・・・よし、訪問看護、やってみよう!!


⑯訪問看護で予防って、何ができる?どうやればいい??どうしたらいいの〜!?と、模索中。


と、現在に至る。


私の看護師人生のターニングポイントは、透析医療・看護、透析患者さんと関わったところなんですよね。

だから、透析患者さんにすごく感謝してる。


今、透析看護自体に直接関わっているわけではないけれど、想いは繋がっているんです。


医療費の使い道や、どの病気の負担を軽くするかは、その病気の当事者たちからの声はもちろんのこと、決めているのは国です。


だから、医療費の負担額については、患者さん達を責めるべきではないと思います。


けれど、実際問題として、透析医療費を現状維持していくのは厳しいはず。
透析医療だけが特別なのではなく、困っている人が安心して医療を受けられるように・・・そこを、どう変えて行くかが討論すべき部分なのではないかな?

長谷川豊さんのいう「自己管理できない患者」さんは、たくさん居ると思います。そこに同調する医療従事者もいるようです。
じゃあ、どうやって自己管理できるように関わっていこう?と考え実践するのが私たち看護師の役割です。


自己管理できない、の批判は、その患者さんを支えている私たち医療従事者に対する苦言でもあるんですよね・・・・

看護師、医療従事者にも、心も身体も疲れ果てている人がいます。
そういう人たちが、わがままとされる患者さんに接すると、受け止めきれないんですよね。
常にストレスフルな状態で、さらにストレスを受ける。
そんな状態で、自己管理できないくらい悩んだり苦しんでいる人を支えるのって・・・・難しい。


だから、まず、土台から、根っこから・・・・

病気で困っている人をケアする人が、心身ともに健康でいられること。
それも、大きな「予防」だと考えています。


自分が透析に関わっていたとき、
患者さんに指導しなきゃいけないとき、
「じゃあ、自分はできているかな??」と考えた時。

患者さんに偉そうなこと言えない状況の自分がいたからこそ、「できない人の気持ちを汲みながら、ちょっとでも良くなろうとする」ことの大切さを感じました。

正論で言っても、伝わらない。
傷つけるだけのことも多い。

そんな中で、協力し合って、お互いよくなる事を目指す事で、何かが動き出す。そんな風に考えています。


長谷川豊さんの問題提起が、良い方向に行く事を願っています。


自己管理出来ないと責められるより、

少しでも自己管理できることで、透析治療が楽になり、生きる事の楽しみを見つけられたら・・・・
透析医療は、もう一度人生を生きる、とても素晴らしい治療なのですから。







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