下北沢、夏の陣
こんばんは、割と綺麗な社会のゴミです。
好きな男性のタイプは洗濯ものを畳むのが得意な人。私の分までやってくれてもいいんですよ、遠慮なさらず。
さて、私と下北沢は遠い。
どのくらい遠いかと言うと、まず仕事の取引先は港区と中央区に集中している。東京メトロ。そして自宅の最寄りはメトロ各線と直通運転で繋がってる、キャラクターが日本一可愛いあの鉄道会社の某駅。なので京王線も小田急線も年に一度乗るか乗らないか、基本的な行動範囲に下北沢は含まれていない。直線距離にすればまったく大したことはないんですが。
ちなみに2021年の下北沢駅の乗降車は0回である。2020年は1回、2019年も1回。はっきり言うと、下北沢に行く理由は今のところ一つしかない。
本屋B&B。以前に伺った話はこちら。
というわけで行ってまいりました、
8/5(金)に行われた【黒川アンネ×冬野梅子「モテない人生に誠実に向き合うイベント」『失われたモテを求めて』『まじめな会社員』W刊行記念】と題された、心に刺さって抜けない言葉の羅列のイベントに。
8月の第一週の出来事をこんな時期にレポートするなんて恐ろしいほどにタイムラグがありますが、夏休みの宿題はギリギリアウトをかまし続けてきたタイプの人間。書き上げた事に意味と価値がある、ということでご容赦願いたい。
まじめも誠実も大好きなんですけどね。
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まず、イベントと著書について語る前に、私の「失われたモテ」について少々。
私は15歳から美人をやっている。「やっている」んです。どうみても絶世の美女ではないし、職業はモデルでも女優でもないので実態はお察しいただきたいのですが、綺麗に見える服を着て綺麗に見えるメイクと髪型にすれば、誰でも・それなりに美人として扱ってもらえる。ラッピングやデコレーションの類い。なのでこの先の勘違い女の戯言は、広い心で片目を瞑って適当に聞き流してほしい。
そんな美人な私は当然モテてきた。勿論、このモテは天然のものではない。誰にもダサいとは言わせない服、派手な化粧。言葉を選び顔色を伺い、本音も本性も綺麗に収納。
誰と、どこに居てもそれなりの楽しさを提供できるよう努力してきた。そんなどうしようもない方向の努力の甲斐あって、男女問わずモテてきた。友人関係も恋愛関係も付き合う人は選んできた方だと思う。そして選ばれない事なんてなかった、27歳までは。
いつかきちんとまとめたいのですが、27歳の私は演じるのを辞めた。ぱたりと。人に合わせるのは病的に上手いが、男性相手にそれを一切しなくなった。合わないことがあれば目をつむらず・背けず、とりあえず・なんとなく・好きになれそうかも?の状態で交際を始めることを一切辞めた。
人生の根になる部分が、生きてしまった人生が、おおよそ平均とは大きく外れてしまっているので中身は空、すべてに自信がない。そのうえ人様に自慢できるような学歴や難関資格を持っている訳でもないし、仕事は楽しくて大好きだけど高い収入があるわけではない。どこから見ても無いものだらけ。その自信のなさを交際相手のスペックや友人の数と華やかさで埋めようとしていた己の愚かさに、大きな実害が出てからやっと気付いたのだ。
斯くして、モテから降りた私は、孤独で寂しい独身女性としてTwitterで嘆き続けている。
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お待たせしました、今回のイベントの主題となっている著書について。
まずは冬野梅子先生の【まじめな会社員】から。
そもそも漫画自体をほとんど読まない。愛用している電子書籍のアプリに入っている漫画は、峰なゆかさんの「AV女優ちゃん」ぐらい。なので久々の漫画。全4巻を一括購入、一気読み。東京にしがみつくアラサー女性、まじめな会社員のあみ子。恋愛は下手で、誰にも愛されていない、コロナ禍で30歳という年齢を迎えている。
なんだこれ、ほとんど私じゃないか。しかし主人公あみ子はもっともっと重症だった。年単位の片思いの末にいきなり告白をしたり、好きな人に似ている人をアプリで探したり。恐怖である。そして会社と地元と家族、取り巻く環境は比にならない程の地獄だった。でも、美しくて個性的な友人に憧れてみたり、ライティングに何かを見出してしまったりと「特別になりたい」と願う感覚は簡単に想像できてしまったので、真面目で痛いところは共通するということでしょうか。ツラい。
最終巻であり今回のイベントの主題である4巻は本当にキツかった。俺のことを好きでいてほしい男も土足質問を投げかけるタメ口男も、実在する男性たちの記憶がよみがえる。もうやめてください。Instagramのストーリーで匂わせる女も仕事中にずーっと物件探しをしている新婚の同僚も、真面目勢からすればイライラするような人間のオンパレード。全員まとめて周囲には居てほしくない。
読み進めると途中、大きく場面が切り替わるところがある。今までの話の流れではこんなにハードな場面展開は一度もなかったので、思わず「まじか」と声に出してしまった。驚くような仕掛けやトリックではない、日常と生活の延長にあり誰にでも起こりうる話だけれども。容赦ない。私の実家は電車で1時間の距離なのでそもそも比較にならないが、同じ状況に置かれた時にあみ子と同じ人生の選択はきっとできないと思う。
最終話、究極の2択を終えたあとの言葉は、なんとかギリギリ東京に爪を引っ掛けて生きてる私には結構ガツンと響いてしまった。
どこに居ても、どんな形でも地獄が続くなら、やっぱり自分で選んで納得したものがいいじゃないですか?
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お次は黒川アンネ先生の【失われたモテを求めて】。正直にお話すると、今回のイベント参加はジャケ買いならぬタイトル買い。今年の夏も特に変わり映えしない夏になりそうだな、せっかくなら少しでも多く本を読もう!と、本屋B&Bさんのイベント一覧をスクロール。面白そうな本ないかな〜それを読んでイベントも行きたいな〜!と完全に読書に体験を求めに行ったところから始まりました。タイトルがとにかく目を惹いた。失われたモテって何よ?
以下の文章は本の帯と袖の部分から引用させていただく。
「年収300万、学年で一番太った子。誰かに選ばれた、好きになってもらった、という記憶がない」
といった恐ろしい言葉の羅列の後に、著者の黒川先生の華やかすぎる経歴。一橋大学卒。ドイツ留学。修士課程修了。
なんだよ、私に足りないすべてを持っているじゃないか。失われているものなんて全然大したことないのでは?と思いたかった。だって、並々ならぬ努力の上で大学受験を乗り越え、留学までして語学を学び、大学院まで出た立派な方が年収300万。どういうこと?
コロナの大恐慌により、貯金を吹き飛ばした底辺自営業者わたし。金はない、辛うじて借金もないけど。もし今交際相手から婚約指輪をもらったとして、その後結婚生活を始めるにあたり予想される百万単位の出費が訪れたりなんかしたら、ちょっと、いやだいぶ勇気がいるような資産状況だ。まあそんな素敵な交際相手はいないし、婚約指輪をもらう予定も全くないんですが。
なので非常に近しいものを感じてしまった。これは、もしかしたら必要なことが書かれているかもしれないぞ…!というのが本を読む前の感想。
最早モテとは関係ないところに興味が湧いている。
黒川先生の文章はとてもなめらか。さすが文章を扱うお仕事をされていらっしゃる、うらやましい。これだけ素敵な才能をお持ちであれば、モテなどという無駄スキルなんて必要ない気もする。ただこの本で語られているモテとは、異性だけに向けたものや私がやっていた人工的で作為的なものではなく、人間的な魅力の話。CanCamの小見出しとは違うのです。
ドイツへ留学中のお話、就職活動中のお話、コロナ禍に入ってからのこと、マッチングアプリの出来事など。頷きが止まらないトピックのなかで、さらりとショッキングな内容も。
元々は男子校、共学化したばかりの高校に進学した若き日の黒川先生。先輩や教員から投げかけられた言葉、隠し撮りに覗きが「普通」にあるという異常、そして大学の合格報告のあとの叱責。
読みながら怒りと悲しさでいっぱいになりました。隠し撮りに使われたガラケーは逆パカしてやりたいし、覗き野郎のプロフは2chに晒してやりたい。高校三年生、18年間の人生では恐らくおめでたさ最上位にくるであろう大学合格の場面でこんなことを言う教員なんて、今から一緒に殴りにいきませんか?
もし、私が黒川先生の当時の友達だったら、校門で待ち構えてクラッカーを派手に鳴らしてお祝いするし、その後はみんなで(?)カラオケ行って、花火のついたハニトーを注文する。
『*☀︎**ひとつばし合格**☀︎*☀︎*
**☀︎おめでとうございます**☀︎*』
と可愛く描いてもらった大きなアイシングクッキーのプレートをのせてもらうので、一緒にチェキを撮ってから食べましょう、ぜひ。
(私の育った品のない地域の、品のない祝い方で申し訳ありません)
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そしてイベントについて。今回の下北沢駅との地味バトルは記事の終わりにまとめます。
イベントは20時開始、私は19:40に到着。時間厳守かつ余裕もあってステキですね。椅子がずらりと並ぶ、この日は参加者も多い様子。そしてB&BとはBOOK & BEER。ドリンクのサービスが復活していてとても嬉しい。ビールが!飲める!というわけで今回のヘッダーの写真は本屋B&Bの書棚を背景に撮影した代々木の地ビール。代々木アンバーエール。代々木に住んでいる身なりの綺麗な独身男性の8割は複数の意味で独身女性の敵である、なんて話もちゃんと記事にしたいです。がんばる。
「モテない」年表とともにトークが進む途中、黒川先生の高校時代の恋の話が出てきた。好きで好きでたまらない先輩、一目惚れ。ああよかった、高校時代が嫌な思い出だけではなくて。軽快で自虐たっぷりのモテない話から、100円均一ではじめての化粧品を買った話、ティセラのシャンプーなどなど。平成に生まれ2000年代にティーンエイジャーだったので、とにかくすべてが懐かしい。今の10代からするとこれらは「平成レトロ」って言うみたいです、恐ろしいですね。
優秀なお2人の働くエピソードはとてもリアル。Twitterに大勢いる自称・総合職の港区OLや丸の内OL達からは絶対に聞けない。キラキラの匿名アカウントで負の体験を語るなんて、努力と魅力が足りない証で、東京に対する負けを受け入れることになるから。せめてオンライン上の自分だけでも理想の生活をしていたい人ばかり。黒川先生の言葉を借りるなら、古き・悪しきモテが蔓延っている。
正当な評価をされない悲しみはどこにいても、どんなキャリアでもついてまわる。私だけではない安心と、こんなに素敵な経歴をお持ちでも似たような壁にぶち当たることに大いに絶望。そしてハラスメントについてとフェミニズム。今の時代、働く女性の話を書くならフェミニズムは避けらけないと。確かに。
私は正直に言うとフェミニストでもなんでもないし、山ほどいる嫌いな人物像の中にはフェミニストを謳う女性もフェミニストを笑う男性も自称フェミニスト男性もいる。でも、社会の構造が男性優位に作られていることは確実で、弱者は弱者のまま、カースト制度からは逃れられない。
あみ子も黒川先生も私も、控えめに言って結構かなり頑張っている。と思う。その頑張りの方向性が間違っている、高収入を得る為の努力だけが正義だ、というのなら、その高収入を得られる仕事だけで社会を回せるのかお前は?と言いたくなる。これについては大いに意見がありまして。
例えば、君たちの大好きな素敵な立地にある、内装とインテリアにこだわった東京カレンダーに掲載されているような飲食店や、事あるごとに有り難がって利用する都心の高層階にある5つ星ホテルに、一体どれだけの非正規労働者がいてそのうちの女性の割合はどのくらいかご存知でいらっしゃる??
まあこの件については私も勉強が必要なので、これ以上はやめておきます。大きな声を出してすみませんでした。
イベント終盤、質疑応答の中であみ子のその後についての話があがったのですが、まるで私の今後について言い当てられているようだったので聞き流すことにしました。目の前の厳しい現実からは目をそらし、都合の悪いことには耳を塞いで生きていくのも一つの戦術です。
社会の状況、急に上向かないでしょうか。
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モテない、という女性が認めたがらないマイナスの切り口から、自己肯定感や社会の構造、物語の中に作られた「女性同士の関係性」についての徹底的な否定まで。きっとふたつの作品は今後も独女の参考書になる事でしょう。悩めるまじめな独身女性には心からおすすめ。
逆に、女に生まれて楽しいし、実家も太いし彼氏はハイスペだから☆なんて周囲から顰蹙を買いそうなマウント気質の成り上がり女子、もしくはあのこは貴族の華子のような方は1㎜も共感できないと思うのでおすすめしません。世界は経験と価値観で分断されていて、みんな自分の人生を肯定するのに必死なので。
わたしも勿論、必死です。
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さて、ここからはイベントもおふたりの著書も一切関係ないので、お時間のある物好きの方だけどうぞ。
ここまで読み進めてくださった方、文中にいくつかリンクを貼りました2020年10月にB&Bのイベントに参加した話にも目を通していただけましたでしょうか?まだの方はぜひ、こちらをお先に。
前回、渋谷駅から京王線に乗るという簡単なところからミスをし、B&Bが移転したことに電車の中で気付き、長きに渡る改装後、綺麗になった下北沢駅で道に迷った社会のゴミ。
今回は絶対に絶対に余裕を持って会場に着くぞ!と意気込みまずは渋谷に到着。ここで確認すべきは急行に乗ることだけ。easyすぎて即クリア。
次に注意しなければならないのは下北沢の駅を出でからの道順。もう同じ失敗はしたくないので、改札口と商業施設の位置関係、そして改札を出てからB&Bがある下北沢bonus trackまでの道順を事前にGoogleマップで調べておきました。何事も準備が大切です。
さて、ここで大きな声でクレームを入れたいことがあるのですが、前回Googleマップの示す通りに歩みを進めた結果、B&Bを目の前に行き止まりに到着。
あれから1年と10ヶ月、今回のGoogleマップの検索結果がこれ。
同じ。前回と全く同じ。
またもや行き止まりに案内されました、おい。
これを読んでいる方の中にGoogleにお勤めの方はいらっしゃいませんか?新たにB&Bへ足を運ぶお客様がきちんと無事に到着できるよう、正しい道が表示されるように改善していただきたいです。よろしくお願いいたします。
正しい道順は以下の通りになりますので、これから初めてB&Bに行く方はぜひ参考にしてください。
さて、随分と長くなってしまいましたが、私はやっぱり本が好きだし、文章を書くこともそれなりに好き。
これからも何卒、Twitter共々よろしくお願いいたします。
2022/9 割と綺麗な社会のゴミ