緑のハンチング帽
寒くなったので、夏の帽子を洗濯した。
入れ替えに冬の帽子を出したら、緑のハンチングがしわになっていたので、アイロンがけ。
そういえばこの帽子。父が「帽子を買いに行くからついてきてくれ」というので、バスで繁華街まで出かけて、お洒落な高そうなものばかりおいてあるファッションのお店で買ったものだった。
父は「これにしたい」と言うが、私は、父の持っている服に合わないから反対したのだった。それでも、父は私の話を聞かず、その帽子を買って帰った。なんと緑色のハンチング! 私が被るのなら、けっこうさまになると思うけど…。
父が亡くなって家の片付けをしたときに、まだ新しいこの緑のハンチングをみつけて、今は私の愛用の帽子になっている。
帽子のしわにアイロンをかけながら、あんなにはりきって買った帽子だけど、父が被っているところを見たことがなかったことを思い出した。父はどういうつもりでこの帽子を買ったのだろう?
ふと「父は、初めから息子の私に被らせたくてこの帽子を買ったのかもしれないな…」と思った。いや、考えすぎか…。