全血縁がカルト信者の話 その4
・全血縁がカルト信者だとどんなことになるのか ~中学生編~
中学は地元の公立校に進学しました。入学と同時に卓球部に入部します。理由は姉がやっていたため初期費用が掛からないからです。健気~。
ところが自分は周りより少しだけセンスがあったようで、今後ズブズブとのめり込むことになります。
私の地元は治安が悪く、中学校は国から「指導困難校」として指定されるような学校でした。いろんな教育法が試験的に導入されたり、県下の生活指導に特化した教員が集められたりしていたらしいです。こわいね。
そのような学校なのでもちろん授業のレベルは低く、大学に進学することが決まっていたらしい私は学習塾へと送り込まれます。おかげで塾の教員や他学区の同級生など、自分と比較できる対象が大幅に増えました。
また卓球教室にも通うようになりました。そこでできたツテで高校や大学、クラブチームへ練習に行くことが増えたこともあり、見識が大きく広がっていきます。
そして違和感の種がついに発芽するんですね。
「もしかしなくても、うちはおかしい」
おかしい。少なくとも到底普通ではない。普通は日常的に何かしらの儀式をすることはない。家に知らない人が代わるがわる風呂を借りに来たりしない。夫婦の出会いは宗教ではない。知らない人に自分の子供をベタベタと触らせたりしない。大仰に扱うネックレスはない。
比較的良かった学力も良い土壌になります。特に理科の勉強をするたびに思います。「神、存在する隙ないやん」
中学2年生になる頃には施設への連行や自分への儀式を断固として拒否するようになりました。拒否するともちろん理由を聞かれます。答えます。母親はヒスりはじめ、しまいには泣きながら私を責め始めます。
この頃から意識を遠くにお散歩させる技を習得しました。主に無駄な説教や詰問をされているときに有用なので皆さんも習得を目指してはいかがでしょうか?おススメです。
友達が遊びに来て言う「あのでっけぇ建物なんなん?」
聞かれるたび濁して言う「自分もようわからん」
5教科テストの都度、母親が言う「姉ちゃんはずっと480点以上だった」「姉ちゃんはずっとオール5だった」と学習塾、テスト期間中の監視(※1)のおかげで中学3年生になっても学力はそこそこあり、当時○○(県名)5校と言われる高校のうちのトップ校以外なら確実に入学できる状態でした。
(※1:漫画を読んでないか、ケータイを触っていないか等、足音を潜めて自室前まで移動&勢い良くドアを開けて不定期抜き打ちチェックをします。バレた場合はヒス説教開始。だるいときは色々隠されるか自室への帰還を禁止されます。テスト期間以外では就寝宣言後などに行われます。)
しかしまぁ私の頭には卓球のことしかありません。練習に行っていた高校からスポーツ推薦の話を貰ったり、1つ上の先輩や他校の同級生に誘われた高校に行きたがります。このことを母親に話すと、母親は文字通りフリーズします。そして数秒後、何事もなかったかのように再起動、やっていたことに戻ります。
進路相談が近づいた初秋、母親が行きたい高校を聞いてきます。姉は上記5校の3番目である高校に自己推薦(※2)で入学しているため、選択肢は3つです。
(※2:1月実施の各校独自問題の入試。普通科は定員の3割をここでとります。要は受かったらすごいぞ枠です。)
中学で散々姉と比較された私はこれ以上比較されないように2番目の高校を選びます。またこの高校はつい最近卓球部が復活し、とても強い人が1人いるという話を耳にしていたため、実質の選択肢はここしかありませんでした。選んだ理由を尋ねられます。もちろん、「卓球が強いから」
母親は怒鳴ります。「もっとちゃんと考えなさい」
え~…ちゃんと考えるも何もないが…行きたいとこちゃうし…
こうしてその高校のHPを調べます。単位制で選択の自由がどうのとか、独自で実施している自由研究のような授業がどうとかそれっぽいことをまとめ上げ、後日説明しました。
そして進路相談の3者面談の日、私は受験する高校を担任に伝えます。担任は受験に関することを説明してくれます。一通り話し終えた担任に向かって、母親は抑えきれなかったかのようにしゃべり始めます。
「この子、最初は卓球が強いってだけでこの高校に行きたいなんて言ってたんです。でも今はこれだけしっかりした志望理由があって、ほんと、感心したんですよ~。」
「こいつは本当に、私のことを何も分かってないんだなぁ」
間違い探しの最後一つを見つけた時のような鮮烈さで理解しました。この時のことは今でもはっきりと覚えています。
その後、私は自己推薦でこの高校に合格し、みんなより長い春休みを卓球に全ツッパしました。
今でも時折、推薦の話をくれた高校、卓球の先輩・同級生が誘ってくれた工業高校とちょっと遠くの普通科・電気科併設校に行くことができていたら、どうなっていたかなぁと考えます。