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roast nuts
「付き合う気ないんだよね。付き合っても長続きしないと思うし。」
12/24 クリスマスイヴの23時33分。世の中のクリスマスイヴに会っている男女が
どうやって終電を逃してしまおうかと、結果の決まっている作戦を頭で練っている
その頃、私たちは終わりに向けて動いていた。
真夜中乙女戦争、ダンダダン、チェンソーマンを経由し見始めたエヴァンゲリオン新劇場版:Qも、こんな時間のBGMになんてなりたくなかっただろう。
「付き合いはしないけど今だけいい思いをしよう。」
とは口に出さず、かつその行為を正当化できるような言い訳を考えている人間が
この世で一番はしたなく、惨めである。知恵の実を食べた人類は、本来の猿の部分を隠して、なんとか言葉で人間のように見せているだけなのではないか。
目の前の男がつらつらと話す説得力の無い言い訳と、エヴァンゲリオンQが同時に耳に入ってくる私は、そう考えていた。
足の力は抜け、今朝早起きして部屋を片付けヘアメイクをし、香水を振って家を出発した私を思うとなんだか面白くなってきた。
ハッピーメリークリスマス
一通り言い訳を聞いた後、目の前に座る実家暮らし24歳の男を駅まで送ろうとした。駅までおよそ徒歩5分。こっちだって何か言って傷つけてやらなければ気が済まない。帰りに泣けばいいんだ言いたいことは全部言ってやろうと。
1階までエレベーターで降りたところで、目の前のデリカシーをオーストラリアの畑に置いてきてしまった男がすっきりした顔で言った。
「あ、駅まで来なくていいよ。一人で帰るから。大丈夫。」
2発ぐらい殴らせろ。
現実はそんなことできるわけもなく。クリスマスデートに誘われイヴを二人で過ごしたこのドラマの最終回がこんなにあっけなく終わってしまったことがショックで、好かれているはずだと信じていた自分が恥ずかしくてさらにショックで、
言い訳パラダイスを浴びせられた中で私が言い返せたのは
「説得力ないよね」の一言だけだった。
イヴの冷たい風に当たって頭を冷やそうと、寒い空気の中を私は歩いた。
応援してくれていた友達にまず言おうと携帯を開く。
LINEを開くと「ごめん」の通知。
人が一番むかつくのは、思ってないであろう言葉を言われた時だとおもう。
保育園の時の、おもちゃを取ったりょう君と、取られたみおちゃん。
流した涙の量と精神的疲労は確実に被害者であるみおちゃんの方が多いはずなのに
りょう君が一言ごめんと言っただけで許してあげなければならない。
子供の時からずっと納得できなかった。
このLINEのごめんもきっと、本当に悪いと思って謝っているのではなく
送るだけ送っておいてすっきりさせたいという魂胆が見え見え
そう思う私が捻くれているのか。
イヴに振られたんだ。これくらい許せ。