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ハイボール濃いめでお願いします#13吞まれるから飲む、それがアル中 其ノ壱

寒の戻りが春から初夏へのスピードを緩めている今日この頃
お元気ですか?僕は2社も会社落ちました。

世知辛い令和の曇天に寒風を全身で受けながら一筋の光が差したと思ったシナリオプランナーのトライルは落選し、D〇M系列のライバー専門事務所のオンライン面接受けましたが(社員の方)、合否の連絡が一週間たっても来ません。

毎日がゴールデンウィークの僕ですが飲みたい気分です。

ソーダ割りを下さい、泣いてなんかいないわ傘の柄がアヌスに入っただけ。
アイツなんか、アイツなんか……酒で思い出しました。

ゴキブリ並みの生命力なんて聞きますがゴキブリを超える男がいました。
言葉で魅せる人体の不思議展、生きる屍のような男をご賞味あれ。

はんなりと対極な京都からの刺客


「逃亡者は昔から北に逃げるのが定番なんだよ」

そんな定番を覆す男が西の都から夜行バスに乗り東京に辿り着いた。

酒を愛し、酒に溺れ、死の淵を彷徨っても飲酒をこよなく愛す。

名を「牧野勝弘」、通称「マッキー」。

バブルの恩恵にあずかり京都で飲み屋をやっていたが、民営化に伴う赤字営業のかんぽの宿みたいに閉鎖を余儀なくされ地元から逃げてきた。

モチのロンで店の内装費は踏み倒してきたので飛んでマッキー50hzの地で第二の人生スタート。
唯一の救いは彼がメタルバンドで活動してて、東名阪ツアーを積極的に行っていたから東京に友達がいた事。

頼る友が逃亡先にいるのに、懐に拵えた小銭で一人旅と同等の金銭感覚で支払いを続けてたから、金が底を突き始めた。

変な所がプライドが高く、誰にも頼らずにフラフラしてた先で炊き出しに並びだしたが、世捨て人には世捨て人の縄張り意識が存在することに嫌気を差しホームレスだけどホームレスを断念。

ポケットに残った小銭で缶コーヒーを買うか東スポを買うか迷った挙句、東スポを購入。しかしこれが功を奏した。

東スポの求人欄に角海老の風呂屋が掲載されていた。
職無し、家無し、金無し、あるのは元気のみ。
マッキーは新宿の泡風呂屋でボーイとして働きだした。

日経平均は余裕で三万円台、主婦が住宅や土地を転がしていた時代に経営者の端くれだった彼は不景気の煽りを喰らった東洋一の繁華街で手腕を発揮した。

風呂屋の五千円割引券で粉飾決算し、売り上げを横領して日に日当以上の酒代を稼ぎ、歌舞伎町の雑居ビルでロックスターを夢見ていた戦友の店で浴びる酒。

足繫く通っていた飲み屋では他店舗の飲食店のオーナーや従業員とも顔馴染みになり、行く店も増え、飲み友達も増え、借金踏み倒して逃げてきた人間とは思えない充実した日々を送っていた。

後に彼が東の都で一国一城の主となる場所で仕事終わりに飲んでいると耳寄りな情報を仕入れた。

「え、そんなに安いなら俺でもできるやん!!」
――眠れる獅子が再び動き出す。
しかし、それが抑制効かぬ始まりの鐘を鳴らしてしまった。

続く

※三部作になるかもしれませんし、もっと長いかもしれません。
 書き手も終わりがみえないです。



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