「逆・タイムマシン経営論」読書メモ
参考になった部分などのメモです。
マジックワードや雰囲気などに流されずに、できるだけ根本、本質は何か?ということを探れるようにしたいですね。
タイムマシン経営がアメリカなどの日本より少し先のモデルを日本に輸入することに対して、逆・タイムマシンは、過去の雑誌や当時の流行りを今振り返ってみると気づくことや本質が浮かび上がってくる、というものです。
変化を振り返ることによって初めて不変の本質が浮き彫りになる。と。
第一部 飛び道具トラップ
ちょっと前だと「サブスク」「オープンイノベーション」など、今だとAIやDXとかですね。これだ!と飛びつくけど、表層上だけのアプローチをしてもうまくいかない事例が多いなども紹介しています。
サブスクでは、アドビが大きく戦略転換して成功した事例がサブスクの最初という感じです。パッケージ販売を転換して、月額制にしました。
この成功に続こうと、サブスクを始める企業が増えましたが、静かに撤退していく会社も多かったです。
過去にもERP導入などの流行りが出たもののうまく行かない企業は多かったです。「戦略が先、ITは後」という順番が大切なのに、その辺を間違えるとうまくいかない、と多くの事例を元に解説しています。
成功した企業と失敗した企業を対比しながらの説明なので、とても分かりやすいです。
なぜこう言った「飛び道具トラップ」が作動するのか?
①「同時代の空気」の土壌の上で
②人々の耳目を引く成功事例が生まれ
③それを「飛び道具サプライヤー」(メディアやベンダー)が煽る中で
④同時代のノイズが発生(これからは!業界を一変!秘密兵器!乗り遅れるな!など)
⑤それによって、「飛び道具」が過大評価される。
⑥関心を持つ人々による事例文脈からの「文脈剥離」が起こり
⑦「文脈無視の強制移植」が行われ
⑧「手段の目的化」と「自社文脈との不適合」により逆機能が起こる
このトラップに陥りやすい人は、
①情報に対する感度が高い人
②考えが浅い人(もしくは物事をじっくり考えるゆとりがない人)
③せっかちですぐに成果を出したい人。
すぐに役立つものほど、すぐに役立たなくなる
「情報の豊かさは注意の貧困を生む」
ーハーバード・サイモン(ノーベル経済学賞受賞者)
飛び道具トラップを回避するためには
①自社の戦略ストーリーを固めること(自社文脈の理解)
②事例文脈の解読
③飛び道具を抽象化して論理でその本質を掴む(=要するにこういうこと)
④自社文脈に位置付けて思考実験をする、その上で最終判断
われわれが歴史から学ぶべきなのは、人々が歴史から学ばないという事実
第二部 激動期トラップ
いつの時代も「今こそ激動期!」「これまでの常識は通用しない!」というように危機感を煽るけど、実際のところは?というトラップです。
自動運転が50年前から言われていたこと、水素エネルギー、とかの事例を紹介。
よく大変革で取り上げられる1900年→1910年で馬車だったのが、10年後にはT型フォードだらけになったニューヨークでの事例も、馬車で道路が舗装されているという下地があったからこそ、あそこまでスムーズな移行ができた、と説明。
情報革命!インターネット革命!と言いながらも、1日で世界がガラッと変わるような革命は滅多にない。技術革新がどれほど非連続なものであっても、人間の需要は本質的に連続的な性格を持っている。と。
この技術革新があってから、そこに人々の需要が追いつくまでにはタイムラグがあって、そこを埋めるサービスなどは良さそうですね。
今後も技術のスピードが早ければ早いほど、そこに追いつけずに置いてかれる人は多そうで、そこの隙間をどう埋めるのか?というところにはビジネスチャンスがあるように感じます。
「問題解決が過剰になっている」ということや、「そもそも不要だという元も子もない事実」「非連続な技術に対する不安」などはこのトラップにはまらないようにする上での大事なキーワードですね。
忘れられた革新的製品事例
・セグウェイ(そもそも不要だった、、?)
・3Dプリンター(別に作りたいもの、、、ない。大量生産に不向き)
・ランドロイド(ボタン1つで洗濯物の折りたたみまでできる!開発に失敗)
・Googleグラス(プライバシーの心配、問題解決の押し売り。別にスマホで間に合ってます)
他にも、テンゼロ(商社3.0とかインダストリー4.0とか)、情報革命!とかのマジックワードは結局そんな大きい「革命」というようなものにはならない。シェアリングエコノミーもマジックワード。そこにつけ込む商売も多く、気をつけないといけない。
これらの激動期トラップを回避するには「文脈思考」が重要。そのためには、これらの激動案件を自分自身に関連付け、「自分ごと」として考えてみるのが重要。
大きな変化は振り返ったときに初めてわかる。
第三部 遠近歪曲トラップ
遠いものほどよく見え、近いものほど粗が目立つ。という認識バイアス。
シリコンバレー礼讃や、アメリカから見た過去のJapan as No.1など。
少子高齢化は今はピンチと言われているが、50年前までの日本では、人口爆発で大ピンチと言われていた。
とか。
結局、いつの時代も浮ついたワードや、今こそ激動期!というような形になるし、技術によって世界が変わる!などとも言われているが、実際はそこまでではなく、あくまで連続的なものとなっているものが大半、ということです。
そういった煽り方などは今後も出てくるのでしょうが、その中で、どれだけそういった表象の本質を捉えられるのか、しっかり骨太に考えられるのか、ということが重要になってくるのだと思います。
よりファストになっている時代の中で、どれだけスローに、より深くじっくり考えられるのか、これらのトラップに引っかからないように気をつけていきたいと思います。