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温度で思い出す記憶

気温や体温で思い出す記憶があります。熱を出して朦朧としている時に見えたミニチュアTHE BLUE HEARTSのライブ、氷点下の冷凍室で切った氷筍、真夏の太陽の元で買いに行った親父の酒、寒い夜に悴んだ手で洗った水槽。温度や匂い、音などの感覚が、記憶を思い出させてくれることがあります。

夕方、図書館に本を返しに行く時、外は生ぬるい暖かさ。寒くもなく暖かくもなく、生暖かい感じがしました。私はこの生暖かい温度で必ず思い出す記憶があります。それは、富山での学生時代に捕まえに行った、ホタルイカ掬いのために集まった講堂の記憶です。

春の夜、大学の講堂に集まって、何台かの車に分乗して近くの海に出かけます。ホタルイカは名前の通り、蛍のように光るので、真っ暗な海では幻想的な光を放ちます。あいにく、私が行った時はホタルイカの身投げと言われるような、大量発生の時ではなかったので、数匹、蛍がフラフラと飛んでいるようにホタルイカが泳いでいました。

タモと言われる水中用の網で捕まえるのですが、数人で出かけ数時間で数匹しか捕まえられなかったと記憶しています。春の夜、海はとても冷たかったです。

その時に集まった講堂の温度が生ぬるい暖かさだったことを思い出しました。何かハプニングがったわけでもサプライズがあった訳でもなく、ただ皆んなで集まっただけの記憶、どうして必ず思い出すのか分かりません。

人は全てを記憶しているが思い出すことが出来るのが、ほんの一部分だと聞いたことがあります。生温い講堂の思い出は、何気ない記憶に温度が絡むことで思い出しやすくなっている記憶なんだと思います。

何かを暗記する時の、ひたすら書くという行為は触覚で、語呂合わせで覚えるという行為は聴覚や視覚で、感覚から記憶を思い出しやすく、整理する行為なのじゃないかなと思いました。何かを覚えたい時に、どうやったら思い出しやすいか考えながら覚えてみようと思います。

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とーちゃんの記憶装置
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