貸出金利について2~個社別取引採算:RACAR・RA-ROA
前回記事もご参照ください
RACARレイカー(Risk Adjusted Cost And Return)についての説明
RACARとは?
RACAR(Risk Adjusted Cost And Return) とは、「リスク調整後コスト&リターン」の略であり、金融機関において、リスクを考慮した収益性を評価するための指標です。これは、銀行が貸出や預金の業務を通じて得た粗利益から、経費や信用コストを差し引いて算出され、実際の利益をより精緻に評価します。
RACARは、貸出や預金の運用効率やリスク管理に重要な役割を果たし、銀行の収益性とリスクをバランスよく評価するための指標となります。
RACARの構成要素
RACARを理解するために、その構成要素を確認しましょう。RACARは以下の要素から計算されます。
粗利益
銀行の業務から得られる収益の総額。具体的には以下の項目から構成されます:貸出金収益: 貸出から得られる利息収益。
預金収益: 預金から得られる収益(特に預金運用によるもの)。
役務収益: 銀行が提供するサービスから得られる手数料や収益。
外国為替収益: 外国為替取引から得られる収益。
経費
銀行の運営にかかる費用です。これは、従業員給与、事務費用、ITインフラ維持費などの運営コストを指します。信用コスト
貸出先が返済不能になるリスク(信用リスク)を反映したコストです。具体的には、貸倒引当金や回収不能リスクを考慮した費用となります。
RACARの計算式
RACARは、粗利益から経費と信用コストを差し引くことで算出されます。具体的な計算式は以下の通りです。
RACAR=粗利益−経費−信用コスト
粗利益: 貸出金収益 + 預金収益 + 役務収益 + 外国為替収益
経費: 銀行の運営費用。
信用コスト: 貸倒れリスクなどの信用リスクに関連する費用。
RA-ROAレイロア(リスク調整後総資産利益率)
RA-ROAは、RACARをもとに、貸出残高に対してリスクを調整した収益性を評価する指標です。以下の計算式で求めます。
RA-ROA=RACAR÷貸出残高×100
さらに、RA-ROAは粗利益率、経費率、信用コスト率に分解して表現できます。
RA-ROA=粗利益率-経費率-信用コスト率
粗利益率: 貸出残高に対する粗利益の割合。
経費率: 貸出残高に対する経費の割合。
信用コスト率: 貸出残高に対する信用コストの割合。
この式により、銀行が貸出や預金業務を行う際に、どれだけ効率的に利益を上げられているか、またどれだけのリスクを負っているかを評価することができます。
計算例
銀行のある部門で次のような数値が与えられているとします。
貸出金収益: 1億円
預金収益: 5000万円
役務収益: 2000万円
外国為替収益: 1000万円
経費: 8000万円
信用コスト: 3000万円
貸出残高: 50億円
この場合、まず粗利益を計算します。
粗利益 = 1億円 + 5000万円 + 2000万円 + 1000万円 = 1億8000万円
次にRACARを計算します。
RACAR = 1億8000万円 − 8000万円 − 3000万円 = 7000万円
最後にRA-ROAを計算します。
RA-ROA = 7000万円 ÷ 50億円 × 100 = 1.4%
このように、RA-ROAは1.4%になります。
RACARとRA-ROAの意義
銀行員にとって、RACARやRA-ROAを理解することは、収益性とリスク管理のバランスを正しく評価する上で非常に重要です。単に収益を追求するだけでなく、リスクを適切に評価し、実際のコストや利益に基づいて判断することで、より健全で持続可能な銀行運営が可能となります。
RACARを使うことで、特定の部門やプロジェクトがどれだけリスクを調整して効率的に収益を上げているかを詳細に分析することができ、将来的なリスク管理や収益性向上のための戦略立案に役立ちます。
まとめ
RACAR(リスク調整後コスト&リターン)は、銀行が貸出や預金業務において実際の収益性とリスクを評価するための重要な指標です。粗利益から経費と信用コストを引いて算出され、これにより銀行のリスクとコストを調整した実際の利益が明らかになります。さらに、RA-ROA を用いることで、貸出残高に対してどれだけ効率よく利益を上げているかがわかります。これらの指標を活用することで、銀行は健全なリスク管理を行いながら、収益性の向上を図ることができます。
”RACAR”は(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)の登録商標)です。
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