2020年民間金融機関の無利子融資(ゼロゼロ融資)の時の、銀行員としての振り返りと思い出
無利子融資が出た時の当時の振り返りを、思い出せる限り時系列で作成してみました。
2020年4月下旬 コロナ無利子融資が出る噂の段階
コロナ無利子融資なるものが出るらしいとの噂が出るが詳細全く不明。お客さんから複数問い合わせが来るが、詳細不明のため現状では分からないと回答する。いくつかのお客さんは何でわからないんだと怒り出すが知らん。
2020年5月1日 経済産業省で無利子融資が正式発表されるも・・・
ゼロゼロ融資のこれといった情報がないまま5月迎える。経済産業省で無利子融資が正式発表されるも、これまた概要のみで具体的な申込方法は不明である。制度融資なので、地方自治体からの制度融資の発表がなければ申し込みができないためである。だが急遽ゴールデンウィークに休日相談会開催の通達・・・
https://meti.go.jp/press/2020/05/20200501008/20200501008.html
通達によれば、3,000万円(後に金額拡充)を上限として無利子・無保証料となるとのこと。要件は法人15%前年同月比減収、個人は5%減収。SN(セーフティネット)申請は金融機関代理申請で可となり、申請時の試算表等のエビデンスも不要となるとのこと。
セーフティネットは4号(売上前年同月比▲20%減収)、危機関連(▲15%減収)、5号(3か月平均▲5%)減収。危機関連は後に無くなるので、これが後に4号と危機関連の上限枠問題が2023年伴奏支援特別保証創設により勃発するのだがこれは後述するかもしれない。
2020年5月のGW
いくつかの金融機関でGW休日相談会開催されたらしい。申込方法が発表されておらず、よくわからない状態だったが、数人程度の来客あり。とりあえず名前と電話番号を控える。据え置き5年使いたいとか言い出す(その当時は、「何言ってんだこいつ・・・」って感じ)客に、据置5年はやり過ぎじゃないのと釘を刺しておいた。
2020年5月7日 やっと都道府県による制度融資要綱が発表
都道府県による制度融資要綱が発表される。これにより制度融資として無利子融資の申し込みが可能となった。ここからが地獄の始まり。金融庁も原則取上げすべきというし、各金融機関の姿勢も原則取上げ方針とのこと。
2020年5月中旬 無利子融資管理リストを全先電話
いつの間に無利子融資管理リストなるものが出来る。法人融資先・純預金先にも全先そのリストを当たれとの本部指令が飛ぶ。命令通り皆動く。顧客の反応は当然に無利子なので、概ね「とりあえず借りとくかな」という好感触を得る。全先というわけではないが、7割方借りたのではないか。
既存融資先を中心とした無利子リストと、新規来店客の捌きがきつくなりだす。特に業歴の長くてしばらく借りていないかったお客さんは、保証協会の性質上古い会社謄本まで調べなければならないのでそれが大変だった。
本部通達により、原則金融庁方針通り全部取上げ方針で考えることと、試算表も収支予定表も不要が明記される。つまり、原則的に無資料(協会も同様)。稟議意見も適当で「SN4号認定、売上減少率▲20%超。コロナの影響を受けており取上げ願いたい」程度で保証協会取上げしてくれた。据置についても、協会担当者によると3年でも5年でも良いとのこと。据置なんてリスケ以外で使ったことがないので、この融資はある種斬新且つヤヴァいと感じた訳である。
2020年5月下旬 無利子融資、初めての実行
無利子融資、初めての実行が行われだす。5月は本当にコロナの影響を受けて前年減収となった先が多いような気がする。一方で6月以降は、たまたま前年減収▲15%超になる月を狙って無利子を借りたお客さんも多かったように思う。
2020年6月~8月 毎日20時超えで勤務
あまり記憶がない。無利子融資を捌くために毎日午後8時まで残っていた。金額の大小関係なくひたすらやっていた気がする。最小金額の500千円から、最大金額の30,000千円まで。個人的な実行額は5オクを超え、新規先は10件越え。
今考えると、ほぼ無資料で稟議意見も「コロナの影響を受けており~」しか書いてなかったのに8時まで残るって異常なほど件数が来ていたと思う。 7月に無利子融資金額が30M→40Mに増額になったがこちらで追加融資もちらほらと。
2020年9月 無利子融資も一服
無利子融資も一服し、そろそろ落ち着きだしたころだった。むしろコロナの影響が希薄で、何とか▲15%減少にならないかと、金融機関担当者と社長が画策していた時期かと思う。競合他行で月商を偽装してSN申請したとの噂が駆け巡るが、絶対にやらないようにとの御達しが出る。
実質的にリスケとなりそうな危うい先にも、むしろリスケになる前に据置使って無利子融資を突っ込んでいたし、リスケ先や、破綻懸念先等もこの時期は本部承認後に無利子融資は実行していた。実質リスケとしての資金支援だった。
2021年2月 +20M増額
国準拠が40M→60Mとなる。+20Mをやれという本部指令が出て、また無利子融資リストによる電話セールスが開始される。
2021年3月 平常化
もうこのころになると平常化。そして実質無利子が3月末を以て終了が発表される。内心、本当に終わるのかなと思っていたのだが、何らの追加措置が取られることもなく4月を迎えあっさり終了してしまう。
2021年5月 各金融機関の決算の発表
各金融機関の決算の発表が新聞で報道される。2021年3月は近年まれに見る好業績だそうだ。そりゃそうだ、金融機関シェアも何もかも無視して無理して無利子融資をかっさらったのだから。 いつかこの無利子融資「爆弾」は3年後に爆発するだろうな、そうこのころ、なんとなく思っていた。
2023年の今
無利子融資を借りたお客さんは3パターンあると個人的には考えている。①余裕はあるが「とりあえず借りておいた」②コロナの影響を受けたので借りた③コロナ関係なく実質的にリスケ予備軍(もしくはリスケ以下)だったが借りた先 この3つに分かれる。
そして3年後の今、少しづつ爆発し始めている。当然、③のリスケ予備軍から死に始めている。酷い所では無利子融資を借りた次の年から元金返済猶予のリスケをしているところもあるが、いよいよ税金も払えずに破綻していくところが多発している。
②コロナの影響を受けたので借りた先も、3年経過して もはやwithコロナの世の中で、それって本当にコロナなのか?という先もちらほら(飲食に多い)。①のとりあえず借りたの先で、余力があり返せる先はいいが、何か勝手に設備投資したり新規事業をやりだして失敗するケースは見てらんない
そして、ゼロゼロ融資の借り換えとして伴奏支援特別保証が出来て、今そのリストを潰しこんでいる・・・
to be continued…
(伴奏支援についても余力があれば追記します)
2023年2月民間ゼロゼロ融資のコロナ借換保証(伴走支援型特別保証)
当時の無利子融資関係のツイート
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