夏季学生にニワトリの胚の観察について教える
導入:
2022年の夏に臨海研究場で大学院生向けに発生学実験のデモストレーションを行いました。彼らには実際の卵を見てもらいながらニワトリとゼブラフィッシュの胚について説明しました。今回はその時の活動の様子を解説します。と、その前にすこし前置きを。このnoteはYouTube動画版の「Summer Internship Course 2022」の英語台本作成のための日本語メモがもとになっております。動画は以下の画像をクリックするか、このリンク(https://youtu.be/N7Y_6jXTc7Y)をクリックすると飛んでゆけます。内容を事前に文字で確認したい人や、文字ベースのほうが理解が早いという方はこのnoteを参考にしてください。しかし、動画のほうが圧倒的に情報量が多いのでそちらをご覧になられることを強くお勧めします。それでは、続きをどうぞ。
ニワトリを用いた理由:
日ごろ、私たちの研究室では金魚の胚を研究材料として使っています。しかし、金魚の受精卵は年中とれるわけではありません。そうなると、臨時に訪れた学生さんたちに魚類の胚発生について知ってもらうためにゼブラフィッシュの受精卵を使います。この魚は条件が整いさえすればいつでも卵を産んでくれるので非常に便利です。違う温度条件で管理しておけば、異なる発生段階の胚を観察することができるので発生学の教材としてはうってつけです。
しかし、進化と発生の関係についてイメージを養ってもらおうとすると、魚類の胚だけでは不十分なのです。なので、脊椎動物の進化発生学を学んでもらいたい私からすると、「もう一つ魚類とは全然違う胚を見てもらいたい」と思うわけです。特に、発生生物学の教科書の中に登場する脊椎動物の胚発生については実際の生の胚を見て学んでもらいたいと考えていたのです。
そして、いろんな候補の中からニワトリの胚を見てもらうことにしました。理由は簡単に手に入るからです。サマーインタンシップの学生さんたちが来られる3日ほど前に有精卵を購入して準備しておきました。我らが臨海研究場の周りは超田舎なので養鶏業者の人たちもたくさんいるのです。なので、有精卵を販売している業者の方もおられるので簡単に手に入るのです。こちらの宜蘭臨海研究場の周辺の様子に興味のある方は以下のリンクも参考にしてください。
準備:
さて、学生実習向けに卵を準備します。買ってきた有精卵はアルコールで消毒して、卵ケースにセットします。そして、セットしたときの上側に鉛筆でしるしをつけておきます。こうしておくと、観察するときに胚の位置が容易にわかります。この鉛筆でしるしをしておいたところに胚ができるのです。
そして、34度に設定されたインキュベータに入れした。本当はもう少し高くてもいいのですが、我々の研究室での本来の実験の都合上、このインキュベータは34度に設定されているので、この温度で卵を温めることにしました。そして、2日から3日温めておいた卵を学生実験室にもっていきます。
さらに準備として事前にいくつかサンプルを作っておきます。ちょっと、デモストレーションをするときに失敗してもカッコ悪いので練習する意味もあります。このように、ゼブラフィッシュの卵とニワトリの卵を並べて準備しておきました。
実際にデモストレーション:
はい、講義が一通り終わりました。これからニワトリ胚の取り扱いについて説明をします。注射針やハサミなどを使う作業です。なので、安全についての説明をしながら作業を進めてゆきます。
上手に殻を開けるとこのように胚を観察することができます。そして、もう少し詳しく観察したい場合には墨汁を胚の下側に流し込みます。こうすることで白い胚をより詳しく観察することができます。一連の詳しい技術についてはまたのちに、ほかの動画で説明しますので、お待ちください。もし、今日がある方は、以下のリンクからから私たちの研究室のYouTubeサイトに行っていただいて登録して通知設定をONにしてお待ちください(おそらく気が付いたころに新しい動画がアップされます)。
興味を持った学生さんが次々にやってまいります。今回は詳しい観察のための時間がありませんでしたので、あくまでも興味のある学生さん限定で胚の取り扱いを経験してもらいました。
こちらにニワトリの骨格標本を置いておりますが、これは、この丸い卵からどのようにして複雑な形をしたニワトリが生まれてくるのかを考えてくれる若い世代が出てくれればいいなあと思ってこちらに置いている次第です。
そして、殻を開けた卵を顕微鏡の下で実際に観察してもらいました。ゼブラフィッシュの胚とニワトリの胚の違いを見て何か感じ取ってくれれば、私としてはうれしい会議りです。
終わり
はい。無事、ケガをする人を出すことなく、夏の実習は終了いたしました。主任やほかの先生方、この企画にかかわってくださった皆様ありがとうございました。この今回、この企画に参加した学生さんたちも多くを学ばれたことと思いいます。私のほうでもまた、次回のために、よりよい実習の内容を考えていきたいと思います。それでは。また。