御伽噺 (縁は○)す○を廻る因果(○はワ)
そこは不思議な世界。
不思議の国。
御伽噺の国。
その国の人々は毎日を懸命に生きています。
良い事ばかりではないが、決して悪いことばかりではない。
優しい人もいれば悪い人もいて、それは主観で見る角度が変われば一変して…。
そんなことに気づいたり、気づかなかったり。
誰かと幸せを分かち合えたり
分かち合えなくて孤独だったり
勇気を持って踏み出したり
何にもする気が起きなかったり
どんな日々だって振り返ってみれば大切な時間、そんな幸せの国でした。
………
今から80年ほど前、大きな戦争があった。その戦争でこの国は敗れA国からの占領政策を受けていた。そんな最中でT銀行で銀行強盗殺人事件が起こった。
事件の経緯はこうだ。
T銀行に国の防疫班の腕章をつけた者がやってきて、近くの家で集団赤痢が発生し、感染者が銀行内に入った。A国の占領府が消毒に来るがその前に予防薬を飲んでもらいたい、と言う。
その薬を飲んだ職員+用務員一家16名のうち、12名が死亡。
遅効性の薬を使い犯人自らが実際に飲んだことで職員は信用した。
薬の使用に非常に長けた者の犯行であることが疑われ、旧陸軍人体実験部隊のス○なども疑われたが最終的に人相描きの酷似から画家のヒラサ○が逮捕された。
ヒラサ○はその後生涯を独房で過ごすことになるが、その間中ずっとずっと自らの無罪を主張していた。
獄中でも絵を描き続けた。
………
この事件は非常に多くの人生に影響を与えた。
彼の家族は姓を捨て素性を隠して生きていくことになった。
無罪を主張する団体をヒラサ○の養子が設立し、長い時間をかけて闘った。その中で自らの息子との時間を犠牲にしてきたことに気付き涙し、翌年に亡くなった。
彼の愛人は「彼を愛しているからこそ」、と何も主張することはなかった。
ス○の北に位置する都市の名を冠する小説家もこの事件を題材に小説を書いて彼の無罪を主張した。
クマの井を姓に冠する者の子孫も映画監督として彼の物語を描いた。
家紋に亀甲紋と花菱を持つ者が弁護士として彼に寄り添った。その者は晩年のヒラサ○を普賢菩薩がおいでになった、と言ったという。
………
ス○郡、その国のほぼ中心に位置する湖の力は絶大で様々な因果がそこに収束して繋がっていく。
神代の時代、ス○にはタケミナカタという者がやってきた。彼は亀甲紋の家紋の一族で、スクナヒコナという役職を持っていた。スクナヒコナは薬学の神で呪術にも傾倒していた。
その技術は引き継がれ戦争中の人体実験部隊にも引き継がれたのだった。
タケミナカタの子孫はス○氏とされた。
タケミナカタを信仰する武士の集団にス○神党という集団がいてその庶流にヒラサ○氏がいた。
その後タケミナカタはタケダに信仰された。そのタケダに仕えた一族の中にクマの井という一族がいてス○の北に城を持った。タケダの家紋は花菱であった。
中世、タケミナカタは普賢菩薩の現世での姿とされた。
多くの者達が自分の意思で生きているようでその国の中心に位置する湖の力で動かされてきた。
湖の神は一体この因果の果てに私たちを何処に導くのだろう?
そこで私たちは何を見るのであろう?
御伽噺は続く。
画像は http://galleryten.org/ten/?p=10279 より
どうか安らかに。