香りと記憶、10年の片思い
ごきげんよう諸君、まいどおなじみきぬです。
普段は平沢進関係のnoteを書いていますが。今回はちょっと別のジャンルのお話をさせてください。
めちゃくちゃキモチワルイオタクの話です。
私は高校生の頃にはすでに手遅れなレベルのオタクであった。アニメも好きだったが、マーベル作品などの映画作品も大好きだった。もちろん映画館にもよく足を運んだ。友人と一日に三本見ることもあった。
もちろん映画館には映画を見に行くために行っていたが、もう一つ目的があった。
それは映画が始まる前に、映画鑑賞の際に気をつけることのムービーの中にあった映画の撮影、録音の防止のための映像、いわゆる「映画泥棒」のムービーだ。
ぬるぬる踊るカメラ頭の男に、それを捕まえるパトランプ頭の警備員。マスコットのようなビジュアルでありながら、スーツでびしっときめたスタイリッシュなスタイル。いままで出会ったキャラクターのどれとも違う個性的ないわゆる異形頭と呼ばれるデザイン。
私は彼らに心を奪われていた
わたしは昔から「ヒトでないもの」「人知の及ばない存在」というものにあこがれるような子供だった。しかしここに異形のもの、人外というとんでもねえジャンルがやってきたのだ。まさに黒船来航、文明開化、ざんぎり頭だ。
狂ったように彼らを推していた。東京でカメラ男とパトランプ男がPRのために映画館に出没した、なんて情報を見た日には涙でまくらを濡らしたし、写真集も買った。ガチャガチャなんか見つけた日には全種集まるまで両替機とガチャガチャコーナーの反復横跳びだ。
しかしここ数年は、というか今のTwitterアカウントを作ったころには、「異形頭が好き」という性癖だけ残して、映画泥棒への熱は冷めてしまっていた。カメラ男のTwitterもフォローせず、情報収集も怠る日々。コラボカフェもドンキコラボも見逃した。
しかし2023年5月19日、そのツイートは現れた。
「NO MORE映画泥棒」の「カメラ男」と「パトランプ男」をイメージした香水が発売
気でも狂ったのかと
確かにここ最近「推し香水」だの「キャラクターイメージの香水」だの推しに匂いの概念がくっついてきていた。フォロワーも推しの香水に狂っていたので存在は知っていた。
しかし映画の前の短い動画に出てくる二人にイメージもなにもあるか?とは思った。しかも説明文もなかなかの怪文章。買っても自分のイメージしてる二人の香りとかけ離れていたらどうしよう。とも思った。
自分にしては悩んだ方だと思う。二週間くらい悩んだ。
しかし一度思い始めるとこのことしか考えれなくなるタイプの人間なので四六時中香水の事を考えていたし、この時期に回ってた2018年に行われていた映画泥棒カフェの動画でカメラ男がするっと相席してくるチャライケメンムーブかましてくる動画で短大生の私が顔を出すのだ。片思いの相手の香りくらい教えてくれてもいいじゃないか、と。
6月1日に「岸辺露伴ルーブルへ行く」を見に映画館に行った。もちろん映画泥棒の動画も流れた。そこで爆発してしまった。
自宅に帰って香水からグッズまで一通り買ってしまった。後悔はしていない。金の問題は結局どうにかなるが、買い逃したグッズは二度と手に入らないのだ。
その2日後の6月3日、来た。
キモチワルイ香水の感想である。この分からもわかるように、私は重度の夢女子なのである。
しかし画像や映像の視覚での情報しかなかった推しに、「匂い」という概念が発生したことにより、推しに「奥行き」が発生したのだ。推しが三次元になったのだ。やはり推し香水というものは人を狂わす。
香水とグッズが入っていた箱には見覚えのない封筒が入っていた。
その封筒には
「NO MORE映画泥棒」香水発売イベント特典券5枚
その日のうちに高速バスのチケットを取った。
ライブの時でもこんな素早くない。この時が一番気が狂っていたのかもしれない。しかしどうしても一目見たかった。写真も撮りたかったのだ。
そして来る7月2日。私は高速バスで東京に来た。
天気はいいが、Twitterの調子は最悪だった。いくら更新しても自分のツイートしか流れない。しばらくしたら自分のツイートすら流れなくなった。
しかしそんなことはイベントには関係ない。なんとか連絡がついたフォロワーと会場に向かった。
会場には想像以上に人がいた。150人以上はいただろうか。
そして自然発生した列に組み込まれ、そのまま入場。そこで恐ろしいことが起きた。
最前ドセンターだったのである。
こんなつもりじゃなかった。こんなつもりじゃなかった。
中間くらい位置からワクワクしながら写真撮影の列で待機するはずだった。
このままでは目の前に推しが来てしまう。
しかし無慈悲に時間は来た。
ステージにカメラ男とパトランプ男が上がってきた途端会場中から黄色い声が上がった。
キレのあるダンス、喋らないけど動きで饒舌に語る二人、本当に来てよかった。
そして撮影会の前に会場設営のため、一度カメラ男とパトランプ男はステージからはける、と司会のお姉さんが言った。
なぜかカメラ男が観客の方に近づいてきた。
そして私の隣の人に向き合うとなんと握手をしたのだ。
ファンサがすぎるぞ。かんべんしてくれ、握手いいな~などと思っていたら
カメラ男は私の方を見た。
そして手を差し出してきた。
握手をさせられたのだ。
手はすべすべしてて、少し柔らかくて、ちょっと温度が低かった。
この感動を伝えたくて、そして私がこのことを忘れないようにこのノートを書いた。
好き
この後の撮影会では特典券の枚数分だけ写真を撮れた。
わたしは一緒に来てくれたフォロワーに2枚上げたので3枚とることができた。しかもリクエストも聞いてくれた。
「ノーマル決めポーズ」「指ハート」「いちばんかっこいいポーズ」の三枚で撮ってもらった。
この前に二人は香水をかけてたので当然なんだが、二人からはイメージ香水の香りがした。
つまりこの香水はイメージ香水から「本人の香り」にランクアップしたのだ。
人間の五感の中でも嗅覚は、他の物より記憶との結びつきが強いという。
きっと私はこの香水のにおいをかぐたびにこの日のことを思い出すんだろうな、と思う。