魔女・サキュバス創作一覧
・この村の中には魔女がいる
キーワードを持って「特定の人間にすこぶる優しい異能の女性」が登場したのはおそらくこれが初。この頃は自分の作風について深く考えたことがなかったので、あらゆるところが適当であり、これを今改めて読み返す価値は、少なくともぼく個人としては無いように思う。歴史的に意味がある感じの作品。
・尽くす系ニマド
現在の作風に至る明確なスタート地点。バス旅行でワイナリーに向かう道中、突然この話を思いついたことを今でも覚えている。お土産にしたワインは甘くておいしかった。
当時のぼくはこんなことを考えた。チート系ハーレムラノベが流行ってるらしいけど、どうせならハーレムを構成するヒロインにチート能力を与えて、そのヒロインに主人公の全てを助けてもらえば、べつに主人公自身は無能のままでもいいんじゃね? 無能でも幸せになれる究極のクソラノベを作ろうぜ!! ……と意気込んで書いた結果が本編を見てもらっての通りになり、自分で自分に愕然とした、そんな作品。
また、おそらくこれが人生で初めて投稿した「5万文字以上の短編作品」であるような気がする。間違ってたらごめん。
本作のあらすじとしては、精神的疲弊を理由に仕事を辞めた男が、ニマドという魔女に気に入られて生活を共にする話。魔女のスーパーパワーがあれば、疲弊した人間でも幸せくらい好きなだけ手に入れられるよなぁ! というつもりで書き始めたのだが……。
詳しくは本編を読んでみてください。長いので最悪斜め読みでもいいです。
・眠姫ザロウと漆モズ
ニマドのリベンジを試みた作品。今作から「魔女」が明確にキーワード化してくる。
あらすじとしては、同じクラスのザロウという女子(魔女)に密かに好意を抱く男子が、昼寝中の彼女に出来心でキスしてしまったことからお付き合いを始める青春(?)モノ。
前作の主人公が重すぎたので、今回の主人公はべつに精神的な疲弊は背負ってない感じの学生にするか! これで上手いこと幸せになるだろう! ……と思ったのだけれど、よく考えてみると、寝てる女子に勝手にキスする男はだいぶヤバい奴だ。ということで、そのあたりから歯車が狂い始めた。
今になって思えば、本作はシリーズ中でも珍しい「終始「魔女視点」の作品」である。
・oneフォルダsevenシンズ
従来の「魔女&男の1:1で展開するストーリー」から抜け出して、人間の男女が主役となり、魔女は脇役として登場する作品。そうしてみた結果、本作には一気に三人もの魔女が登場する。
あらすじとしては、浮気性の男と、その幼なじみかつ友人である女の間に起こるいざこざを巡るもの。魔女の「泥を人間に変える魔法」を借りて浮気相手を泥から生み出す男と、そこに倫理的な難を唱える女の論争が主な見どころとなっている。
この頃になるといよいよ作風が定まってきているように思う。作者の闇はとどまるところを知らないが、そもそもとどめる必要なんてないんじゃないか? と開き直っていったのだ。
・星を数えさせるためのハイエ
親族には見せられないあらすじ第一位の作品。形式は再び魔女&男1:1に戻ったけれど、その全容は過去最高に下品かつ過去最高に暗い。読み返すと自分でも「これ書いた時の自分大丈夫か……?」と思う。
あらすじとしては、女性を性欲処理の道具として扱いたがっている男と、突然彼の前に現れてはそれを了承する魔女の話。しかし、じゃあ趣味の悪いエロ漫画みたいな話が展開されていくのかというと、主人公の男は自らの欲求から来る罪悪感に苛まれてから回りし……と、実際の内容は明後日の方向にある闇へ闇へと向かっていく。
本作を期に自分の中で何かが吹っ切れたのか、「魔女」というキーワードの出番はここで終わり、次作移行からはより性的な側面にも対応した「サキュバス」が書かれることになる。
また、一応この作品がシリーズにおいて初めての、いくらか前向きな気持ちでラストを迎えられた作品である……とぼくは思っている。
・アンダーライン×アンダーライン
ニマドから始まった「魔女」の系譜を継ぐ概念「サキュバス」が登場する作品。サキュバスと人間が共存している現代社会を書くために、1:1の形式と複数人系の形式をハイブリッド化させており、本作にはいきなり複数名のサキュバスが登場すると同時に、メインのサキュバスが一人明確に決められている。
あらすじとしては、サキュバスと親密な関係になることに憧れている男のもとへ、「どんな願い事でも100個聞くから、それが終わったら結婚してほしい」と言うサキュバスの「夢子」がやってくる話。夢子を中心としながら主人公はほかのサキュバスたちとも関わって行き、そして刻一刻と、100個目の願いが達成される日は近づいていく……。
本作は、サキュバスが魔女の系譜にあることをしっかり証明すると同時に、シリーズ内で初めて連載形式を用いて投稿した作品でもある。また、いろいろと設定が手探りなまま執筆した作品なので、後々のシリーズ作品と矛盾が生じている可能性は大いにあるけれど、気にしてはいけない。
なお、本作に登場する「夢子」のネーミングは友人から募ったものなのだけど、その友人には夢子をいったいどういった扱いのキャラクターにする予定だったのかを伝え忘れていた……という大事故エピソードがある。本当に悪いことをしてしまったと思う。
・カチリカと過ごした夢の中
サキュバスシリーズ二作目……なのだけれど、前作と今作の間には、書こうと試みたものの結局はボツになったサキュバス系作品がゴロゴロ存在しているので、作者としては「まだ二作目……?」という感じがする。
あらすじは、エロ目的で魔界旅行に出かけた青年が、現地で不思議な雰囲気を纏ったサキュバスの「カチリカ」と出会い、彼女と共に旅行を満喫するという物。
この頃にはすっかり作風が確立されており、それがいかんなく発揮されてもいる。ニマド投稿からこの時点で早二年以上……。時々箸休めをしつつも、ぼくは基本的にこういう創作を延々としている。
・月光照明
サキュバスシリーズ三作目にして、初めての男性キャラ不在作品。また後述する理由によって、本作はとてもとても記念すべき作品でもある。
あらすじは、主人公である女性エロ漫画家と、彼女の友人であるAV女優のサキュバスを主体としたいわゆる百合モノ。ある日「お互いの体を入れ替える魔法」を借りてきたサキュバスが、それを漫画のネタにするために使ってみないかと提案するところから話が動き出す。
本作は初めての百合モノであると同時に、なんと初めての、胸を張って「ハッピーエンド」と称することができるラストを迎えた作品でもある。ニマドから数えて七作品目だ……長かった……。ハッピーな話を書くには、やっぱり男が邪魔だったのかな? ともかく、暗い話が苦手な人には秒速で本作をおすすめする。
ちなみに本作のタイトルはパロディであり、元ネタは少年サンデーで連載されていた漫画「月光条例」。音と文字だけがこのパロディの全てであり、それ以上の意味はまったくない。
・ルカトゥと無数アンテナ(月光照明2)
前作の執筆時にはまったく想定していなかったのに、なんか書きたくなったし書けちゃった続編モノ。「後出しの続編」という概念自体が賛否分かれるところだけれど、本作にとってもそのあたりの不安は避けきれないことかもしれない。
あらすじは、ルカトゥに頼って無職になってしまった前作主人公と、趣味で漫画を描き続けている彼女を支えるルカトゥ(サキュバス)の話。その中で本作は、ルカトゥについての掘り下げを行っている。
決してバッドエンドになるわけではない……とぼくは思っているけれど、同時に、ルカトゥって名前は自分で考えておいてよかった〜! と心底思った作品でもある。賛否は分かれるだろうけど、主人公のルカトゥに対する依存が深まっている分、百合的な楽しみは増しているはず。
個人的には、前作を読んでくれた人には今作も強くおすすめしたい。……なぜなら続編はまだあるからだ。
ちなみに本作のタイトルもパロディである。元ネタは児童文学「ルドルフとイッパイアッテナ」。
・苦悩に生きるは日常系の中で(月光照明3)
月光照明シリーズ三作目にして、いよいよタイトルが不穏になってきた作品。でも大丈夫、ぼくは今作のこともハッピーエンドだと思ってるよ。
あらすじは、季節がめぐり、自分の身の振り方から来る罪悪感が日に日に増していることを感じると共に創作活動もスランプ気味になっている主人公と、彼女を心配しつつどうにか元気づけられないかと考えるルカトゥの話。前作同様、キャラクターの掘り下げと、そこから来る二人のやり取りが見どころになっている。
正直言って、作者の闇が抑えきれていない作品になりつつあると我ながら思う。月光照明シリーズだって魔女・サキュバスシリーズの一つなのだから、あるべき道へ還りつつあるのだとも言えるけれど……。
しかしそうは言っても本作は、以前までの作品たちと比べれば、かなり前向きな結末を迎える物ではある。前作が全然平気だった人は、たぶん今作も楽しめるだろう。
ちなみに本作はシリーズどころかぼくの創作活動において初めての、短編作品(非連載形式)として本編が10万文字を超えた作品である。力作なので読んでください。
例によってタイトルはパロディであり、元ネタはライトノベル「異能バトルは日常系の中で」。
……本記事を執筆している2023年3月現在から見て、ぼくの投稿した魔女・サキュバスシリーズは以上10作品が全てである。
なお、今後投稿される可能性がある同シリーズ系の中で、今のところもっとも有力なのは「月光照明4」だと思われる。ニマドから始まった系譜の到達点は、ルカトゥなのかもしれない。
ルカトゥならきっと、仮にニマドと同じ終盤を迎えたとしても、その時は「気づいてあげられなくてごめんね」と言ってくれるだろう。
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