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フリルは「かっこいい」
物心ついた頃、洋服は祖母や母が買ってくれたものを着ていた。
きっとそうやって幼少期を過ごした人もいるはずだ。
基本、渡されたものを素直に着て外で走り回っていたが「フリル」はなんだか違う気がして避けていた。祖母は子供服売り場で働いたこともあり、センスも良いと孫ながらに思う。それでも襟や袖にあしらわれた「フリル」は、私の着る物ではないと思っていた。
年月が経ち、大学生になった私は好んでメンズのダボっとしたTシャツとジーンズばかり履いていた。それが私の「可愛い」だったからだ。もちろん今も大好きである。祖母や母は喜ばない。
忘れもしない数年前の冬。一人暮らしのワンルームで、暇すぎてYouTubeを漁っていた私はそれに出会う。
「KPOP」
高校の頃、仲のいい友人が騒いでいたグループだった。当時はジャニーズをかじっていて微塵も興味がなく、大して印象にも残っていない。
画面の中には数人の「フリル」を着た男がいた。
ダークな雰囲気の背景、サイケデリックな色調、石膏の彫刻、絵画。その中を長い足でしなやかに踊る彼らは妖艶で、力強かった。袖や襟元の「フリル」から覗く肉体は男性的で、血管の浮いた手の甲が光に照らされる。
「フリル」と中性は混ぜるとどこか少年をイメージしがちかもしれない。華奢で大きな瞳とサラサラの頭髪が揺れる『黒執事』の世界。ヨーロッパの美少年。しかし、私が見たのは成人男性のまとったものだった。鋭い眼差しを「フリル」が際立たせ、大きなモーションのダンスが「フリル」を揺らして躍動感を出す。
そして、彼らは西洋人形のような顔ではなく、さっぱりとしたエキゾチックな顔つき。尚更私を画面に近づけた。
あまりにもかっこよかった。
「フリル」はこんなにもかっこよくて、美しいのだと初めて知った。そして、「フリル」に縁取られた彼らも、とことん美しかった。
そこからは、私のクローゼットに少しだけ「フリル」が加わるようになる。まだ着るのは少し勇気がいるが、だからこそ衣装のようにかっこよく着こなしたい。