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【SATC衣装をたどるシリーズ|S1-03】シングルでなぜ悪い!?/Bay of Married Pigs

スリフトショップ大好き人間のkinuが、Sex and the City(略:SATC)の衣装を独断と偏見でピックアップして深掘りするシリーズ。キャラクターの人生を表すファッションが、どのような要素で構成されているかを紐解き、考えを巡らせます。


この話の初回放送日は1998年6月21日。ウキウキする夏も近づく夏至の頃の話だ。キャリーはハンプトンのビーチ沿いの既婚カップルのお宅に招かれたのだが、ある出来事から「独身女は既婚者にとって敵なのか」という問いが始まる。

招いたカップルは、独身のキャリーの色恋話に夢中だ。確かに、既婚者は他人の恋バナへの関心が高い傾向はあると、自分自身感じるところもある。これまで他人の色恋沙汰へ強い関心を示す既婚者を何度か目撃してきた。結婚の安定とは、悪く言い換えれば退屈さと言えるかもしれず、他人の色恋沙汰を聞いていて楽しいのはしょうがないのだろう。なにか、スポーツの試合を観戦しているような感覚かもしれない。

今もまだ親戚での集まりや同級生の集まりなんかではあるのかもしれない「いい人いないの?」といった既婚者からの結婚の兆しをさぐる声。そこには人の色恋話に興奮したい既婚者の無邪気な動機を感じる。反面、そんな既婚者の声は結婚という社会の通過儀礼を終えているとして余裕こいて聞こえるかもしれず、独身には鬱陶しく感じる場面は多いことだろう。


4人のブランチシーン、職場で既婚者に囲まれているミランダの意見は厳しい。
・女は結婚した途端、独身女を敵視する
・独身を哀れんでいる女もいる。同情の目で見られたことない?
・つまり既婚者は敵
といった具合だ。

「旦那を取られそうで怖いのよ。現実に独身女は信用されないの」というサマンサのセリフは痛いところをついている。

自由と引き換えに信用されないのか。じゃあ結婚しているものは拘束と引き換えに信用を得ているのか。信用とは拘束されているということだったのか。自由と信用は、水と油のようなもの?それは女だけ?

「男は結婚すると信用されるようになる」というのは聞いたことがある。だいたいにおいて、男性は女性を経済的に支えられるかを結婚の際に問われがちだからなのだろう。
男の苦しさ、女の苦しさが双方にある。

サマンサ「独身女は いつでも誰とでも寝られるから」"we can have sex any time, any where, with anyone."
キャリー「そう?」"We can?"
さすがサマンサ姉さんといった会話のくだりは、もちろん後半で伏線回収される。


この回で好きなコーディネートは、キャリーがスタンフォードと街を歩いている時の衣装だ。
キャメル色のレザージャケット、インナーにベージュのチューブトップ。キャリーのヘアと同系色なので、上半身だけだとベージュ系で纏まっている。下はブラックのパンツ。
シンプルな色使いだけど、チューブトップで肌が見えていたり、レザージャケットの質感と鈍い光沢で変化を与えている。

イラスト:kinu

既婚のカップルに半ば強引に引き合わされたショーンに誘われるがままにデートを重ねてみるキャリー。
「彼は服でいうならDKNY(ダナ・キャラン)。好みじゃないが、あれば着る」
ちょっとひどいようにも聞こえるが、ショーンの方もキャリーその人とデートしているのではなく、『婚活相手』とデートしているように見える。一緒にいたいからデートするのではなく、結婚したいからデートをしているようにも見える。結婚がゴールのスタンプラリーで、スタンプを集めているような複数回のデート。
そんなデートに付き合っているキャリーの服もどこか控えめで、婚活を意識した堅実な彼に合わせているようにも見える。


話を見ていて、カップルで参加するイベントの多いアメリカ社会は残酷だなと思わされる。結婚するとIではなくWeになると言う女性が出てくるが、婚姻ということの拘束力の強さを感じる。
この回で興味深いのは、ミランダをレズビアンだと思った上司が自宅のパーティーに誘うが、上司の妻がレズビアンと友達になりたがっていたからということだった。
夫婦で自宅に招ける友達が欲しいけど、自分の配偶者との関係を心配したくないということなのだろう。誘う方に悪気はなかったのかもしれないが、自分という人格ではなく属性で選ばれ誘われたと気づいた方は微妙な心境だ。

この回では、人と近づきたいんだけど、色んな理由で距離を縮められない人々が次々に出てくる。というか人との関わりはほとんどがそんなドライなもので占められている。だから人は結婚に価値を認めてしまうのかもしれない。

「冷戦の原因は憎悪じゃなく未知のものへの恐怖では?」
「同じ民族なのに敵と味方に」
キャリーの思考は巡る。
最後は、夫と一緒に家に帰るより、独身の友達と夜の映画に行く方が好きだと思うキャリー。こんな友達との関係も、結婚に匹敵するくらい素敵だと思った。


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