案外 書かれない金継ぎの話 (5) シリンジ漆
金継ぎを始めようと思った方はチューブ入り漆を購入されると思いますが、チューブは出し過ぎて戻せなくなったり、綺麗に拭いても蓋が開かなくなったりと、案外、面倒です。そこで今回は、漆の小分けにシリンジを使うアイディアをお伝えしようと思います。
シリンジについて
注射器は大きく分けると、針と外筒とプランジャー(押し棒)の3パーツになりますが、外筒とプランジャーを合わせてシリンジという名称で販売されています。
色々なメーカーから出ていますが、私はテルモが最もコストパフォーマンスが高かったのでお薦めしています。容量は、頻繁に金継ぎをしないのであれば2.5ml、毎月する方は5ml辺りが良いと思います。(以下、説明はテルモのシリンジを使った方法になります)
用意するもの
・チューブ入り漆
・シリンジ ・細ストロー(直径4㎜のもの)
・ハサミ ・ティッシュペーパー
(以下、任意)
・綿棒 ・ライター ・ペンチ ・アルミホイル
シリンジの準備
筒先が長いシリンジの場合は不要な手順ですが、筒先が短いシリンジは漆を吸い上げ難いので延長が必要です。針管は細くて漆を吸い込めないので、筒先の穴以上の管が必要になります。延長管にはストローが安くて加工も簡単です。
ストローを切ります。長さは任意ですが3~4㎝が取り回し易いと思います。切ったストローに筒先を挿します(筒先はシリンジの容量にかかわらず直径4mmです)。
漆を吸引する
チューブの口を上にし、ストロー部分を入れてから、ゆっくりとプランジャーを引いて漆を吸引します。
任意の量が入ったらシリンジを抜きます。
ストローに付いた漆を拭いてから、シリンジの筒先を上にし、プランジャーを引いてストロー内の漆も吸引します。
ストロー内に残った漆が勿体ないので、私は綿棒をぐりぐり入れてシリンジに落とし込み、それからストローを抜いています。(ストローは綺麗にして再利用する事が出来ます)
キャップを作る
シリンジにキャップが付属している場合は、筒先を綺麗に拭いてからキャップをして作業終了です。
キャップが無い時は、ストローをライターで軽く炙ってからペンチで挟むと、簡易キャップを作る事ができます。あまり長いと空気が多くなってしまうので、1㎝くらいのにするのがポイントです。
使用時の注意点
かなりの回数、漆を出し入れ出来ますが、シリンジは密閉を目的とした容器ではないためガスケット(プランジャーの先のゴム)から僅かに空気が侵入し、徐々にガスケット付近の漆の粘度が上がりプランジャーの滑りが悪くなります。押出し難くなったら新しいシリンジに入れ直して下さい(筒先同士を短いストローで繋ぐと無駄なく入替え出来ます)。
また、ストローキャップは密閉があまり良くないため筒先の漆が少しずつ固まって粘度が上がりますので、1回の金継ぎで使い切れない場合や暫く使う予定がない時はストローではなく、シリンジ用のキャップ(穴4mm用)を使用してください。
初めて使う時は少なめに入れて、どれくらいのペースで使いきるか分かってきてから量を増やしていく方が無駄なく使えます。室内で保管すれば紫外線で劣化する事はありませんが、どうしても心配な方はアルミホイルを外筒に巻いて光を遮蔽して下さい。
シリンジで小分けにをすると、簡単に少量だけ漆を出せますし、出し過ぎたら吸引して戻す事もできます(完全に吸引するのは難しい)。
暫らく使用しないのが分かっている場合は、チューブに戻すこともできます。
漆を大切に使いたい方は、準備に少し手間はかかりますが利用してみて下さい。気に入って頂けると思います。
(つづく) - ご質問は気軽にコメント欄へ -
<参照:テルモ シリンジ>
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