コゲラせんせい 現る

先月歯科の定期検診で
「詰め物が欠けているところがある」とのことで修復のために今日は来院した。



定期検診はチェックチェックで、意外と時間がかかるけれど、欠けの修復ならそんなに時間もかからず終わることだろう。

「では歯磨きのチェックしますね」

なぬ!?

定期検診の目的は日々の歯磨きチェックなので、疲れて眠い日は適当に済ませてしまうおサボりを隠すために行く前には普段の5倍の丁寧さで磨けあげていくが今日はすぐに修復作業だろうからいつものテキトー磨きで来てしまったのだ。

とんでもないトラップを

仕掛けてくれたもんだ

「徹底して追い続けなければこの きんととさん はすぐサボろうとしますからね今日もよろしくお願いしますよ」

きっと朝礼で、私の担当になる際は気を引き締めるよう全体連絡がかかったのだろう

油断してはならないのだ
芸能人は歯が命
芸能人でなくても歯は命を守る大事な要
患者の命を守るのが歯科の使命か
感動するじゃないか

「全っっっ然ダメじゃないですかっっどーーーーなってんですかっっっ」と今日はド叱らせてしまうんだ
この、うちの娘と歳もかわらなさそうなカワイイ衛生士さんに嫌な役目を与えてしまってああ申し訳ないごめんねカワイイ衛生士さん


「全体的に綺麗に磨けていますね」

ええ!?✨
まさかの合格ライン達成か!?

「手鏡持ってください」

(T_T)


手鏡を持たされる時は「とは言っても磨き残しがあるんですよ きんととさん、その目でしかとおサボりの末路をご覧なさい」とご指導がはいるときなのだ。
そして毎度指摘をうける右下の犬歯の付け根の磨き残しを耳タコで確認する。

この医院は衛生士さんが多数在籍しているためこのカワイイ衛生士さんに以前もお世話になったのかは、みんなカワイイので見分けがつかないのだが(これは決してオバサン化現象ではない。みんな同じようにカワイイからだ。きっと)よくまあこんなにも同じ指摘を毎回受けても態度を改めないもんだと自分の頭の悪さを恨む。

まあそもそも歯に弱点しかない私にとっては、ここでは恥しかかかないのだから身の程をわきまえて「へえ」と頭を下げるしかないのだ。
さあ本題の欠けた詰め物を治してさっさと退散だ。

「きんととさん こんにちは」

この声は
女医の こまどり先生だ。
あまり内情は知らないが こまどり先生は比較的軽い治療の時に現れると言われているラッキー医師、「天女のこまどり」

こまどり先生は治す箇所を2、3回ツンツンとチェックして小さく「ふん」と言ったままどこかへ行ってしまった。

何か

お気に召さなかったのだろうか……


衛生士さんから、レントゲンを撮るからと案内され再び診察台に戻り治療を待っていると 天女のこまどり先生から 彫り師コゲラ先生に変わっていた

なんで!?!?!?


医師交代とは!?軽くないんか!?


「きんととさん、欠けたところの奥が虫歯になっています。治療をしてから詰めていきます。麻酔打ちますが大丈夫ですか?」


「……もちろんでさ」

私の歯


油断も隙もねえ!!!!(大泣)


愕然とし過ぎてOKの末尾が江戸っ子になってしまったが撤回する元気も出ない。

ちゃちゃっとなおして帰るつもりが抜き打ちテスト不合格アンド虫歯発覚の二段階烙印とは…


コゲラせんせいは手際よく麻酔を打ち痛みを感じることも、患者を不安にさせることも無く見事に虫歯を退治して、欠けた箇所を何も無かったかのように白くもない私の元歯に馴染ませた。

全くすごい技術である。

他人の生身に刃を向けて命を守るなんて、「仕事」という言葉だけで片付けていいのだろうかといつもマヌケに口を開けながら考えている。

4年前
酷い状態だった私の口内環境を救ってくれた。
あれ以来治療が怖いなんて1度も思わなくなった。
刃を向けて戦っている先生の方が余程責任感の恐怖と向き合っているんじゃないかと感じるからだ。
また、スタッフ全員の細やかな配慮も大きい。
治療の手を少し離すだけの時も「楽にしてください」とこまめに声をかけて口を開きっぱなしにさせず苦しくさせない配慮だとか、「風かけますね」など、痛みを感じるかもしれないアクションの前に声をかけておいてもらえるだけで覚悟ができて痛みの軽減に繋がることなどから、治療の嫌なイメージを取り除いている。つまり、一緒に治しましょう!が受け取れるから恐怖なんて感じなくなるのかもしれない。

二段階烙印の私はビビりもせず、何も頑張ることも無くただ寝転んでいただけだ。

これでいいのか? 私

こんなにも手厚く、私の命に向き合ってくれる医院に、私がすべき恩返しは何だろうか?

定期検診と
右下の犬歯の付け根を意識して毎日丁寧に歯磨きをすること

でしょうね

ありがとうございます

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