親心子心
「5月12日?」
あ「空いてるなあ」
*
問題です
下記の文を読んで「息子」の行動を解説せよ
先月息子がお笑いライブのチケットが取れたから今からコンビニで支払いをするんだと近寄ってきた
解答
「息子」「近寄ってきた」の組み合わせから
普段は心の安全のためなるべく一定の距離を保って母とは離れていることを心掛けている思春期の息子が距離を縮めてきたのにはやんごとない事情があることが推察されます。そのやんごとない事情は「コンビニで支払い」であり、支払いが「ライブのチケット」であることから安くは無い金額の出費が予想され、「近寄ってきた」、という物理的に距離を縮めた行動は、いつもは遠くに位置している愛する息子が「自ら近づく」ことで母性を高めさせ、「金出せ」のニュアンスを「払ってあげたい」に変化させる、ホルモン分泌を利用して感情、いや、金銭感覚をコントロールしていることがうかがえる。
恐るべし思春期男子
一定の距離を置かれている母はまんまとコントロールされチケット代を支払ってしまった
どうやらそのライブは一か八かで申し込んだ大阪公演で、ギリギリ滑り込めたようなので、一緒に行く相手の予定も無いため独りで行くのだという。
これまで隣町でも単身で訪れた経験があまり無い息子が特急で3時間以上かかる大都市大阪に乗り込むとは、ほほほう、大冒険なんじゃないか?まあ、大学生にもなったし、電車通学の経験値が増したことで気持ちが外へ外へと向き出したのだろう…が、
その日以来私は再三に渡り大阪行の旅の行程を聞きまくった。
その理由は2つ。
1つは、駅までの送り迎えが要るだろうから予定の調整をしておかなければならないという確実におこるお世話心。
2つ目はいわゆる取り越し苦労で、
もしかして息子は初の一人旅が本当は心細くて、あわよくば母の方からの「一緒に行こうか?」を切望しているのかもしれないという不確実なお節介心。
ただもしそうだとすれば私に事前準備が必要になるのでハッキリしたいのだ。
きっと息子からは言いにくいだろう。
チケットは一枚しかないので
母も好きなコンビのライブに母は行けず
母が払ったチケット代なのに母は行けず
でも心細いから着いてきてよなんてどの口が?
まあきっと
思春期なので言えなくて困っているんじゃないのかと妄想し、密やかに助け舟を勝手に出していた。つもりだ。
「何時頃に出発するの?あ、前乗りとか?」
「……。」
「誰かさそわないの?」
これは…直球だったかな
「…………。」
「夜行バス安いよ~。でもやっぱ電車?まさか新幹線とか?」
「…………、母も来たい…?」
問題です
上記の息子の言葉と間(ま)から読み取れる感情の動きを解説せよ
解答
最初の「……。」の短さは
直感で" ああ心配して聞いてくれたんだろうけどまだなんも決まってないから答えられないんだよな *の、良好な親子関係の 間(ま)
次の「…………。」は、考える時間がやや長い。1人で行く覚悟を決めていたのにその一言でなんか心細くなっちゃったじゃないかちきしょう マジめんどくせー と葛藤する思春期男子の間(ま)
次の「……母も来たい…?」は
"また聞いてきた!…ひ、ひょっとしてこの母、ついて来ようと偵察してる!?心配とか思ってんの!?無い無い、いやで待て交通費浮くからやや有りかも…いーやいやいや落ち着けーきっと主導権握られて行動しにくくなる、危ねー。でも答え方は慎重にいかないと…えーっと…"の 少年から大人に変わる 壊れかけの 間(ま)
聞いてきたな息子よ大人になったなあ
がしかしだ
「いえ……(大阪旅行そりゃあ行きたいよ)」
「……その日空いてるから行けるっちゃ行けるケド(ホントに来て欲しくて言ってんのか?そこなんだよ)」
「息子はこの旅やっぱ1人で行くことが醍醐味なんじゃないの」
( そうだよ!!!)
やはりいらんお節介だ
息子は最初からそのつもりで踏み込んだのだから、たとえ心細くなってたとしても「そうか行ってこい」でこっちが送り出せば最初の覚悟に戻るはず。
「行ってらっしゃい」
5月12日
その日大阪でどんなイベントがやってて美味しそうなお好み焼き屋さんがどこにあってルートも念入りに調べたけどね