秋は静かにやって来て
「尿路結石ですか……」
暑い夏から少しだけ爽やかな風が吹くようになった頃、朝から晩までせわしく何度もトイレに行っている。かしかし と砂をかいて座り込んでも何も起こらず引きつった表情でトイレから出てはソワソワと私の周りを なーなー と、困ってんだよー をアピールしながら回ってる。
うちの ねこ の様子がおかしい。
動物病院に行くと
「これが結晶です。尿路結石ですね」と告げられた。
「原因は様々ですが肝臓の働きの低下で尿が凝縮されていますね。治療方法は、今は酸性に傾いているので結晶が出来にくくするために食事を変えていきましょう。あとなるべくお水を飲ませてください。」
「あちゃ~ねこ も人間も同じなんですね~。私も石持ちなんです~。そんなところ飼い主に似て、なんもいいこと無いのに~あはははは~」
あははははは
あははは
あははは…
じゃあないよ自分
*
今年の夏の暑さはとんでもなかった
私の水分摂取は私の体内のどこかに潜む結晶を十分に流し出せるだけの量が足りていたのだろうか。いやむしろ、真夏よりも朝夕が肌寒くなった今頃の秋の気温が一番水分摂取が激減する。
事実していた。
5年前 尿路結石(疑)にやぐるったあの秋も
今年の秋も。
*
背面の腰の激痛から2週間経過し、痛みは不調と絶不調を行ったり来たり、ひょこひょこでも歩ければまだ良し、10歩毎にうずくまり痛みを逃してやり過ごすか、「動く」行為そのものが苦痛に満ち、その場所は日に日に右側面に移動し、今は右脚全体が毒でも回ったかのように重く苦しい痛みに変わった。
毒が回った……?
痛さで立てず、うずくまり、うんうんとうなる。
鍼灸院の先生が見破った言葉がぐるぐると回る。
「腎肝臓が弱っていますね」
「老廃物が正常に排泄されにくくなるので身体に回ってしまうんです」
まさか……
ねこ のことを思いながらなぜ自分の症状に当てはめなかったのか。
まるで他人事のように、私は2週間前に発症した腰の痛みをこらえながら ねこ の2回目の経過診察に赴いて医師と 結石 の話で盛り上がっていたとは。
診断が
まだ見ぬ ぎっくり腰 も怖いが
5年前の夜、肝の蔵を食いつかれでもしたかのような、二度と経験したくない、もう二度目は起こさせないと誓った 尿路結石(疑) だけは絶対に嫌だ
なんでって?
悲惨な未来しか無いないからだよ!!
5年前は
数日の膀胱炎症状を経て急激な右脇腹の激痛だった。
その直前に回転寿司で光り物を中心に食べていたので絶対に アニサキス が はらわた に食いついたのだと確信していた。ところが、救急外来に駆け込むも診察の手前で激痛はピタリと治まってしまった。経緯を当直医に告げると間髪入れず確信に満ちた声で採尿を指示してきた。
「今回の尿検査では血尿もありませんし結晶もはっきり確認は出来ませんでしたが症状から結石かと思われます。痛みが治まったのはどこかを塞いでいた結石が、体勢を変えたことなどで動いて、ストンとちょうど痛くない場所に収まったかもしれませんね。石が出てしまえば痛みは無くなりますがまだ有るかは何とも言えないです」
ケロッと恐ろしい事を説明され、自動車学校でクランクに泣かされた日をぼんやり思い出していた。
まだ有るかは「分からない」のだ
次の日も一週間後も二ヶ月後も、彷徨う結石はどこかを痛めることはなかった。どこへ行ったんだ?まだ潜んだままなのか?人気の耳鼻科の駐車場の斜め止めスペースが異常に狭く、どうハンドルを切ったらここから出られるのか分からなくなり立ち往生した自分のかげろうと行方不明の結石が重なる。
そして今
アイツが
とうとう動き出したんじゃあないのか?
5年の歳月を経て
留まった先で巣食い
成長し
いよいよ出口を目指し
動き出したんじゃあ?
〈年内には決着つけます つづく〉