おしながきを謎解く
書かれた字が読めなくて困ったことがあってもそれを聞けない事があります。信頼関係が出来ていない相手では…プライドを傷つけるのでは?と思うとどうしても。となれば読み解くのみです。
今日は長女の住む街で用事があったので一緒にランチでもどう?と誘ったら「アパートの近くにあるお寿司屋さん、回らないけどお値打ちで美味しいからそこ行こ」と。よっしゃー
長女は前にも妹や友達と数回行っていたようで隠れ常連となっていた。
「ここの料理ほんっとに美味しいから。
でも、メニューが読めないんだよね。
独特なの。
初めての時はランチで行って、10種類くらいあったけど、とりあえず一番最初に書いてあるのを指さして頼んだの。
2回目は夜で、メニューが単品だけになったらさらに読めないの!キュンキュンに敷き詰まっててどこまでが1品なのかわかんないのね。もう当てずっぽう。出てくるまでミステリーだから」
へたくそなの?と聞いたら
「ヘタではないんだよね。独特なの。」
寿司屋だけに勝手な想像で「達筆すぎてだろうな」いわゆる草書体のくずし字に、若い長女が見なれてないからなのじゃないなかなと思いました。
お店に入ると元気な大きな声で、私より少し年上かな?くらいの、親しみやすそうな姉御肌のおねいさんが「いらっしゃい!」と言って席に案内してくれました。
旦那さんなのか、とても愛想がいいとはいいにくい職人肌の大将がせっせと料理を作っている。
入口には拡大された有名人の来店写真が飾られ、店の壁にはぎっしりと地元の情報番組のレポーターのサインが並んでいる。
そして問題のおしながきが登場
独特だ
見たことのないフォントでぎっしりと紙一面に文字が敷き詰められている。極端な丸字で波打つようにつづられている。合間にフリーハンドで引かれた9本の不規則な線の中でそれぞれのメニューが渦巻いているさまは もはやアート。わざとわかりづらく描かれた現代アートかのように。
選ばなければ…
今日はランチで行ったので良かったんだ。セットごとに線で区切られているので何となく単語がうかびやすい。たぶんこれはクリームコロッケ。これは…あ、サラダ!この枠には肉うどんと書いてある(気がする)!!あれ?寿司屋だよね?ほんとに合ってるかな。おねいさんが見てる。固まった笑顔の私達が何を選ぶのか、じっと見てる。
「決まったら呼んでくださいね」
テイクアウトの対応や出前の受付と忙しそう。
とても聞けない
10種類もあるけど全てを解読してから選んでいたらオーダーするのに30分はかかるよ。
でも聞けるわけがない。
これを書いたのはあの姉御肌のおねいさんなのか?それとも無愛想な職人肌の大将か?
とにかくこんな個性的な字を平気でおしながく人は個性強めでしょう。となればプライドはもちろん高め。私に聞けるはずがない!それとももしかして…
ツッコミ待ち?
「現代アートひとつ下さいっておいおい」
早くたのまないと「よめないひと」と思われてしまう。
クリームコロッケは読めたんだもん
「クリームコロッケのセットふたつください」
寿司屋だから寿司は確実に出てくる
クリームコロッケも。書いてあるんだもん。
あとは何が出てきてもまあいいや。
お、きたきた
おねいさんが奥からバタバタと運んでくる。
さあ答え合わせの時間だ。
お刺身盛り合わせ、茶碗蒸し、おみそしる、サラダと…。あ、サラダ!正解。おみそしる?
んん!!「御味噌汁」漢字かよ!!よく見ると「アラ炊きの御味噌汁」だな。てか、おみそしるの中身を見て正解をこじつけたね。お刺身は「盛り」って見えるエリアが多分刺身の情報が書いてあるんだな。茶碗蒸し…ちゃわんむし…チャワンムシ?…無い。
どっこにも見つけられん。
続いてお寿司十貫とクリームコロッケ。ずいぶんごついカニ爪だな。
あれ?さっきは早くオーダーしないとというあせりでよく見えてなかったけど「オマール海老のカニクリームコロッケ」って書いてある。
どっち?海老なの?カニなの?
これは…
遊ばれてるな
おねいさんと大将の手の中で踊らされてる
読めるわけのないメニューを出して困惑する客たちを見て笑ってるんだ。
まあいいや
とにかく料理は美味しい。
だから踊らされていようが関係ない。
「いらっしゃい!」
隣に、同じくらいの世代らしい家族が案内されて座った。メニューを見るなり間髪入れずに「読めないよ、おねーさんなんて書いてあるの?」
やめて!!!
場の雰囲気みて!!!
凍りついてるやろ!!!(私達が!)
みんな、我慢してた…
言葉に出来なくて自分に嘘ついてたんだ…
おねいさんの迫力、大将の無言の圧力、周りに「よめないひと」と思われたくないインテリ精神でギリギリ保っていたのに
黙って踊らされてろ!!
「みんな読めてるの?」
たんたんとツッコムな!!
誰も読めてねーよ
「はい、皆さん解読されてますね」
解読って言っちゃってるし
クリームコロッケだけね
「ランチ種類多いね。でも中身がわかんないよ」
「一つ一つお読みしましょうか」
音読なんて30分かかっちゃうからやめなって
ここからはおねいさんと家族との引くに引けないプライドの押し合い劇場。
おねいさんは順番に先頭のランチメニューを読み出した。
「大将のおまかせ握り寿司15貫に、アラ炊きの御味噌汁、うなぎ白焼きの器、サラダ、茶碗蒸しです」
あ、これが茶碗蒸しだったんだ。絶対読めんな。
「で、次は大将のおまかせ握り寿司十貫…」
「もういいよ、今読んでくれたのみっつ、ちょうだい」
おねいさんのねばり勝ち。
それからおねいさんはテイクアウトの注文に走っていった。
「大将、エビフライ弁当、エビ抜きね、4つ。
みんなエビアレルギーなんだって」
エビフライ弁当である必要性が 知りたい!
もうずっとコントじゃん。
現実に聞いたの初めてです。
このお店、地元の情報番組で取り上げられるわけだ。
今度は 夜 銘酒のつまみを謎解きに行きますね。
#おしながき #読めない字 #ランチ #まるでコント
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