「敷居の下げ方がハンパじゃない」相談しやすさMAXの “若ハゲ” 税理士・ジンノユーイチさん
「若ハゲ税理士」として活躍するジンノユーイチさん。
2018年に京都市内の税理士事務所を退職し、2019年4月よりフリーの税理士として独立。税理士でも対応する人が比較的少数の「相続」案件を得意とし、これまで100件以上もの案件を対応してきました。
フリーランスならではの機動力を活かし、中小企業や他のフリーランスの方々のために、スポット的に相談できるサービスも展開しています。(詳しくはこちら)
そんなジンノさんの仕事ぶり、人柄や、フリーになったワケなどを探るべく、直接お話を伺ってきました!
【ジンノ・ユーイチ】
フリーランス税理士。2008年より税理士を志し、2010年に関西大学商学部商学科夜間主コースを卒業。2010年4月より、大阪府内の社会医療法人にて医療事務として就職。2014年4月、京都市内の税理士法人に転職。仕事をしながら勉学を重ね、10年の歳月を経て2017年2月に税理士として登録。2018年12月に税理士法人を退職し、2019年1月よりフリーランスに。相続税法を中心に、確定申告業務や、中小企業・フリーランス向けのスポット案件の展開も行う。自身で運営しているブログ「co-develop-ing 〜京都の若ハゲ税理士ジンノのブログ〜」は、現在まで700日以上にわたって更新している。
“若ハゲ” の由来
——ご自身を「若ハゲ税理士」と名乗るジンノさんに早速お聞きしたいんですが、おいくつなんですか?
ジンノさん:いきなりですね。今年(2020年)で36歳です。
——たしかにお若いですね。正直、“若ハゲ” って隠したくなっちゃう気がするんですが、名乗るようになったきっかけは何だったんですか?
ジンノさん:そうですよね。正直、僕も最初はコンプレックスでした。20代前半までは髪が硬くて多いくらいだったんですけど、20代後半くらいからだいぶ薄くなってきて。まあ正直隠したい気持ちが強かったんですよね。
そんなとき、こんな本に出会ったんですよ。
▼『ハゲを着こなす 自分の悩みを武器にして人生を変える方法』松本圭司(WAVE出版)
——“まさにこれ” っていう本ですね。
ジンノさん:本当にそうで、すごく端的に言えば「コンプレックスを強みに変えましょう」みたいな本なんですけど、すごくおもしろかったんです。これを読んで、「まあこれでもいっか」って思えるようになったんです。
そこからツイッターとかで「若ハゲ税理士」と名乗るようにして、「毛」の話題とか「光る」とか「輝く」とかそういう言葉に敏感に反応してるんです(笑)。
敷居の高さを払拭したい
——この本に出会ったことで、“若ハゲ” の捉え方が180度ポジティブに変わったんですね。
ジンノさん:そうですね。それに、やっぱり“税理士”っていうと多くの人から敷居の高いイメージを持たれてるんですよ。「怖い」とかね。
同業の方はけっこう年上も多いし、数字も扱うので、なんとなくお堅く見られることもあります。それだと相談したくても気軽に相談できないですよね。
だから、敷居を低く感じてもらうツールのひとつとして “ハゲ” を使ってるんです。「ハゲ」ってちょっとおもしろ要素があるじゃないですか。「どうも、ハゲてます」「若ハゲでやってます」みたいな(笑)。
たまに優しい人から「べつに自分で言うことではないでしょ」って言われたりするんですけどね(笑)。
——なるほど(笑)。あえて自分から言ってるんですね。イメージがガラッと変わるので、すごくいいなって思ってました。
ジンノさん:ありがとうございます。「ハゲ」っていうのは僕にとって謙譲語みたいなもんで。自分を下げることで“税理士”の持つハードルの高さを越えてもらいたいなと。
そのうち、顧問料の「ハゲ割」とかしたいですね(笑)。
——おもしろそうですね!(笑) 美容師の方でも、ツイッターのフォロワーが何千人以上なら無料っていうサービスやってる方もいますよね。
ジンノさん:そうです、まさにあんな感じで。ハゲてたら顧問料1割引きしますとか(笑)。その代わりに、ハゲについて意見交換とかさせてもらえたらおもしろいですよね。ハゲ歴とか。
——それちょっと横で聞きたいです(笑)。
税理士として心がけていること
——ジンノさんが税理士として心がけていることってありますか? やっぱり「ハードルを下げる」ということでしょうか?
ジンノさん:それもありますけど、大事にしているのは「気づきを得てもらう」ことですね。
——気づき?
ジンノさん:税金って、知らない人が損をする世界なんですよ。「知りませんでした」って言われると、どうしても「それは損してるかも」って話になります。
だから「知りませんでした」と言われたときに、勝手に「じゃあこうしましょう」って進めるのではなく、「実はこうなんですけど、どう思いますか?」って投げ掛けることで、お客さんに気づきを得てもらうようにしています。
「こんなことも知らないのか」っていう態度をする税理士が時々いるんですよ。でもそれって冷たいじゃないですか。知らないものは仕方ないし、税金のことなんてあまり勉強する機会がないからむしろ当たり前です。
だけどお客さんも、わからない部分で勝手に進められるのは怖いと思うんです。だから常に問いかけながら進めるようにしています。
お客さんも基礎情報がないと判断できませんし、基本的な部分から順番に、あくまで丁寧にお話していくんです。
——たしかに、税金の話って、意外と知らなかったみたいな話がたくさんありますもんね。
ジンノさん:そうですね。当たり前ですが、大半のお客さんは税金について知らないことのほうが多いです。だからこそ、順々に話して「気づきを得てもらう」ことが一番大事だと思うんです。
——僕もわからないことだらけなので、レベルを合わせてくれるのはすごくいいですね。ジンノさんにいろいろ教わりたいです。
「ひとり税理士」になったワケ
——ジンノさんは今年の1月に独立されたんですよね。どうしてフリーランスになったんですか?
ジンノさん:結論から言うと、「せっかく税理士として仕事するならもっと自由に働きたい」と思ったからです。
僕は大学2年の頃から税理士を志し始めて、大学を卒業してからは病院で24時間体制の当直業務をして働きながら、毎日寝ずに勉強してました。必死の勉学を重ねて、10年の歳月をかけて税理士になったんです。
ジンノさん:すベての試験が終わって税理士として登録されたときは、「やっと終わったー」っていう気持ちも、もちろんあったんですけど、それと同時に思ったんです。
「あれ? ここからどうするの?」って。
というのも、僕はまず税理士になるのが目標やったんで、目標達成してしまった後のことを、なんにも考えてなかったんですよ。そこで「僕はこの後どう生きていくんかなあ」って考えていたときに、こんな本に出会ったんです。
▼『ひとり税理士の仕事術―雇われない・雇わない働き方 仕事も人生も楽しむ税理士』井ノ上 陽一(大蔵財務協会)
——人生の節目で必ず素敵な書物との出会いがあったんですね。
ジンノさん:そうなんですよね。僕が独立したのは、この著書の井ノ上陽一さんの影響を受けたのが大きくて。一人で税理士さんをしながらブログ書いてはるんですけど、すごいなあと。
あるとき、井ノ上さんのセミナーがあるというので、こっそり参加してきたんです。税理士になってからはすごく狭い世界で生きてきて、事務所以外の税理士さんと喋る機会って全然なかったんですけど、そこで井上さんのお話を直接聞けました。
最初は「まあ、いつか独立してもいいかも」くらいの気持ちだったんですけど、井ノ上さんが「独立したいんやったらブログしたら」みたいなこと言ってはったので、僕もこっそりやり始めたんです。
それから、いままで毎日書いて700日くらい更新してきました。井ノ上さんはたぶん4,500日くらい毎日更新してはりますけどね(笑)。
——4,500日! ジンノさんの700日も十分すごいと思うんですが。しかも毎日......。
ジンノさん:4,500日となると12年以上です。世の中にはそういうモンスター級の人がいるんですよね(笑)。
そうしてブログも書きながら税理士事務所で仕事をしてたんですけど「何のために税理士の資格を取って、仕事をしてるんかな」って考えるようになって。
それまで、税理士の仕事は事務所でやるもんやと勝手に思ってました。でも、ひっきりなしに仕事が来る事務所のなかで、だんだんと辞めたくなりました。バーッて仕事が来て増えていくだけやのに、おれは何をしてるのかなって。
そのときに「おれは雇われてるからこうなんや」って思うようになったんです。それに事務所に限らず会社って、あと何年あるかわからないじゃないですか。来年、何かがあって潰れてしまうかもわからんし。誰かが自分のキャリアを示してくれるわけじゃありません。
そこでさっきの井ノ上陽一さんの本を読み返したんです。そしたら「辞めたいときが辞めるときだ!」っておっしゃっていて。「せっかく税理士資格取ったんやし、辞めて独立しよ!」と思って、独立したんです。
上司には「あと5年、粘ってみいひんか?」って言われたんですけど、そうなるともうしんどいじゃないですか。もう5年も我慢できへんと。
——たしかに。たぶん5年後に「あと5年」って言われていた可能性は否めないですよね......。
ジンノさん:あそこで受け入れてたら、そうなってたと思いますね(笑)。
あと、ブログにも書いてるんですけど、母の体がちょっと悪いので、一緒にいてあげたいっていうのもあって。2018年にも2回くらい入院してたんで、いつまで一緒にいてあげられるかもわかりません。
そう考えて、ひとりで仕事ができるようになれば母のことも傍で見てあげられるっていうのは大きな理由のひとつでしたね。事務所に勤めていると、どうしてもなかなか一緒にいられませんからね。
——独立したことが親孝行にもつながっているなんて素敵だと思います。
若ハゲ税理士の、超“マメ”なワークスタイル
——フリーだとスケジュールを完全に自分で管理しないといけないのが大変ですよね。
ジンノさん:そうですね。僕の場合、午前中は家で仕事して、昼からは外に出るといった感じにしています。
——ブログはいつ書いているんですか?
神野さん:ブログを書くのはいつも朝イチですね。前日の日中のうちにネタを見つけておいて、夜にアイキャッチ画像とタイトルと構成だけつくっておくんです。それで寝て、起きたら書くだけみたいな。毎日続けるのって大変といえば大変ですけど、僕はもともと朝型なんですよ。
——お話を伺っていて思ったんですけど、ジンノさんってものすごく “マメ” ですよね。
ジンノさん:たまに言われますね(笑)。税理士試験の勉強をしていたときも、いつも朝のうちに勉強してました。仕事が終わって帰ってきたら誘惑も多いし、勉強する気なくなっちゃうじゃないですか。
ジンノさん:ブログもそうなんですよ。帰ってから書くのは大変なので、エネルギーがある朝のうちに2時間くらいかけて書くんです。
——それを700日以上も実践されているのがすごいです。
ジンノさん:おかげさまで続けられています。やっぱり朝がいいんです。それに、大抵のカフェやワークスペースってオープンデスクになってるじゃないですか。税金の仕事って個人情報を扱っているので、クローズドな場所じゃないとできないんですよね。
なので税金の仕事は家でやって、ブログのネタを考えたり本を読んだりするのにワークスペースへ来るんです。
——じゃあ基本的な仕事の時間帯は、事務所に勤めていたときと変わらないんですか?
ジンノさん:いや、以前よりも早いですね。朝5時からブログ書いて、朝ごはんを食べて、税金の仕事をして、お昼ご飯を食べて。また再開して、14時とか15時くらいに「今日の仕事終わりー」って。それ以降はフリーなので、ふつうにゲームとかしてることもあります(笑)。
——意外ですね。「仕事は15時までに終わらせる」といった、ある程度の時間を決めているんですか?
ジンノさん:そうですね。決めておかないとずるずるやっちゃいますし、税金の仕事ってやっぱり期限がある仕事なので。
逆算して今日はこれ、明日はこれみたいな。ライターさんやデザイナーさんみたいに、粘ればクオリティが良くなるもんでもなくて、「あと1時間粘ればもっといい申告書ができる」とかありませんからね(笑)。
——お話を聞いているだけでも、生産性の高さや効率化されているのが窺えます。
ジンノさん:比較的そうかもしれません。僕は残業も否定派です。忙しくても、その日に「ここまで」と決めた仕事が終わったら帰ってました(笑)。月の残業時間も多くて20時間くらいでしたね。
フリーランスになってからは、やっぱり公私の隔てがなくなってますけどね。でも、ひとりなので誰かに言われることもありません。むしろ、ひとりだからこそ、気持ち的にも時間的にも、お客さんの相談が受けやすい状態をつくれています。
ジンノさんの得意分野「相続税」
——ところで「税金」といっても、いろいろあると思うんですけど、ジンノさんは何に詳しい人なんですか?
ジンノさん:僕は「相続」が主ですね。あと、中小企業やフリーランスの方々のために経理や確定申告のサポートもしています。
相続の「申告」業務は100件以上行なってきました。同じ相続関連でもいろいろな案件があるんですけど、お客さんが来はって、「相続のこんなんどうしたらええかな?」みたいな、ざっくりとした相談も受けたりしていたので、相続についてだけでも全部合わせれば200件以上は対応をしてきましたね。
——200件! すごい数ですね。相続案件だけで200件以上っていうことは、他の細かいものも合わせるともっと多く関わってきたわけですね。
ジンノさん:そうですね。独立する前は50年以上やっているような古い事務所にいたんですけど、京都って老舗の企業が多いので、老舗の飲食店を見させてもらっていました。
その事務所に勤めていたときは、後半の2年間くらい、ほとんど相続しかしてないです。これって税理士としてはかなり珍しいらしいんですよ。
相続の案件って、税理士が年に平均1件やるかやらへんかくらいなので、その状況のなかで、4年半で100件やったっていうのは僕の強みではありますね。
個人の遺産相続もあれば法人の顧問先の相続もあるので、法人のこともよくわかっていないといけなくて、相続に限らず、法人関係の税金の相談(事業承継)も受けています。
——相続ができると、いろいろな相談が受けられるようになるんですね。その分、学ばなければならない範囲が広いから、できる人が少ないと。
ジンノさん:そういうことです。それに、民法も理解していないとできないので、ルールがややこしいんですよね。「わからない」とか「やりたくない」っていう税理士さんが多いのが相続なんです。
なので、僕が事務所を辞めるって言ったときには、めっちゃ怒られました(笑)。
——そうですよね(笑)。民法となると、家族関係の問題なんかもありますよね。
ジンノさん:まさにそうですね。相続の話は答えがひとつじゃないんです。
たとえば確定申告だと、やっぱり税金が安いのが一番じゃないですか。だけど相続って「分け方」で税金がめっちゃ変わったりするし、「答えが税金じゃない」みたいなこともあって。そういうコンサルティング的な部分が、おもしろいところではありますね。
相続の世界は、家族の数だけ答えがあるし、税金だけが答えじゃない。分け方で、税金が倍くらい変わったりもします。
そういうのを目の当たりにすると、知らない人は損するよなあって思います。だからこそ、相手の立場になりきって考える想像力が大事なんですよね。
——なんだか、いままで僕が思っていた “税理士” のイメージが、ガラリと変わりました。税理士って、こんなに人間味に溢れた仕事だったんですね。
* * *
「若ハゲひとり税理士」として活躍されているジンノユーイチさん。
お会いして強烈に印象に残ったのは、努力を努力だと思わない意識の高さと、それ故のマメな仕事ぶりです。
「ハードルを下げる」「気づきを得てもらう」など、どこまでも相談者に寄り添う姿勢は、今回、初めてお会いした僕でも心から好感と信頼を寄せられる人でした。
“税理士” と聞いて、「お堅くて近寄りがたい」「敷居が高い」と感じていた人は、一度、「若ハゲ税理士・ジンノユーイチさん」に相談してみると、きっとそのイメージは払拭されるはずです。
文・写真:金藤 良秀(かねふじ よしひで)
バナーデザイン:松儀愛侑
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