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電力がガソリンに置き換われるのか②

300万軒の大停電が目の前だった

さて、ここからは国内の電力危機の状況をひも解いていきましょう。
それにはまず、電力は作り置きが難しいということを知っておいて下さい。
イメージはランチどきの繁盛店。
ランチのための仕込みをするとき、はけるであろう量を店主は想定して事前予測しています。
通常は100食。予備として10食は追加できる用意はあります。
大体はそれでまかなうことが出来ています。
ところが隣のパチンコ屋がオープンして予備分も含めて110食はあっという間に完売。
常連さんがお昼にありつけず不満顔です。
ときには雨や雪などの天候に左右されて、ランチで仕入れた食材を余らせてしまい今度は店主が不満顔。
電力も同じで蓄電には限界があり、予測が必要になります。
その日の気温や天候、曜日などによって日々変化するため、過去のデータなどを活用しながら、天気予報等も考慮し、その日の最大電力を予測するのです。

電力危機を迎えた日本の現状を語るのに、引き続き繫盛店の店主に出てきてもらいましょう。
日本の発電所を厨房に、電力を食材に例えた場合、昭和から令和まで駆け抜けたこのお店の厨房設備は比較的最新の調理機械もあるにはあるが、いまだ生産のメインは古い設備が主になっており、修理をしたり手をかけたりしてなんとか動かしているものも少なくない。
時代の流れで辞めざるを得なかったメニューがあり、それに関連する厨房設備の一部が停止し、なかには廃棄を検討しなければならないものもある。
「厨房設備を買い変えたりしたいんだけど、時代の流れがどこに転ぶか読みづらくてさぁ」店主がつぶやく。
輸入食材に頼っているこのお店では、世界中で食材の奪い合いが起きた影響でコストが上がり、購入できる量も限られてきている。(お客は途切れないのに!)
さらに安全に関しての流れが変わってきた。食材や調理方法などの基準変更の流れが起きたので、従来のメニューや調理方法などが難しくなってきている。
基準に合わせたくても現在の厨房設備だと・・・ってな感じでざっくりイメージしてもらったら、これからの話を理解しやすくなると思います。

はじめて電力需給ひっ迫警報が発令された日

2022年3月21日20時頃、東京電力管内(1都8県)で電力需給が極めて厳しい状況だとして、経済産業省は初めて「電力需給ひっ迫警報」を出しました。

電力需給ひっ迫警報とは 大規模停電のおそれ どんな節電対応が必要?【NHK】 https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20220322a.html

きっかけは、その5日前の3月16日に福島沖で起きた地震で火力発電所6基が停止(計約330万kW)したことに加え、翌日の22日は雨で太陽光発電の可動が厳しく最高気温が10℃以下と冬に逆戻りしたかのように大幅に気温が下がり、暖房需要が急増することが想定されたためです。

22日に東京電力パワーグリッドがTwitterで発信した情報によると、約500万kW(200万~300万軒)規模の停電が発生するおそれがあると述べられています。
もしも電力需給ができなければ、2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震に匹敵する大規模停電になっていたのです。(北海道胆振東部地震の大規模停電は約295万軒で日本歴史上最大のブラックアウトとして記録されています)

この景色がブラックアウトするのを想像すると恐ろしくなる

22日は悪天候で最高気温が10℃以下に冷え込み、太陽光発電がこの日発電した量は最大で175万Kw。なんとこれは通常時の1割程度の発電量でした。
確かに太陽光の年間発電量はこの10年間で22倍に増えていて、通常時の発電量は約1700万Kw。しかし肝心な時にやはり自然相手の再生可能エネルギーは融通が利かないことが露呈されてたといえます。

2016年にはじまった電力自由化で採算の悪化した火力発電施設は、2017年度からの5年間で廃止や運転休止が相次ぎ、供給力がおよそ1600万Kw(540万世帯分)の発電力を失っています。
さらにいま稼働している多くの火力発電所が老朽化しているのです。
再生可能エネルギーへの推進と、電力自由化(新電力の出現)の影響で火力発電所は以前ほどの採算がとれない状況になっており、維持コストもかかることから廃止しなければ電力会社の経営は苦しくなってきます。
また、そのような状況では老朽化した火力発電所を新設することへの投資も難しくなります。
しかし日本の発電の7割以上がいまだ火力発電所である現実を忘れてはいけません。
政府は再生可能エネルギーが稼働しなかった場合のバックアップとして、火力発電所などを維持するよう電力会社にはたらきかけています。東京電力や中部電力などの大手電力会社は経営サイクルに緻密な舵取りが要求されているといえます。

『2021年の自然エネルギー電力の割合/環境エネルギー政策研究所』参照しキンタンで2021年のグラフを製作 https://www.isep.or.jp/archives/library/13774

日本政府は増え続ける電力の需要に対して「電力自由化(新電力の出現)」と「新エネルギーへの転換」と「原発を止める」ということをそれぞれで推進したことにより、それぞれが嚙み合わず、全体的なグランドデザインがないまま来てしまった代償がきているといえます。
それぞれの問題が悪い部分では噛み合っているのがいまの状況で「電力自由化により発電所の経営に影響が出て、発電所の新設がしづらくなっている」ことに加え「発電所の老朽化」がおきており、「再生可能エネルギーが安定供給に向かないこと」で3/22のような電力需給ひっ迫警報が出る危機的な状況に対して、対応する術を失いつつあるのです。
そのため、電力に対しての新たなグランドデザインをする必要が急務となっています。

では、蓄電の技術はいまどうなっているのか。
EV車に蓄電するという未来は本当に可能なのか?
これは目下調べ中なので、追って執筆します。
次回は守屋がお届けする「EV化における選択肢の重要性」をお楽しみください。

キンタン 高橋


【切削加工の技術広場 キンタン】という中小企業応援型のWEBサイトを運営しております。
ものづくり日本が次の時代を迎え撃つためには「発見」が必要です。
そんな「発見」をみんなでつくる場で、楽しくがモットーのWEBサイトですので、ぜひお気軽に遊びに来て下さい。

《参考資料》
『需給ひっ迫警報 / 経済産業省』
『経済産業省 東京電力及び東北電力管内における電力需給ひっ迫について 4/7』
『2021年の自然エネルギー電力の割合/環境エネルギー政策研究所』
『国内の火力発電所 廃止や休止相次ぎ 5年で供給力540万世帯分減 / NHK』
『史上初めての電力需給ひっ迫警報発令 私たちが普段の生活でできることとは?/HATCH』
『北海道胆振東部地震の大停電(ブラックアウト)はなぜ起きた?原因と対策とは』
『電力需給ひっ迫警報とは 大規模停電のおそれ どんな節電対応が必要? / NHK』
『初の「電力需給ひっ迫注意報」 警報との違い すぐ使える節電方法 / NHK』


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