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絵による枕崎案内

ハロー。9/15(日)〜10/16(水)まで鹿児島県枕崎市にある南溟館である僕の初となる公立美術館での個展があります。先日の立川や町田でのイベントで関東にいる人も枕崎の個展に来てくれる人がいるみたいでうれしい。旅先で会うのはおもしろいよ。楽しみです。個展の準備も7割できてます。まだ工夫次第でもっとよくなるのでがんばります。

無限のコンポジション「枕崎編」

今回の個展用に描き下ろしたこの絵で僕の枕崎案内をしてみようと思います。
このひとつの絵を分割していろいろ描くタイプの絵は僕が「無限のコンポジション」と呼んでいるやつで今日までたくさん描いているんだけど、いろんなイメージを集約して僕にとってはイラストと絵画の中間みたいな存在です。では絵のひとつひとつを説明しますね。

1、鹿児島県の地図
鹿児島県は左に薩摩半島、右に大隅半島があり、かつてはそれぞれが「薩摩国」「大隈国」でした。枕崎は薩摩半島の南にあり、東シナ海に面しています。枕崎までの行き方はいろいろありますが、一番よく行くのは飛行機で鹿児島空港まで行き、そこから車で1時間半くらいで枕崎に行く行き方です。
時間があったら鉄道で行くのもいいですよ。吉祥寺から電車で行く場合、東京から新幹線を乗り継いで10時間半、鈍行列車の乗り継ぎだと一日半かかります。枕崎が近づくにつれてどんどんテンションが高くなります。今はあまりできないけどそんな距離と時間の移り変わりが感じられる旅が僕は大好きです。


2、灯台のモニュメント
駅の近くの観光案内所の横にあります。枕崎駅はJR最南端の終着駅ですがもともとは鹿児島交通南薩線という、枕崎と伊集院(現・日置市)を結ぶ私鉄の駅で昭和6年に開業しました。そしてそれから30年以上経った昭和38年に国鉄が乗り入れました。この時の枕崎は人口3万人を超えていました。
その後1984年に南薩線は廃止になり、枕崎駅は南薩線を運営している鹿児島交通の敷地に駅を借りていました。その後2006年に駅の敷地がスーパーのタイヨーになったので駅が100メートル移動しました。
この灯台のモニュメントは、今の駅からは少し離れたとこにありますが、ここがかつての駅舎があった場所だとわかります。
スーパータイヨーもぜひ覗いてみてください。焼酎の多さ、朝取れた魚、うまかっちゃんやサンポー、カールなど、関東のスーパーではあまりみかけないものを探すのも楽しいです。僕はなんといっても「ふくれ」という蒸しパンのようなお菓子が大好きです。

3、火の神公園
火の神公園は枕崎駅から車で10分くらい。駐車場もあります。公園はきれいな芝生で、目の前には東シナ海が広がり、海の先に見事な円錐型の開聞岳(薩摩富士)も見えます。岩場は茶褐色をした11万年前の溶岩と灰が合わさった溶結凝灰岩で石の加工がしやすく、枕崎のまちをあるくと石塀に使われているのを今も見ることができます。海を見ていると小さな漁船が通ったりしていてずっと見ちゃいます。種子島や大隅半島が見える時もあります。右には枕崎のシンボルの立神岩があります。高さ42メートル。江戸時代の図絵にも描かれていて、船人や漁師の守神でもありました。僕もこの力強く聳える立神岩にいつも挨拶します。

4、旧漁協本館事務所

僕にとっての枕崎のシンボルで、枕崎で一番好きな建築物です。昭和29年に建てられました。鉄筋コンクリート2階建は当時は全国的にも少なかったそうです。今年はこの建物が建てられて70年。きっとそのことを知っている人は枕崎でも少ないと思いますが、この横に長いコンクリートの無骨な建物は本当にかっこいい。枕崎港は全国2777ある漁港のうち13港しかない国が特に重要な漁港と定めている特定第三種漁港に指定されています。港町は独特の雰囲気があります。

5、駅名標
これは実際に枕崎駅にあるのと同じデザインではなく、僕が昔っぽくイメージして作りました。ご存知の通り、枕崎はJR最南端の始発・終着駅。沖縄のゆいレールができる前は、日本最南端でした。ここから北海道の稚内までつながる鉄路はなんてロマンチックなんだろう。「終着駅」はただでさえ旅情をかき立てる響きなのに、それが日本の端っこなんて枕崎の財産です。僕は学生時代から稚内は好きで何回も行っていますが今は枕崎の方が多く来ています。このふたつの市は友好都市で稚内は「昆布」、枕崎は「鰹」で「コンカツプロジェクト」という幟をまちで見かけて「座布団一枚!」と思いました。枕崎駅の隣の素朴で薩摩板敷駅もすばらしいです。その隣の白沢駅までが枕崎市です。

6、星
いやあ、星がきれいなんです。日にもよりますが、きれいな時は本当に光が空にはりついてるみたいです。僕はカシオペアとオリオン座と北斗七星くらいしか知らないんですが、知ってる人はすごい楽しいと思います。流れ星も見たことあります。

7、カツオ
カツオは漢字で「鰹」とかきます。魚偏に「堅い」、カツオという名前も「かたうお」から来ていると言われます。これは昔から干して堅くしたということです。天日干しだったのが室町時代に火で燻す方法が考えられ、カツオ漁業に革命が起こりました。これからさらに進化した方法が紀州で考案され、江戸時代に紀州の漁民が土佐、伊豆、そして枕崎にも伝わりました。枕崎にこの方法を伝えた人は森弥兵衛という人でこの人も紀州の人です。枕崎の人や漁業関係者や漁業関係者はこの森弥兵衛に伝授された方法を発展させ、現在は国内の半分近くを生産する日本一の鰹節のまち枕崎があるわけです。ちなみに枕崎は五月になると鯉のぼりではなく「カツオのぼり」が上がります。

8、指宿枕崎線
指宿枕崎線は鹿児島中央と枕崎をつなぐ線路で本当に見どころがたくさんある。いつも廃止対象路線に名前があがっているけどいつまでも残っていてほしいけど、僕もいつも乗っているわけではないので勝手なことが言えないのもわかる。とにかく今はあるので乗ってほしい。鹿児島中央駅から枕崎に行く列車は一日に3本くらいしかない、枕崎を出る列車は一日に6本です。だから駅に車両がとまっているとうれしくなる。指宿枕崎線は途中の西大山という駅で少し長く停車してくれます。ここはJR日本最南端の駅でそれを示す標柱と開聞岳をセットをみんな写真に撮る。そこから枕崎に向かう路線では線路の周りの木というか藪が窓をカサカサいってスリリングでおもしろいです。のどかな風景をぜひ感じてください。

9、焼酎
いよいよ最後ですね、焼酎です。焼酎は枕崎に限らず薩摩の名産なんですが、実は500年の歴史があります。芋焼酎が薩摩に定着したのは江戸時代のことですが、それまでは芋の他に、米、麦、粟、桑の実などを原料として薩摩藩の南の島々で作られていました。しかし1705年に頴娃のの漁師さんがさつま芋(唐芋)を琉球から持ち帰り、広めてからはシラス大地の薩摩地方にはさつま芋が救世主となり、広まっていきました。僕はそんなにお酒は飲まないけれど、鹿児島で焼酎やさつま芋を見ると、薩摩の先人の知恵と努力が感じられて本当にいいです。今の自分たちにも学べるものがあると思います。

以上、一枚の絵から枕崎をざっと語ってみましたが、枕崎、鹿児島はそんな歴史やこの地に生きた人々の知恵が感じられる場所なんでぜひ来てください。
そうだ、もうひとつ絵がありました。


10、キン。
僕の公立美術館で初の個展は9/15(日)〜10/16(水)まで枕崎、南溟館で開かれています。初めて枕崎に来る人も枕崎に住んでいる人も遊びに来て枕崎のよさを再発見しましょう。

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