観察!原田樹里

同業者、しかも同じ劇団員のことを、勝手に分析して、偉そうに褒めている記事です。

他人の分析より、てめーの演技どうにかしろこの色白男!ひよこ!小鳥!と思われる方もいるかもしれませんが、自分のことは棚に上げさせてください。
もとより、他人の演技を分析することもまた、自分の演技のためだとも思いますし。おすし。小僧寿司。

演技に関して、わたしはわたしなりに自分のスタイルとか、得意なこととかを把握しているつもりです。あくまでも自分なりにね。

そんなわたしが、どうしたって及ばない、光り輝き方が違う俳優がいます。

同じ劇団で言うと、男優なら筒井俊作。阿部丈二。
女優なら石森美咲。それから原田樹里(きり)。

今回の作品「ミス・ダンデライオン」では原田樹里となんだか久し振りに相対している感じがあり、彼女が演じる「鈴谷樹里(じゅり)」を稽古場で、本番で、そばで見てきて、「あらまぁ、すごいなー」と思うことが色々感じられて、「ねぇみんな!原田の凄さ分かってる!?」って、めちゃくちゃお節介にも言いたくなったのです。

わたしは自分の演技スタイルを、無理矢理あらわすとするならば、「誘い込み型」と思っています。
内側にちゃんとグラグラと滾(たぎ)る気持ちはあること前提で、極力、表現には出さないで、尻尾だけ見せておいて、見ているお客さんの興味を引いて、誘い込む。
「なんだろうなー」と覗き込んだところを、グワっと肩を掴んでパクッと丸呑みにするという、もはや何の話をしているか分からなくなってきましたけど、そんな感じだし、そんな感じでいたい気持ちもあります。

上で挙げた筒井さんや阿部丈二や石森美咲は、わたしから見たら「強襲型」です。

お客さんが興味があろうが無かろうが、相手の懐に飛び込んで、気持ちのパンチを浴びせ続ける。

このファイトスタイルは憧れます。

わたしの「誘い込み型」より断然効率が良く、より多くの人を巻き込むことができます。
その分、とてつもないパワーが必要です。

原田樹里はわたしから見たら万能型で、「強襲」も「誘い込み」もできる。

「芝居の三半規管」が優れていて、体操の平均台のように、とてつもないバランス感覚で、落下せず、次々と技を決めていく感じ。

主演で、かつ狂言回しのように物語を推進させていかなくてはならない役では、相手役との応酬でしばしば落下しそうになるものなのです。でも、落ちない。

入団したときから「強い芝居」が出来る女優でした。それだけでも戦力だし、武器だったのですが、歳を重ねて、「強さ」に「しなやかさ」が出てきたように感じます。

わたしは演技の表現として台詞にこだわりたい「台詞マニア」なんですけど、まぁ原田の台詞には強さがあって、それなのに微細なニュアンスを欠かさない。

彼女と台詞をやりとりしていく中で、「息があわねぇな」とか「喋りにくいな」と思うことがないのです。(向こうはどう思っているかは知らない)
これは、すごいことです。

あとあいつ、ダンスとかもやってやがるから、身体もきくし、身体の表現もできるし、やはりしなやかさもあるし。

褒め殺しでしょうか。

若かりし頃、ひねくれトゲトゲボーイだったわたしは、こと演技に関して、ついつい他人の粗探しをしてしまうボーイだったのですが、歳を重ねて、だんだん人の良いところを見られるように、やっとなってきたからってのもあります。

ゲネプロのとき、台詞の合間合間に鼻をすする原田を感じました。込み上げてくるものがあると、鼻にくるのはよくあること。
ゲネ終わり、少しでも先輩としての矜持を示そうと

「原田よ。鼻水なんて俺は気にしないからな。どんどん出していこうぜ」

と声を掛けようと近寄ったところ、先に声を掛けられて

「多田さん。鼻くそついてましたよ」

と言われました。

いい女優ですわ。ほんと。

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