再演やれやれ派
『トリツカレ男』1回目の通し稽古がありました。
上演時間は2時間4分。
もっとテンポを良くして、2時間以内の上演時間を目指します。
通し稽古が終わったあと、少しスタッフさんと雑談まじりに話をしました。その方は2007年の初演、2012年の再演でもついてくれたスタッフさんです。
「ぶっちゃけ懐かしくって最初から感動してたよ」
そんな言葉をいただいて、少し肩の荷が降りました。
超個人的な考えなんですけども。
わたしは「再演やれやれ派」です。
キャストが揃わないとか、時代に合わないとか、前回の公演からまだ月日が経ってないとか、まぁいろいろあるのかもしれませんが、「名作」はどんどん再演するべきだと思っています。
いつの時代の上演にも耐えうる、なんなら時代とともに見え方が変わっていく作品が「名作」だと思っています。
演劇界はなんとなく「新作」が持て囃される風潮があるような気がしますが、そのために人知れず、名作が埋もれていってしまっている気がします。
再演ものをやることになると、どうしても「新しいものを作らねば」とか「前回を越えなければ」という意識が働きますが、最近はもうそんなことどうでもよくなってきました。
わたしはレ・ミゼラブルが好きですが、オープニングの音楽が流れただけで、このあとにどんなことが起こるのかブワーッと頭の中に渦巻いて、それだけで感動したり、総毛だったりするのです。
これは、「知っている人」の特権感情です。
繰り返しの再演は、この特権感情を持つ人を増やしていく作業でもあります。
もちろん初見の方への配慮も忘れてはいけませんが、この特権感情をきちんと利用したり、刺激したりすることが重要だと考えます。
この感覚に甘えて努力を怠るのではなく、前回までの財産をきちんと資産運用して、増やして、また後世に残していく感覚でしょうか。
『トリツカレ男』を見たことがある人なら、わたしが演じるタタン先生を見ながら、前回演じた西川さんの影を感じてくれてもいい。それで感動してくれるなら、ほんと、それでもいいと思ってやっていますし、わたし自身、西川さんのタタン先生を大いに参考にしている部分もあります。
とにかく、どんな見方をしてくれたって構わないし、それはお客さんの自由だし、わたしたちが侵すところではないのです。
『トリツカレ男』は間違いなく「名作」です。
どんな方だって、心を動かす力がある作品だと思っています。
まだ初日前ですが、千秋楽を迎えても、この作品がこれからもどこかで上演され続けることを願っています。