主演論
たいそうなタイトルです。
演劇の主演やメインをやらせてもらうことの多い俳優半生でした。自慢で放った訳ではないですが、自慢に聞こえる人もいるでしょう。それはマジで価値観のそれぞれです。
中肉中背で、特にこれと言った個性がない故、かもしれません。
演劇大学時代、試演会で「ひめゆりの塔」を上演しました。わたしは男性キャストで最も出番のある先生役をあてがわれました。
演出助手をやっていたOBに、「多田にはメインをやらせたくなる」と言われたことがあります。
これをわたしは褒め言葉だと受け止めていました。
先の記事でも書いたかもしれませんが、わたしは台詞の多さや出番の多さがそのまま、やりがいに直結すると感じる俳優です。
(補足。出番が少ない役のやりがいがないわけではない。出番が少ない役だって100のやりがいを感じる。出番の多さに準じて加点されていく感じ。2時間出ずっぱりの役でも、せいぜい加点は最大でプラス100点くらい。の感じ。)
そういうわけで、主役とかやらせてもらいやすい属性だったらラッキーじゃんと思っていたのです。
ですが。
これは実に大変な属性であることをここ最近でやっと感じ始めました。
なぜなら歳を重ねるごとに、主役となる役が無くなってくるからです。
世の中の物語の多くは、10代〜20代の男女がメインなのです。
別に統計を取ったわけではないのですが、もうそれは体感的にそうなのです。
もちろん30代〜50代の物語も無いことは無いですが、やはり相対的に見て少ないでしょう。
ということは、「主役属性」のわたしは、歳をとるにつれ、これからなかなかキャスティングされにくくなるということです。
基本的に物語に主役は1人しかいません。その少ない枠を奪い合わなくてはならないのに。それなのにわたしはもうアラフォーです。
この辺に結構、危機感を覚えています。
劇団公演や客演などで主演が続いたりしたときに、「もう俺の主役なんて食傷気味なんじゃないかな。」なんて思った時期もありましたが、今なら声を大にして言えます。
主役やヒロインはやれるうちに、声をかけてもらえるうちにやれるだけやっておけ、と。
周りの感じ方なんて気にするな。
いずれできなくなるのだから。
これまたあまり共感されにくい思いではあると思いますが、若い俳優の皆様方に置かれましては、こんな中堅俳優の思いもあるんだな、てことを小指の爪の垢程度、気にしてもらえると嬉しいです。
わたしの属性も変えていく必要がありますが、メインと呼ばれる配役にお声がかかるうちは、堂々とお受けしていきたい所存です。
もちろんメインじゃなくてもいいんですよ、ホント。どんな役だって一生懸命やります。
なんかどうしたってメインと脇役で差があるみたいな文章になってしまいますね。
どっちが偉いとか、優劣の話ではないです。
わたしの属性も臨機応変に変えていく必要があります。
願わくば、高齢化社会とともに、40代〜が主役の物語がもっともっとたくさん出てくることも少し期待しながら。
先細りしていくキャスティングに抗いながら、歳を重ねていく恐怖に、やっと気づき始めた37歳の俳優です。
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