編集後記『誤嚥性肺炎 50の疑問に答えます』
医学領域専門書出版社の金芳堂です。
このマガジンでは、新刊・好評書を中心に、弊社編集担当が本の概要と見どころ、裏話をご紹介し、その本のサンプルとして立ち読みいただけるようにアップしていきたいと考えております。
どの本も、著者と編集担当がタッグを組んで作り上げた、渾身の一冊です。この「編集後記」を読んで、少しでも身近に感じていただき、末永くご愛用いただければ嬉しいです。
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■書誌情報
あらゆる診療科で誤嚥性肺炎をみる機会が増えています。臨床現場で出合う様々な課題、疑問に、どのように対応すればよいかをわかりやすく解説しました。
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■編集後記
こんにちは。編集部のNです。
今日は、2021年12月上旬発売の『誤嚥性肺炎 50の疑問に答えます』をご紹介します。
早速ですが、皆さん、表紙をご覧ください。親しみがわきませんか?
本書は医学書ですが、多くの方に手にとってもらいたいなという想いから、このようなデザインにしました。
ちなみに、著者の先生方やイラストレーターさんとは、表紙のQとAを「Qちゃん」「Aちゃん」と呼び、制作を進めていました(皆さんも、段々、親しみがわいてきたのではないでしょうか?)。
さて、本書の内容ですが、医師や看護師、理学療法士、言語聴覚士など、医療従事者向けの誤嚥性肺炎のQ&A本です。
超高齢社会の日本の医療現場で今、誤嚥性肺炎に出合う場面が増えてきています。その中、医療従事者の疑問や悩みも増えつつあります。
本書は、誤嚥性肺炎について、日々、切磋琢磨しながら、診療に取り組んでおられる吉松先生・山入先生に、現場の疑問や悩みに答えていただきました。現場目線で、丁寧に答えていただきましたよ。
また、ご執筆の先生方からメッセージをいただきました。
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■推薦文
推薦のことば
もともと緩和ケアを目指していた呼吸器内科医である吉松医師と山入医師の雄編です。淀川キリスト教病院の元同僚であり、全人的医療を当たり前のものとして血肉にしてきた二人です。中を歩くだけで全体からハートウォーミングなオーラが出ている病院で切磋琢磨した二人の高齢者医療に対する熱意はただならぬものを感じます。
まったくの余談ですが、私は医学生の頃、淀川キリスト教病院に憧れていて、同病院のマッチングの筆記試験と面接を受けたことがあります。あまりに人気だったため(応募は200人を超えていたと思う)、まったくマッチ上位に入れなかった記憶があります。
今後、市中肺炎よりも遭遇する頻度が高い疾患が誤嚥性肺炎です。高齢化社会を迎えるにあたり、どの診療科も避けては通れません。20年前の医師国家試験なら「絶食」、「アンピシリン/スルバクタム」を選べば正解がもらえましたが、今の医療現場では違います。絶食、安静臥床、抗菌薬というモノトーンな誤嚥性肺炎診療は前時代的となったのです。
「医師が指示しても、リスクが高いから他職種は食べさせたくないという」、「絶食にしないと、再度誤嚥したときにインシデントになってしまう」、「老衰だからあまり無理させたくない」など、医療従事者側にはいろいろな思いがあるでしょう。私も「自分の家族ならこうしたいけど」と本音を持っていても、医療安全的な側面を考慮して対応しなければならない病院側の事情もよくわかります。落としどころに迷って「絶食、内服時のみ飲水可」という指示を出している医師もいるかもしれません。しかし、本書ではその矛盾点を優しく指摘しています。私も、誤嚥性肺炎の患者さんから幾度となく「死んでもいいから食べたい」と言われたことがありますが、呼吸器内科医になったばかりの頃「それはだめです」と言ってしまった対応を、今でも悔やんでいます。
誤嚥性肺炎は、個々の医療従事者だけでなく病院全体のポリシーが問われる疾患です。多職種が集まって、協力してゴールに向かって歩き出さねばいけません。ただ肺炎を治療するだけでなく、退院後の生活を考え何度も話し合わなければ、解決できない問題がたくさんあります。
私にとって、誤嚥性肺炎とは、どちらかといえば医療者が苦しい思いをして対峙する疾患だと思っていました。しかし、著者の二人は決して悩み苦しみ抜く疾患として捉えておらず、患者さんに何ができるだろうかという突破口を見つけることをまるで楽しみにしているかのような、前向きな姿勢です。
たぶんそれは、「何を以て誤嚥性肺炎の治療と成すか」について、見えている景色が私たちと少し違うからかもしれません。であれば、一度本書で視点を変えてみませんか。
国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科
倉原優
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■序文
はじめに
誤嚥性肺炎の診療は、単調なようで、奥深い世界です。鑑別診断や抗菌薬治療はもちろん、栄養面への介入、体調の変化への対応、他職種との協力体制、家族背景や退院後の生活への配慮、終末期医療……。医師として長く臨床をしていくうえで、大切なことがたくさん詰まっています。これほどの全人医療を教わる機会はなかなかありません。若手の頃に患者さんに向き合って真摯に診療することで、専門分野に進んでからも必ず役に立つものです。
私たちは卒後まだ何もわからないときに、淀川キリスト教病院の呼吸器内科で、研修を始めさせていただきました。それはそれはあたたかい先生方に、医師としての在り方を昼夜、教わりました。誤嚥性肺炎の患者さんを主治医として受け持ち、全人医療を目の当たりにしました。研修後も呼吸器内科を専攻し、患者さんのために身を粉にして働く先生方の仲間に入れていただき、育てていただきました。思いやりあふれる看護師に、患者さんに尽くす心を教わりました。各療法士や栄養士、薬剤師、社会福祉士にいつも助けられ、広い視野をもって、導いていただいていました。
当時は呼吸器内科を学んだのちに緩和ケア医になると偶然にも同じ目標を抱いていた二人が、今も呼吸器内科医の道を歩んでいるのは、決して偶然には思えません。初めの5年間で教わったことを基盤に、嚥下やリハビリを学んできた吉松と、感染症領域で修練を積んだ山入が力を合わせ、一冊の本となりました。誤嚥性肺炎の診療で抱く疑問を、少しでも解決へ導く道しるべとなることを願っております。
2021年11月
飯塚病院呼吸器内科
吉松由貴
大阪市立総合医療センター呼吸器内科
山入和志
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■主要目次
推薦のことば
はじめに
第1章 誤嚥性肺炎かなと思ったら(外来編)
Q1 そもそも誤嚥性肺炎って?
Q2 誤嚥性肺炎と誤嚥性肺臓炎の区別は?
Q3 胸部CTは必要?
Q4 鑑別疾患は?
Q5 外来での原因精査は必要?
Q6 グラム染色は必要?
Q7 血液培養や尿中抗原検査は必要?
Q8 入院適応は?
Q9 抗菌薬選択のポイントは?
Q10 外来ではどのような面談が必要?
第2章 入院で受け持つことになったら(病棟編)
Q11 病歴聴取や身体診察で、気を付けることは?
Q12 誤嚥の原因の調べ方は?
Q13 原因疾患に応じた対応は?
Q14 はじめの指示の出し方は?
Q15 はじめは絶食?
Q16 薬だけ続けていい?
Q17 口腔ケアのコツは?
Q18 吸引の目安や、排痰のコツは?
Q19 呼吸リハビリテーションは、いつ行う?
Q20 不穏時の鎮静や抑制は、やむを得ない?
Q21 STの介入は、いつ依頼する?
Q22 食上げはいつ、どのようにする?
Q23 むせない誤嚥は、どうみつける?
Q24 嚥下内視鏡や嚥下造影はいつ行う?
Q25 胃管やCVはいつ使う?
Q26 気管切開があっても食べられる?
Q27 食べてくれないとき、どうする?
Q28 とろみを嫌がられるとき、どうする?
Q29 培養での検出菌の評価は?
Q30 治療効果判定はいつ、どのようにする?
Q31 熱が再燃したら、広域抗菌薬に変更する?
Q32 また誤嚥してしまったので、絶食?
Q33 誤嚥性肺炎を予防する薬は?
Q34 胃瘻やCVポート、誤嚥防止術の適応は?
Q35 入院中の面談で気を付けることは?
Q36 算定できる加算は?
第3章 退院に向けて(退院支援・地域連携編)
Q37 退院か、転院か?
Q38 転院が不安といわれたら?
Q39 診療情報提供書の書き方は?
Q40 退院時の食事指導は?
Q41 受診の目安や、地域との連携は?
Q42 誤嚥しやすい患者さんを外来でみるには?
Q43 家でもできる評価や訓練は?
Q44 肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンの効果は?
第4章 どうしてもよくならないとき(緩和ケア編)
Q45 嚥下機能がよくなるかどうかの見極めは?
Q46 ご家族に納得してもらうには?
Q47 「死んでもいいから食べたい」といわれたら?
Q48 生命予後の予測方法は?
Q49 痰絡みなど、つらい症状を緩和するには?
Q50 ご家族のケアは?
ひとやすみ(コラム)
(※詳細目次は弊社ウェブサイトよりご確認ください)
■サンプルページ
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■終わりに
今回の「編集後記」、いかがでしたでしょうか。このマガジンでは、金芳堂から発売されている新刊・好評書を中心に、弊社編集担当が本の概要と見どころ、裏話をご紹介していきます。
是非ともマガジンをフォローいただき、少しでも医学書を身近に感じていただければ嬉しいです。
それでは、次回の更新をお楽しみに!
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