編集後記『ケースで学び病態を理解する 頭部外傷の診かた』
医学領域専門書出版社の金芳堂です。
このマガジンでは、新刊・好評書を中心に、弊社編集担当が本の概要と見どころ、裏話をご紹介し、その本のサンプルとして立ち読みいただけるようにアップしていきたいと考えております。
どの本も、著者と編集担当がタッグを組んで作り上げた、渾身の一冊です。この「編集後記」を読んで、少しでも身近に感じていただき、末永くご愛用いただければ嬉しいです。
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■書誌情報
『ケースで学び病態を理解する 頭部外傷の診かた』
編集:横堀將司(日本医科大学付属病院高度救命救急センター)/末廣栄一(国際医療福祉大学脳神経外科)
B5判・208頁 | 定価:4,840円(本体4,400円+税)
ISBN:978-4-7653-1881-5
取次店搬入日:2021年11月01日(月)
頭部外傷に出合うことのある専門医へ、頭部外傷治療などを症例をあげながら解説します。
■編集後記
こんにちは。編集部のNです。
今日は、『ケースで学び病態を理解する 頭部外傷の診かた』をご紹介させていただきます。
本企画のスタートは、東京オリンピック開催前。その頃、スポーツへの関心が高まり、スポーツ人口も増えていました。それに伴い、スポーツ関連の頭部外傷や脳振盪などにも、関心が寄せられていました。臨床現場では、軽症・中等症の頭部外傷も増えつつある中、編著者の横堀先生とお話しし、スタートしたのが本書です。
執筆者には、現役世代のエキスパートの先生方を迎え、経験や知識を詰め込んでいただきました。また、ケースをあげて解説していますので、頭に入りやすいのではないでしょうか。
ぜひ、救急専門医、脳外科専門医、研修医の先生方、また外傷でも「頭は苦手」と思う先生方に、手にとっていただけますと幸いです。
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■序文
「頭部外傷の病態は、複雑であり不安定である」というフレーズがある。これは急性期の損傷脳が相対的虚血状態にあり、興奮性神経伝達物質やフリーラジカル、炎症性サイトカインなどの放出や、細胞内カルシウムの増加などが誘導され二次性脳損傷が生じることから謳われるようになった。また、経時的に変化するため、先読みの対応も求められる。そのような頭部外傷の治療は煩雑なうえに予後が悪いため、これまで治療に関わった先生方の中には、治療意義を感じられないという方もいらっしゃるのではないだろうか。
頭部外傷の形態は時代と共に変化し、以前は脳神経外科診療の多くを占めていた重症頭部外傷は減少し、軽症・中等症頭部外傷の割合が増加している。これは高齢者の転倒、スポーツやレクリエーション活動における頭部外傷が主となっている。これらは時に日常生活に支障をきたす高次脳機能障害が後遺し、復職が妨げられ、結果的に社会的孤立者を生み出す。
近年、治療ガイドラインなどマニュアル本が溢れ、ある症候に対して無為に対応することが増えている。実臨床において単純作業的な治療では、逆に病態悪化へ移行することがあり得る。これは前述のような病態を理解していないことが原因である。
頭部外傷の治療は頭蓋内圧管理をすることではなく、病態を踏まえた脳循環代謝の安定化が目標である。と同時に二次性脳損傷の予防も重要である。つまり我々は多くの因子が関与した原因と病態を正確に理解し、未然に二次性脳損傷を防ぐ治療戦略を練る必要がある。
このテキストはまさに現役世代のエキスパートの先生方が、実に複雑な頭部外傷の病態をわかりやすく説いている。この解説を読めば私と同様に“頭部外傷の治療は面白い!!”と興味を持ち、治療ガイドラインやマニュアル本の真意が理解できるのではないだろうか?
サイエンスに基づいた教育を得てこそ応用が可能である。応用力を要する頭部外傷治療の質の向上に、少しでも貢献できれば本望である。
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■主要目次
編集者・執筆者一覧
序文
第1章 疫学:わが国の頭部外傷
第2章 外傷初期診療の中での脳外科診療
第3章 抗血栓薬内服患者への対応
第4章 頭部外傷患者における凝固障害への対応
第5章 頭部外傷とてんかん
第6章 頭部外傷の病態と診断:局所性脳損傷
第7章 頭部外傷の病態と診断:びまん性脳損傷
第8章 頭部外傷の病態と診断:外傷性頭頚部血管障害
第9章 頭部外傷の手術適応と方法:穿頭術
第10章 頭部外傷の手術適応と方法:開頭術
第11章 頭部外傷の手術適応と方法:外傷性髄液漏、視神経管骨折・視神経損傷
第12章 ICP管理と神経集中治療①基本
第13章 ICP管理と神経集中治療②実践
第14章 頭部外傷と血液バイオマーカー
第15章 小児頭部外傷への対応
第16章 高齢者頭部外傷への対応
第17章 軽症頭部外傷・脳振盪・スポーツ頭部外傷への対応
第18章 高次脳機能障害への対応
索引
編集者プロフィール
(※詳細目次は弊社ウェブサイトよりご確認ください)
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■サンプルページ
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■終わりに
今回の「編集後記」、いかがでしたでしょうか。このマガジンでは、金芳堂から発売されている新刊・好評書を中心に、弊社編集担当が本の概要と見どころ、裏話をご紹介していきます。
是非ともマガジンをフォローいただき、少しでも医学書を身近に感じていただければ嬉しいです。
それでは、次回の更新をお楽しみに!
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