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第5走者:大塚篤司先生【皮膚科医】

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このマガジンは、2021年4月発売の

『Dr.ヤンデルの病理トレイル 「病理」と「病理医」と「病理の仕事」を徹底的に言語化してみました』(著:市原真/刊行:金芳堂)

について、病理医・臨床医の皆さまに読んでいただき、それぞれの視点から感想と、「病理」に関する考えを書評という形でまとめていただいたものです。

「病理トレイル 書評リレーマラソン」と題したこのマガジンを通じて、「病理」とは、「病理医」とは、「病理の仕事」とは何かを感じ取っていただけると幸いです。

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■評者■

大塚篤司
近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授

05.大塚篤司先生

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■病理医の目

私は病理が得意ではない。

いや、はっきり言おう。正直、病理がずっと苦手だった。

近畿大学皮膚科の主任教授となると決まった年、私はあわてて病理の勉強をはじめた。教科書を何冊も読み込み、Youtubeで解説動画を食い入るように観、そして顕微鏡を覗いた。

チンプンカンプンだったミクロの世界が、ある時、意味のある空間に変わった。世界が一気に広がった瞬間だ。皮膚病理がわかるようになり、普段見ている皮疹の見え方が変わった。驚きとともに、これまでなんてもったいないことをしていたのだろうとひどく反省した。

病理がわからずとも医者はできる。優秀な病理医がいればコンサルトすればいい。自分で全部分かる必要はない。しかし、である。病理がわかると世界が広がる。二次元の世界でしか見えなかった疾患が3次元の広がりを見せる。経時的な変化を含めれば4次元だ。病理がわかれば抜群に臨床が楽しくなることを保証しよう。

病理がわかるようになって、あーなるほどと思うことがある。ヤンデル先生は医療情報の発信に関して病理医的に観察していたのだ。肉眼で観察できる変化の奥にある細胞や組織の動き。「あの話はここにつながってきますね」という彼の目線はまさに病理医そのものだ。臨床医が見ているものの、その下でつながっている共通項をいち早く見出している。

病理医の目を持てば人生の見え方がまた変わってくるだろうか。私も病理医の目を持ちヤンデル先生が見ている世界を一緒に享受したい。

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■書誌情報■

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Dr.ヤンデルの病理トレイル 「病理」と「病理医」と「病理の仕事」を徹底的に言語化してみました

著:市原真
札幌厚生病院病理診断科
定価 3,080円(本体 2,800円+税10%)
A5判・278頁 ISBN978-4-7653-1862-4
2021年04月 刊行

病理医は何を見て、何を考えているのか。医療という壮大なトレイルで一体何をしているのか。病理医の立ち位置、臨床医との関わり、そして病理診断――病理医の無意識の領域に迫り徹底的に言語化する試み。


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