Ballade
たまたま、とある作中にでてくる登場人物を気に入って、”ショパンのバラードを弾いているピアニスト”という設定だったのがきっかけで、作ろうとなったのが、この「Ballade」。
作るきっかけとなった作品のストーリーは、
わりとよくある感じだったけど、
私はどこがそんなに気に入ったのかな、と考えれば。
ピアノが自分の全てだと思い、自分の評価も存在も、ピアノありきで測っていたピアニストの話。
ある時スランプに陥り、弾くことをやめようとしていた時に、とある人と出会ったことをきっかけに、ピアニストの世界は広がっていく。
ピアノ以外のものが自分の世界に初めて見えたことで、改めて自分にとっての”ピアノの価値”を再確認した…というそんなストーリー。
きっとそんな風に、
自分の世界を変えてしまうような
出会いをすれば、それは特別に感じるだろうし。
自分にとって、とても大切なものに向き合う勇気をくれた人だなんて、
他の誰よりも大切にしたくなるだろうなぁ。
大切だと思っていたものを、
本当に大切に出来るようになったのだから。
…と、妙に想像力を働かせて見てしまった(笑)
最終的にそのふたりは、
”くっついた”とも”お別れした”とも
どちらもあるのだけれど。
案外、お別れする方もいいなーと思っている。
…というのは、あまりロマンスがないひねくれた見方かな😅
最後にピアニストが言う
「この曲を弾くときは、君のために弾くよ。」
作中そのままではないけど、
こんな感じのセリフがまたいいの(笑)
そんなわけでkinotoの「Ballade」は、
私がすき!と思った作品からインスピレーションを受けて、連想に連想を重ねて、あの形になったというわけです。
***
かのショパンは、バラードを作曲する時に
ポーランドの詩人が書いた詩からインスピレーションを受けたという。
そもそも「バラード」という言葉は
「物語」という意味から成り立っているらしい。
ショパンが詩の文章的「物語」を曲で表現しようと作曲したのか、という点については諸説あるらしいけど、
ホントのところは何にせよ、
「バラード」という曲名と曲の持つ構成から、
聴き手側に何か連想させる余白を持たせたまま作品として残っているのが、
なんともかっこいいなと思う。
私がこの「Ballade」を作るきっかけは
”あの二人”の物語だったわけだけれど、
あくまでもそれは、私のお話しであって。
「Ballade」という言葉、曲、そこから連想されるものは、私の話に制限されずにこれを身につける人にとっての、お話しであって欲しいとも思う。
別にそれは、綺麗だな、とか
そういう感覚的なものでもなんでもいい。
何かしらのインスピレーション、
記憶、感情、連想を与えるものになってほしいと思う。
***
ピアニストの話には、
数年後にあたる後日談があって、
バラードを弾く後ろ姿だけが映る。
表情は見えないし、
大切なあの人との描写も何もないけど。
ただ、
ピアニストの心の中に
その人の存在があるということだけは、確かだ。