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【連載エッセイ】余生ーわたしは何処へ向かうのかー4話


◆3話のような経緯で弟との同居生活が始まった◆


上手くいく筈がないのだ…。

だいたい、弟は常に私にイラついている。不信感もあるのだろう。

私が自己破産をするまで、経営の方は大丈夫なのかと何度も弟から聞かれていた。

弟は経理、管理職の経験もあったので『帳簿を見せてくれれば、何が無駄かの判断も出来るし、事業計画も考えてあげられる』
行き当たりばったりの姉の経営が心配だったのだろう。

でも、何故か弟に弱みを見せたくなかった。
『すごく儲かってる訳じゃないけど生活は出来てるから大丈夫だよ』
と、いつも答えていた。

だから弟は、ずっと大丈夫だと思っていたのだ。
もし、不安な事があれば相談してくるだろう。姉弟なのだから…。

ところがである。
弟に私が相談したのは、もう自己破産するしかない状況になってからだ。
相談……というか、決意表明に近かった。
そして弁護士費用貸してください…だ。頭に来るのも分かる。

弟が私にイラついているのには理由があるし、それがもっともな理由だから弟の言動に傷ついてもムカついても、言い返せないのだ。

そして姉弟関係に置いて、現在私が圧倒的弱者なのは、弟にお金を借りているからである。
おまけに小さい額ではない。

いくら私にイラついているからとは言え、そこまで言うか?そんな言い方するか?…的な事はちょいちょいあるが、もし私が言い返して弟の怒りの炎に油を注ぎ、家を追い出されたら…情け無いが今は生きてゆけない。

じっと耐えるのだ。
スナックからのお給料で着実に貯金は出来ている。
弟に全額返済して、この家を愛犬と共に出ていく6年後(計算では)まで、何を言われても耐えて合わせるしかないのだ。


◆え。そんな事までする?◆

弟が実家に帰ってきた経緯は、詳しくは聞いていないが、まだ少し仲が良かった頃聞いたのは、
こちらに帰って来て事業を始めたい。やりたい事がある…と言う事と、当時の会社での人間関係が上手くいっていないという事だった。

昔から、私と違って頭のいい子だったし計画性もある。
40代も後半になってから、今までいた会社を辞めて田舎に帰ってくるというのだから、きっとキチンと何か計画しているのだろうし、覚悟を持っての事だろうと思っていた。

私の、自己破産うんぬんの頃は丁度弟が実家に戻ってきて2年は経っていただろうか…。

弟の『やりたい事』に向かって物件を探すなどの、能動的な姿が確認出来たのは最初の一年くらいだった。
それからは、『その事』に触れちゃいけない空気を彼はまとっていて、
私も、あえて聞かない事にしていた。

彼は現在無職だ。
……現在…というか、こちらに帰って来てから、かれこれ4年程ずっと無職だ。

蓄えはあったのだろう。
前の会社も長いこと勤めていたし、管理職だったから退職金も少なくなかったはず。
父から残されたお金もある。
私に貸したお金を引いても多分、まだまだ余力はあるはずだ。
しかし、人間は生きているだけでお金が掛かる。

収入がないから、今あるお金を出来るだけ減らさない…と言う考えらしい。
私はシンプルに、なんでもいいから働けよ…と思うのだが…言えない。

私『お金が無いのなら稼いで増やす』

弟『お金が無いのなら極力使わない』

ほらね。ここでも正反対だ。

彼の日頃の節約術は凄まじい。
使わない電化製品のコンセントを抜き、待機電力を節約するのは当たり前、一番驚いたのがお風呂。夏場は2日に1回、冬場は3日に1回しか入らないという。洗濯も溜めに溜めて1週間に1回だ。
これは、彼が不潔と言う事ではない。だだ水道代、ガス代を節約したいからなのだ。

だからだ…。洗濯はお互い自分の物は自分でしているのだが、彼が洗ったものは、洗濯したのに臭いのだ。
どうしてだろうと不思議だったが、それを聞いて納得した。
洗濯物を1週間も溜めていれば、洗濯カゴの中で雑菌が増える。よっぽど上等な洗剤で洗わない限り匂いは落ちない。
しかしやっかいな事に彼は鼻炎持ちで自分の纏っている服の匂いが分からないのだ。
本当なら、姉である私が言ってあげるべきだ。外で恥をかく前に。

でも言い出せずに同居生活2年が過ぎようとしている。

最初は、その生活スタイルを私にも強要してきた。
まだ、スナックの仕事に就いて間もない頃。
新人で収入も少なかったので、
弟から光熱費はまだ払わなくてもいいと言われていた頃だ。

弟「あのさぁお前、風呂に毎日入ってるよな?洗濯も毎日してるだろ。」

私「うん。風呂って毎日入るものだよね。」

弟「俺は節約の為に風呂も毎日入らないし…汚いのは分かってるけど洗濯も週に一回なんだよ。それくらい節約してんの。」

私「………」

弟「お前は、まだ光熱費も払えない居候なんだから考えろよ。」

一回、要求を飲もうかとも思った。
しかし、私の仕事はスナックホステス…接客業だ。臭いのはアウトでしょ。いや無いわー。無い。

角が立たない様に、仕事上臭いオンナなんて論外だと言う事、これは仕事上最低限のマナーだと。
だからお風呂に毎日入ること、洗濯を毎日する事は許して欲しいと伝えた。

ヤツは渋々納得したが、これに似た様な事は現在までちょいちょいあり、私の神経をすり減らしている。


⚫︎5話に続く⚫︎

読んで頂いてありがとうございます。弟の話はサラっと書いて次の話題へ…と思ってたのですが、まぁ出てくる出てくる(笑)
よっぽど溜まってるんだなぁ…と気がつきました。

明日から時短要請が明けて、スナックのお仕事再開です!
更新の頻度が落ちるかもですが、気長にお付き合いください(*'▽'*)

緋色しゅうこ

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