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制作会社半年で感じたデザイナーに必要な基礎スキル

制作会社ARUTEGAでアシスタントデザイナーをしているkinomiです。

2024年も残すところ一日。前職では年末年始が最も忙しい時期だったので、お休みをいただける今年は不思議な感覚です(嬉しい)。

就職活動、インターン、転職…と、自分のターニングポイントとなった一年でした。そこで振り返りをしたとき、気付いてしまった悲しい事実。

独学で学んできたことの多くが、実務では活かせていない。

書籍やオンライン学習が充実している現在、「独学でもデザイナーになれる!」という言葉は否定できません。ただ、正しい方向性とゴールが見えていないと、私のように遠回りをしてしまうことも。

そこで今回は、制作会社でのインターンと実務を合わせた約10ヶ月の経験から、デザイナーに必要な基礎スキルとは何かを考えてみました。(※具体的な独学方法は少ない記事です)

💡この記事を読んでいただきたい方
・制作会社のデザイナーになりたいけど実際どんなスキルが必要かわからない方
・1年目デザイナーで同じく頑張っている方

新しい年を迎えるこのタイミングで、「デザインを独学で学んでみたい!」「デザイナーを目指してみたい!」という方に向けて。自分の内省も含めてリアルな記事になっています。

もちろんここでお伝えするスキルがあれば、絶対にデザイナーになれるわけではありません。ただ、必要だと感じたスキルから逆算して計画を練っていただくのも一つの手かと思います。

参考の一つとしていただければ幸いです!

Part1: 独学期間の振り返り - 何が足りなかったのか

振り返ってみると、独学で大きな失敗が2つありました。

学ぶ方向性の曖昧さ

Webデザイナーになりたいという明確な目標があったにもかかわらず、コードの知識と、グラフィックデザインの基礎知識ばかりを追いかけていました。

もちろんどちらも必要な知識ではありますが、優先度が一番高かったのはWebデザインへの理解だったと思います。

Webサイトの研究もしていましたが、「かっこいいな」「素敵だな」という表面的な印象で終わってしまっていて。
実際の現場で重要になる、余白の使い方やフォント選び、配色による印象操作といった本質的な部分まで深く理解できていませんでした。

ツール習得の考え方

PhotoshopとIllustratorについて、「とにかく使えるようになりたい!」という思いから、様々な機能に手を出していました。しかし結果として、それぞれの機能への理解が中途半端なものに。

「この作品を作りたいから、この機能を覚えよう」というように、目的を持って学んでいれば、もっと確実にスキルが身についていたはずということが今になって理解できています。

Part2: 実務で気づいた本当に必要な基礎スキル

インターン・実務と計約10ヶ月が経った今、自分の内省の精度が上がり、「できていないこと」「必要なこと」への解像度も上がったと思います。

私も勉強中の身ですが、個人的見解をつらつら書かせていただきます!

1. デザインの基礎スキル

💡Webデザイン・グラフィックデザイン・UIデザインの勘所を掴んで生かす

実務に入って最初に気づいたのは、各デザイン領域には違いがあるものの、根底でつながっている部分も多いということです。


●Webデザイン
「ユーザーの導線」を意識。サイトを訪れた人がストレスなく目的の情報にたどり着けるように設計。
・スクロールやクリックといったインタラクションを考慮しながら、情報をどう配置するかが重要。

グラフィックデザイン
・「視線の流れ」を大切にする。パンフレットやポスターで、どの順番で情報を見てもらうか考える。
・にぎやかしが多く、見てる人を視覚的に分かりやすい印象で楽しんでもらう。

UIデザイン
・使う人の操作を助ける。大事な機能は見つけやすい場所に置いて、重要度がわかりやすいデザインにする。
・見た目や操作方法を統一する。色やボタン、マークなどを揃えることで、使い方が自然とわかるようになる。


独学時にやっておけばリスト:Webデザイン
好きなWebサイトをトレースして、グリッドの使い方や余白の取り方を理解する
・よく使われているフォント・配色への理解
・写真の構図を知り、良い写真の見定める目を養う
・同じ業種の複数のサイトを比較して、共通する構造を見つける
・ヘッダーやフッター、ボタンなど、パーツごとの役割を理解する
・PCとスマートフォンで見た時に、どの要素がどう変化するのか観察する

独学時にやっておけばリスト:グラフィックデザイン
見出しや本文の文字組がどうなっているか、行間や字間を観察する
・メインビジュアルから本文への視線誘導がどう設計されているか分析する
・情報の重要度に応じて、装飾(あしらい)がどう使い分けられているか見る
・同じ情報でも、レイアウトや装飾で印象がどう変わるか比較する

独学時にやっておけばリスト:UIデザイン
使い心地の良いアプリ・悪いアプリを観察→”なぜ使い心地が良いのか・悪いのか”を考えてストック
・よく使うアプリのUIパーツ(ボタンやアイコン)のサイズ感を観察する

実務だと、これらの要素を組み合わせながら、最適な解決策を見つけることの繰り返しです。別の分野だと完全に切り離すことなく、それぞれの特性を理解しつつ、共通する原則をしっかりと押さえておくことが、必要だと日々実感しています。

💡手を動かす前の情報設計の大切さを知る

今最も重要だと感じている情報設計。手戻りをなくすために必要で、つまり手を動かす前にたくさん考えるが超重要です。

情報設計が不十分なまま手を動かすと、後になって「ユーザーに伝えたいことが伝わっていない」という根本的な問題に直面し、結局は大幅な修正が必要になってしまいます。

目的とターゲットの明確化
プロジェクトで達成すべきゴール
・想定するユーザー層
・成果指標の設定

情報の整理と構造化(ワイヤーフレームをがっちり固める)
コンテンツの洗い出し
・ページ構成の検討
・情報とデザイン観点のリサーチ
・本当にこれで課題解決できるか?多角的に考える
・デザインの方向性決め

⚠️ここで初めて手を動かす


■ポートフォリオ制作にも同じことが言える

「かっこいいポートフォリオサイトを作ろう」と意気込んでデザインツールを開く前に、以下をもっと綿密に整理すればよかったと痛感しています。

・採用担当の方は何を求めているか
・どう差別化するか
・自分の強みは何か(自己分析し、表層的なものではない強み)
・どんなスキルが求められていて、どこまでアピールすべきか
・作品をどんな順序で見せるべきか

この整理ができていないと、見た目にこだわったとしても「結局、何を伝えたいの?」なポートフォリオになってしまうと思います。

💡良いデザインを見極める目を持つ

良いデザインを作るには、まず「良いデザイン」を見分ける目を持つことが大切。私が実務で学んだのは、デザインの見方そのものから変える必要があるということでした。

■良いデザインの見極め方

デザインの評価は主観的になりがちですが、要件や背景・ターゲットによって見るポイントが変わります。絶賛勉強中で、毎日ギャラリーサイトを見るようにしています。

情報設計の観点
コンテンツの整理
・重要な情報が適切に強調されているか
・どのようにして情報が整理されているか
・下層ページへの導線

視覚的な観点
ブランドの世界観の表現
・レイアウトの一貫性
・階層構造が明確か
・心躍るデザインか
・余白:情報の関係性や重要度をどう表現しているか
・フォント:伝えたい世界観に合わせた適切なフォントを使用しているか
・配色:ブランドカラーを際立たせるようなバランスが取れた配色か

良くないと感じるデザインからも学ぶ

改善の余地があるデザインを分析することも意識しています。

・なぜ情報が伝わりにくいのか
・どのように改善できるか
・制作時の制約は何だったのか

自分のことは棚に置いておき、批判的な目でサイトを見ています(すみません)。
批判的というと聞こえは良くないですが、実務で生かせる多角的な視点を持つために大切なことだと考えています。


信頼できるギャラリーサイトの活用
単に「かっこいい」だけでなく、情報設計やユーザビリティの観点からも優れたサイトが掲載されるギャラリーサイトも先輩方に教えていただきました。

Awwwards
CSS Design Awards
Muuuuu.org
s5-style

ちなみに最近私は、先輩からアドバイスを受けて毎日海外サイトをチェックしています。細かい装飾が少なく、グリッドレイアウトが多いので、レイアウトの基礎知識向上のために日々勉強中です!

2. 実践的スキル

💡ツール操作は”作りたいものを作るため”に覚える

基本的な操作は覚える必要があるとは思いますが、ツール操作メインで入ると領域が広すぎて破綻します(私は失敗している)。

例えばIllustratorなら、コンセプトに合わせたグラフィック要素が必要になった時に調べて使う。

Photoshopも同様で、求められるトーンに合わせたレタッチ方法や、AIを使った素材補完など、プロジェクトの目的に応じて学んでいけばよいと思います。

私の場合、Figmaをメインツールとして使用していますが、特にプロトタイプ機能の習得・コンポーネント化に時間を使いました。

クライアントさんに完成イメージを共有するため、よく使うボタンなどはコンポーネント化して工数を減らすことが必要不可欠だったからです。

「なぜその機能が必要か」を常に意識しながら、必要なスキルを選んで習得していく方が、遥かに効率的だと実感しています。

💡AIと仲良くなる

実務ではほとんどの方がAIを使用している印象で、私も普段から活用しています。

特に便利だと感じるのはワイヤーフレーム作成時のコンテンツ構成です。「このセクションではどんな内容を書くべきか」をAIと対話しながら考えると、良いアイデアにたどり着くことが多いです。

写真素材の生成も助かっています。最終的な選定や調整は必要ですが、「こんな感じの画像が欲しい」とラフに伝えるだけで、使えそうな素材が作れます。

また、Youtubeではプレゼン方法や仕事効率化など、たくさんの有益な情報があるので、それらを自分のストックとしてテキストに残すこともAIなら可能です。

AIは完璧ではありませんが、うまく使えば確実に味方になってくれます。
ワイヤーフレームやスライドを作成してくれるツールもあり、私も絶賛勉強中です!

💡実装への理解を深める

エンジニアさんとのコミュニケーションのためにも、最低限の基礎知識の習得は必須かと思います(ノーコードツールのstudioも基礎知識がないとなかなか難しい)。

プログラミング学習では、様々な方法を試しながら自分に合った学習方法を見つけていきました。最初は書籍や動画教材で基礎知識を学びましたが、実践的な演習の機会が少なく、なかなか知識が定着せず挫折。

最終的にはスクールに通って学びましたが、スクールと並行して使っていた「Progate(プロゲート)」というサービスが個人的に使いやすかったです。

・ブラウザ上で実際にコードを書ける
・基礎から応用まで段階的に学べる
・間違えた時にヒントがもらえる

実際に手を動かしながら学べる点が自分に合っていました。独学でプログラミングを始める方には、ぜひおすすめしたいサービス…!

ただし、実務においては、基礎知識が不足していると感じる場面が多々あり…。プログラミングの知識は、やはり一定必要だと実感しています🥹


開発を意識したデザイン設計
工数に関わってくるので、エンジニアさんへの円滑な引継ぎも現在の課題の一つです。

私の場合Figmaを使用しているので、デザインカンプを作成する際に以下の点を心掛けています。

Figmaでデザインするときに気を付けていること
オートレイアウト機能を使う
・フォント・色はローカルスタイルかバリアブルを設定する
・コンポーネント化
・書き出しやすい画像設定(黒フィルターの加工は直接かけない、角丸はフレームでかけるなど)

ただ、実際綿密にはできていない部分が多い…🥲
デザイン前にエンジニアさんと話して命名規則を統一するなど、コミュニケーションをとって準備するのが理想かと思います。模索中です。


3. 社会人の基礎スキル

デザインの世界は技術ありきな部分が大きいですが、社会人スキルも重要、というのはよく聞く話。

私の場合、高校卒業後すぐに働いていたおかげか、コミュニケーション部分で補えている部分もあると自覚しています(ここだけは褒められます)。

できていないことも含めてですが、インターン・実務で必要だと感じた「社会人の基礎スキル」についても個人の見解を書かせていただきます!

💡継続する力

私はARUTEGAの採用面接に一度落ちています。不採用だった主な理由は以下の3点でした。

・デザイナーを目指す理由がブレていて、今後の未来も予測しづらい
・“デザイナーを目指す姿勢”のバロメータになるような継続していることが見えなかった
・“表現したい・人に伝えたい・情報を分析したい”と様々なデザイナーのタイプがあるが、どれに属するのか分からなかった

私の場合、デザインへの思いはあったものの、それを継続的な行動に移せていませんでした。

長年デザインを学び続けてきた人は、それが習慣になっていて、自然と説得力のある作品や考え方が身についています。継続することは、自分の軸を作り、第三者からの信頼も得られる。それに気づけたことが、不採用という結果からの大切な学びでした。

ARUTEGAのエンジニア、ハルさんの「100日間アニメーション探求」をまとめたブログは、まさに継続力のお手本です。
私も見習って、毎日サイトを見るようにし、記録できるときはNotionでまとめています。

💡現在地と目的を都度確認する

働き始めて、思うように進められないことが多々あります。

いろいろなタスクが降ってくると、最初に設定していた目標を見失ってしまいがちで。私の場合、アシスタントデザイナーとしての役割から外れたことをしてしまった経験があります。

その反省から、社長や先輩に「この方向性で合っているか」を小まめに確認するようになりました。クライアントワークであれば「クライアントさんのゴール設定からぶれていないか」、バナー制作なら「ターゲットに情報が端的に伝わっているか」など。

立ち止まって確認することで正しい方向で仕事を進められるようになります(ゆくゆくはこれを一人でできるようになるべし)。

💡やったことがなくても、調べればなんとかなる

誰でも未経験のことに挑戦するのは不安なもの。でも、いつも経験者にお願いしていては、自分のスキルは永遠に成長しません

私が入社後に経験した、ノーコードツールstudioの使用も、実績動画の作成も、クライアントさんとのコミュニケーションも、すべてが初めて。

しかし、調べたり、AIを使ったり、周りの方に教えていただいたりすることで少しずつ進めることができました。

経験する機会をもらえるのは有難いこと。失敗しそうな時は社長たちがなんとかしてくれる(早めに報告必須)ので、とりあえずやってみる。

「未経験な仕事」→「やったことある仕事」にすることで、2回目以降のハードルは大きく下がりました

💡実績のある人のおすすめは、とりあえず試してみる

優秀な先輩や上司、SNSで発信している実績ある方々は、貴重な経験を惜しみなく共有してくれています。これらをやれば、確実に成長ができる。それは誰しもわかっているはず…。

あとは、その情報を試すか試さないかは自分次第です!!

そこで、「ピッと思いついたらパッと行動する」という言葉をいつも意識しています(木下勝寿さんの”ピッパの法則”です)。

試してみることで、できないことが明確になり、本当に必要だと感じたものは継続すればいいので、できる限りフットワークを軽くするように心がけています。

そうすることで、できることが少しずつ増えてきました。

💡自分でボールを持ちすぎない

アシスタントデザイナーとして、模索中の日々。ただ懸命に取り組んでいても、実力が追いついていないと感じることが多いのが現状です。

入社直後は、フルリモートという環境にも慣れず、社長たちに聞くということをためらってしまい、結果工数がかさむという失敗をしました。

そこで現在は「完成度60%くらいでアウトプット」し、自分でボールを持ちすぎないことを心掛けています。

これは、先述した現在地と目的を都度確認するにも通ずる話。

ただ、思考を全て任せてしまうのは良くないので、自分なりに考えを整理し、一定の形にしてから相談することで、建設的なフィードバックをいただけるように心がけています。

💡相手への配慮

これは自分でボールを持ちすぎないの逆張りで、相手の状況を考えず質問しすぎたという失敗経験もあります。

今は質問する前に、まず優先順位を考えます。「本当に今すぐ確認が必要なのか」「重要度と緊急度はどうか」。デザインの確認は早めに行わないと進行に影響するため、すぐに確認するようにしていますが、その際も以下を整理します(ARUTEGAの方、できていなければご指摘ください…)。

・何について回答してほしいのか
・どこに悩んでいるのか
・自分はどう考えているのか
・期限があるならいつまでか

また、相手が知りたい情報を想像して伝えることも意識しています。文章や説明は簡潔に、必要な情報は漏れなく。これを意識することで、以前よりも良いコミュニケーションができるようになった(はず)。

💡当事者意識を持って関わる

スキルがないからと言って、この意識を持っていないと、周りの方にどんどん追いつけなくなると思います。

プロジェクトに関わるときは「自分ごと」として捉えて取り組むよう心がけています。

プロジェクトの把握
プロジェクトの目的や背景の理解
・自分に期待されている役割
・気になる点や不明点はすぐに解消する

基本の担当業務はしっかりと行う
与えられた締め切りを必ず守る
・作業の進捗状況を定期的に報告する
・自分の作業内容を記録に残す

これが最善かと常に考える
作業の目的を意識して進める
・より効率的な方法がないか考える
・他のメンバーの意見も参考にする
・気づいた改善点は積極的に提案する

分からないことは相談する
曖昧なまま進めない
・具体的に何が分からないのかを整理してから相談する
・社内の方の時間を考慮し、まとめて質問する
・相談した内容はメモを取り、次に活かす

間違っていたら社長たちが軌道修正してくれるので(2回目)、当事者意識を持ってプロジェクトに関わることは、新人デザイナーの自分に必要な要素だと考えています。


終わりに

最近初学者の方から「どんなことを勉強しているか」と質問をいただくことがあります。

参考にしていただけるのは有難いことですが、私は発信をしているだけで、デザインが上手いデザイナーではありません。毎日試行錯誤しながら過ごす新人デザイナーです。

明日デザインが上手くなる方法があるなら、私が教えてほしいくらいです。

ただ、独学中は「誰かの経験が聞けたら良かったな」と思っていました。質問してくださる方も同じ気持ちなのかな…と思い、今回この記事を書かせていただきました。

実務を通じて「何が足りていなくて、何が必要なのか」を学び、並行して成長できるよう取り組んでいます。

拙い内容ではありますが、今回の記事がこれからデザイナーを目指す方の参考の一つになれば幸いです。

ここまで読んでくださった方が、素敵な年を迎えられますように!
またね~。kinomi

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